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狼は嘘をつく  作者: 山神ゆうき
大神京
6/15

5・中2

中2になった。

俺と啅人(たくと)は中1の時は補欠で、数回終わり10分前くらいしか試合に出てなかったが、中2になると次第に多く試合に出るようになった。それは、サッカー部になり親しくなった正丸(まさまる)も例外ではなかった。


俺は試合中やベンチにいるときにチラチラと応援している生徒の場所を見る。

そこには、小学生の時に元気に応援をしていた女子、そして俺の好きな近津(ちこうづ)さんも一生懸命応援している。


一生懸命応援している近津さんを見てニヤニヤする。


「よし!(きょう)、正丸!3人で攻めに行くぞ!」


「おう!」


「フッ!我にかかれば、闇の力で敵をひれ伏せてやる。」


正丸は中2になったときに中ニ病を発症してしまった。なので、中1と中2の時のギャップが激しいのだ。

そのせいで正丸の事を好きだった女子は減り、チャンスとばかりに近津さんの親友の初陽(はつひ)さんが告白して、今は付き合っているようだ。


(俺もいつかは近津さんと・・・。)


と、いろいろ妄想をしていた。


そんなある日、俺は近津さんと二人っきりになるチャンスが来た。

今日は啅人と正丸は用事があり早めに帰ってしまった。俺が帰ろうとしたときに、正門近くに近津さんがいたのだ。


俺はいきなりのことでドキッとした。近津さんは俺のことに気付いたら、とても可愛い笑顔を見せた。


「こんにちは。大神(おおかみ)、くん。初めましてって変だよね。」


そう、俺と近津さんはお互い顔は知っている。しかし、話したことがないのだ。


「お、おう!」


俺は緊張のあまり、返事しかできなかった。


「「・・・・・。」」


少しの間だけ沈黙が続く。


「ち、近津さん!」


俺はドキドキしながら近津さんの名前を叫ぶ。近津さんは少し驚いたように目を真ん丸にした。


「近津さんは・・・・・好きな人っているの?」


俺の頭は真っ白になった。な、なに言っているんだろ俺・・・・。


「いるよ!」


近津さんは笑顔で言う。俺の心臓はすごくドキドキしていて胸から飛び出そうだ。


「私ね・・・・・。お、大神くんの事が好きなの!」


モジモジした近津さんは、少し下を見て顔を赤くしていた。


「おっ!!」


意外な言葉に俺は変な声を出してしまった。


「す、好き!大好き!もし、大神くんに好きな人がいるかもしれないけど、私の、自分の気持ちを大神くんに知ってほしいの!」


誰もいない正門前、日が沈みかけているからだろうか、近津さんの顔がより赤く見えた。


「ありがとう。」


俺は思考回路が分からなくなり、とりあえずお礼を言った。


「俺も、・・・・・好きだよ。」


恥ずかしくなり少し間が空いたが、俺はやっと好きな人に気持ちを伝えることができた。


「けど、ごめん!今、俺はサッカーに専念したいんだ!」


俺は両手を合わせて近津さんに謝罪する。


「高校!高校に入ったら、サッカー部に入らないから、その時に付き合おうぜ!」


近津さんは少し考えたが、笑顔で「いいよ!」と言ってくれた。

そう、俺は啅人にずっと恩返しをしないといけない。中学はサッカーに専念して出来るだけ2人で試合に出ることが目標なんだ。


「今日はありがとう、大神くん。じゃあ、また明日ね。」


そう言って近津さんは背を向ける。


「おう!また明日。じゃあね、近津さん。」


俺がそういうと近津さんの足がピタリと止まる。


「近津じゃなくて、『恵聖(けいと)』だよ!」


振り返り近津さんは子供のように愛らしいウィンクをする。それもまた可愛い。


「お、おう!け、恵聖!」


俺はすごくドキドキして、好きな人を初めて下の名前でよんだ。

そう、恵聖に「京でいいよ!」といい忘れるくらいに嬉しかった。


ーーーー(幕間)ーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


とある夜の事である。

部屋の電気を消して寝ようとしても寝れなかった。俺は恵聖の事を考えていた。


暗い部屋を数歩歩き窓を開けた。斜め上に綺麗な月が出ている。

俺は、恵聖といろんな場所にデートしたり、思春期特有のちょっと言えないことをしたり、恵聖が俺の名字になる時などを妄想してニヤニヤしていた。


ダメだ。今の俺の頭の中は恵聖のことで一杯であった。


サッカーをするのは中学で終わり。高校では恵聖と一緒にデートしたりしよう。

そう思うのだが、俺は啅人の事を考えていた。


啅人は命の恩人である。あのとき啅人が助けを呼ばなければ、俺は死んでいたのだ。

サッカーは確かに楽しい。しかし、楽しい以前に啅人への恩返しでもある。それを高校に入ったらサッカーをしない。啅人はどう思うのだろう。


いろいろ考えたのだが、啅人への恩返しはなにもサッカーだけではないのだ。高校に入ったらそれ以外の事で助けようと思う。


例えば、啅人に好きな人ができたら手助けするとか、ね。


しかし、その考えが大きな災いを招くのであった。

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