プロローグ
石畳みの地面にレンガ造りの家、こんな街並みも
17年も暮らしていれば馴れるものだ。
世界がこんな風になる前の人達ならば
信じられない光景だろう。
************
20年前、政府は化石資源の枯渇を打ち明けた。
人々が便利さを求め科学の進歩させようとした
代償として地球の資源が足りなくなったのだ。
その事実とそれに対しての政府の対応に不満が募り、
おそらくは史上初であろう世界規模での暴動が起き
た。
後にこの事件を
フォッシルリソーセスパニック
と名付けられ、その頭文字をとり《FRP事件》と
呼ばれる様になった。
あらゆる機関は完全に機能を停止し経済は崩壊、
人類は終焉を待つばかりだった。なにも頼るべきもの
を失った人々は神に救いを求め、やがてそれは
世界規模の運動となり世界は現在の宗教主義の社会
へと変貌を遂げたのだ。
************
今、彼が暮らしている東京もかつては科学の発展を
絵に描いたような街並みだったらしいが、今は見る影
もない。
彼が本で見た限りでは、かつての中世ヨーロッパを
模したような街並みになっていて老人たちは、時代が
遡ったように錯覚するらしい。
そんな街を彼、篝 宗也はカツ
カツと小気味良い足音をたてながら
朝の日課である、祈りを捧げるために礼拝堂へと
向かっていた。
「今日もいい天気だなぁーーー」
「昨日の夜は飲みすぎてーーー」
「今日の魚は新鮮でーーー」
などと呑気な街の人たちの声が聞こえてくる中、耳を
つんざくような女性の悲鳴が響いたのは
(今日も平和な日になりそうだな)
と、これまた呑気なことを考えていた直後だった。