コント忠臣蔵
「忠臣蔵の討ち入り」として有名な一場面。
――時は江戸。 元禄十五年、十二月十四日の、寅の刻。
しんしんと降り積もる雪と暗闇に覆われた町の中、装束をまとった四十七士が寄り集う。
張り詰めた空気は冷たく、しかし内に抱く想いは熱く。抑えきれぬ息遣いは白い靄となり、闇の中へと消えていく。
憎き吉良めの首級を上げ、我等が主君の無念を晴らさん。
不退転の覚悟を瞳に宿した同志達の前に、首謀たる大石内蔵助は満足げに小さくうなずくと、高らかに声を上げた。
おのおの方――。
大石「……お、おのおの方っ! む、ムチャクチャ寒いでござる!」
同志「当たり前だろ!? 真冬なんだから!」
大石「おのおの方……昨夜はドキドキして眠れなかったでござる!」
同志「小学校の遠足かっ!? いや、気持ちは分かるけど」
大石「おのおの方、バナナはおやつに――」
同志「言うと思ったわ! 自分のチョンマゲでも食ってろ!」
大石「おのおの方、眠たいので明日に延期でござる!」
同志「んなワケねえだろ!? 雨天決行だよ!」
大石「おのおの方、……復讐は何も生みません。 そんな虚しいことはやめて、今こそ憎しみの連鎖を――!」
同志「説得し始めた!? しかも、今までの俺達の苦労を全否定!」
大石「おのおの方、……実は漏れそうなのでござる!」
同志「早くトイレ行ってこい!!」
大石「おのおの方、トイレ休憩でござる!」
同志「分かったから早くしろ……」
――十五分後。
大石「おのおの方、スッキリしたでござる!」
同志「言わんでいい!」
大石「おのおの方、おうちに帰るまでが討ち入りでござる!」
同志「小学生かっ!?」
大石「おのおの方、今晩はカレーござる!」
同志「うわあーい! ……って、だから小学生か!」
大石「おのおの方、……そうだ、京都へ行くでござる!」
同志「吉良邸に行けよ!?」
大石「おのおの方、ココはドコでござる?」
同志「京都だよ!! いつの間にか来ちゃったよ!」
――京都編、開始。
大石「おのおの方、あと一人集めれば『CSG四十八』と名乗れるでござる!」
同志「名乗らんわ!? ていうか、その発想はなかった!」
大石P「おのおの方、最後のメンバーを探すでござる!」
同志「どなたかいらっしゃいませんかー! って、こんな時間に誰もいる訳――」
町人「よ、よろしくお願いします……」
同志「見つかった!?」
大石「おのおの方、意外とノリノリでござる!」
CSG「もう夜が明けたからな! しかも京都だし!」
大石「おのおの方、目指すは武道館でござる!」
同志「俺達、これから一体どうなるんだ……」
――ライブ、実現。
大石「おのおの方、大好きでござる!」
ファン「おおおおおーーーーーーーっ!!」
同志「何故か大ヒット!?」
大石「おのおの方、デビュー曲『デンチューだよ☆吉良りん』を歌うでござる!」
ファン「おおおおおーーーーーーーっ!!」
同志「タイトルが嫌すぎる!!」
大石「おのおの方、ライブは大成功でござる!」
ファン「わああああーーーーーーーっ!!」
同志「結局、最後まで歌いきってしまった……」
吉良「アンコール! アンコール!」
同志「最前列に吉良がいたっ!?」
大石「おのおの方、サイン会&握手会でござる!」
吉良「い、一生の宝物にします!」
同志「冥土の土産じゃあああああああああーーーーーーーっ!!」
お後がよろしいようで。