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タイトル一文字。 同音異字から連想する物語、あいうえお順に書いてみた。

「み」 ‐味・実・未‐

作者: 牧田沙有狸

ま行

りんごとはちみつが恋をしたカレーが嫌いだった。

給食のカレーはこれに似ていて、カレーとはこの味しかないと思っていた。


麺が三袋入りで粉末ソースがついてる焼きそばが嫌いだった。

屋台の焼きそばは美味しいっていうけど、これと似てて美味しさが分からない。


40年以上のベストセラー味付き粉で作る鶏の唐揚げが嫌いだった。

お店で唐揚げとして売ってるものと何かが違う、別の食べ物だと思ってた。


幼い頃の実家のご飯の記憶。

どうしても食べられない嫌いな食べ物、そういうわけじゃないけど

なんか思い出すと嫌な気分になる。そういう意味で嫌いだった。

たぶん、子供の頃は喜んで食べていた。

保守的で定番料理を美味しいと位置づける父親の味覚に従った実家の味。

その定番も、実は定番じゃなくて、お母さんを楽させる料理の走り、ロングセラー商品であって

生まれ育った地域や家庭で受け継がれたものではなかった。

誰が作っても同じ味になる、誰もが一度は口にしたことがある安価で有名な味。

あれが「家庭の味」だったことを大人になって知った。

そしてそんな母を料理上手だと持ち上げていた父親の味覚を幼稚に思えるほど、

自分は大人になった。


大人になってから

インドカレーとか欧風カレーとか、半端ないカレーのバリエーションを知った。

カレーの美味しさを知った。


お好み焼き屋やB級グルメの焼きそば、ラーメン並みにソースの味のバリエーションがあると知った。

焼きそばのおいしさを知った。


から揚げは、肉に下地をつけて小麦粉や片栗粉をつけて揚げる方が本来のやり方だと知った。

あの粉に混ぜられたスパイス以外の、から揚げの味のバリエーションが作れるのだと知った。

から揚げのおいしさを知った。


小さな狭い世界で定番を押しつけられて、それ以外を知らなかった。

あの頃の生き方そのものだ。

学校の中で居場所がなくて、すべての世界が終わってしまったと思っていた。

いじめとか、そういうのはないけど、ただただ、毎日が空虚に過ぎていた。

そこ以外にも世界があることを知らなかったから。

決められた枠の中で、どうやって生きていくかしか考えてくれない。

違う世界が無限に広がっていること、もっと早く知りたかった。

美味しいのか美味しくないのか分からない、カレーと焼きそばとから揚げで空腹を満たし

どうにか生きてきた。

あの味が大好きだという人はたくさんいる。

決して自分が過ごした時間は、人からみて空虚ではないと思うこともある。

だけど、それしか知らないから受け入れてたのと、選んでいたのとは違うと思った。

未来はつまらないことばかにりだと思わされた。

大きな世界に出られるのは、選ばれし一部の人間だけだと言う

保守的な大人たちの助言に苛立ってしょうがなかった。

小さな世界から飛び出して、自分は大人になった。


二度と子供の世界には引き返せない大人の世界。

無限に広がる可能性があることを知ったけど、選ぶ権利を得たけど、

簡単に受け入れてもらえない現実もセットで付いてきた。


未熟な大人として疲れすぎた夜

ロングセラーの唐揚げ粉で鶏肉を揚げてみた。

実家の味にはならなかった。冷凍食品じゃなくて調理補助食品だから。

作る人によって変わってしまうのが料理。

それがその人の技術、持ってるものだ。

いろんな味覚を知って、定番には応用力があるのだということを知った。

誰かの手を借りたって自分の力で作り上げなくちゃいけない。

みんなと同じが嫌なら、変えたければ、自分で変えていけばいい。

少し変えたところで失敗しない。

そこまで計算されたロングセラーだと知った。


今の生き方そのものだ。

自分の唐揚げを口に頬張り、泣いた。





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