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創造者からのメール

作者: 前田剛力

 自分を何と自己紹介すればあなたに理解してもらえるのだろうか?

 宇宙の行商人、それとも偉大なる創造主、であろうか。

 私こそがあなたの作品の中で、地球で荒稼ぎをしようとロボットを残した「ちっぽけな行商人」その人なのです。

 あなたが驚き、恐怖している様が目に浮かびます。

私の忠実なる僕、ビルのメールが突然途切れたので驚いたことでしょう。彼が予感した通り、まさにあの瞬間、私は地球に到着し、ビルをコントロールし始めたのです。

彼は自分が育ったこの星を愛し始めている自分に気づき、創造主である私への忠誠と地球人への愛情の間で悩みました。そして地球を選び、私がやってくるまでに稼いだ収益を地球人に戻すことを選んだのです。

しかし残念ながらそれでは私は破産してしまいます。従って私はビルを止めました。もっとも、ビルの件がなくてもこの辺りが潮時でした。売り上げと利益は予測を大きく上回りました。そろそろ回収の時期なのでしょう。地球人はこれまで私が商売してきた中ではすこぶる優秀な原住民です。

 あなたの作品に発したこの騒動についてももちろん知っています。あなたが偶然の一致で私の秘密を作品として発表したことを。そしてビルはそれに気づき、作品を読んだ者の記憶を消し、なおかつ悩むその気持ちをあなたに告げたことも。いずれも妥当なことです。

 では私がなぜあなたに同じようにメールをしているか。

 それは、これから私はどうすればいいのか、考える間の話し相手にあなたを選んだからです。ちょうどビルが同じことを考えたように。

 本来は何も悩む必要はなく、私は利益を回収してこの星を去ればいい。それだけのことです。あなたに何もいう必要はない。あなたを、真実を知った者として消してしまってもいいし、全く無視しても構わない。

 ではなぜ私は迷っているのか。

 それは地球人がその才能を開花させて一惑星の原住民から銀河連邦の正式なメンバーに成長できるかもしれない、と思い始めたからなのです。そうなれば私は優先取引件を持つ者として莫大な富を得ることができるのです。それに何より、新たな銀河市民を発見した功労者として永遠に称えられる栄誉を受けることができるからです。

 ただしそのためには今しばらく成長、進歩を遂げる必要があります。私が迷っているのはこのままほっておいて人類は大丈夫かどうか、と言う事です。進化の途中段階で自滅する原住民が驚くほど多いのです。

 そして銀河連邦はその進化の階段を乗り越えることに、他の種族から手を貸りた原住民のメンバー入りを認めません。あくまでも自力で進化したものだけがメンバーになれるのです。地球人は自ら滅びることなく進化して銀河市民になれるのか。いかに有望な種族とはいえ、自滅してしまえば投資は元も子もありませんから、不安が勝れば早めに回収するしかないのです。

だから今もまだ、どちらを選択すべきか、悩んでいるところです。もっとも君に決めさせる話ではありませんよね。

 もう少しだけ、様子を見ることにしました。心配しないで、そんなには長く待たせませんから。

それまでビルには、しばらく稼いでもらいましょう。


 

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