4年後
ゴールドストライクが処刑されてから、4年が経過した。ライトニングリッジとナミアはヴェール大陸の全土を旅し、行商人のようなことを行っていた。
「うええ、待ってくださいよ~!アーガイルの旦那~!!」
「うるさい!付いてこれないなら置いていくぞ、モゴク!」
立派な紳士服に身を包んだ壮年の男性と、付き従う妙に卑しい顔の小柄な商人風の男が町を歩いていた。
「・・・しかし、本当にお前の言うようにこんな都市にいるのか、あのライトニング卿が。」
「へへぇ、間違いないですよ、旦那。寄りゆく町で様々な難題を解決し、人々の信頼を得て莫大な財産を築いたゴール商会のトップ、ライトニング卿。旦那も彼が目当てでこんな田舎都市においでなすったんでしょ?」
モゴクと呼ばれた商人風の男がそう答える。
「まぁ、彼ほど財産を持つ人はこの周辺では数えるほどもないだろうな(・・・それに彼は政治に興味を持っていると聞く。ならば、我が党に勧誘しなければ、上院の元貴族どもに取られてはかなわん)。」
アーガイルと呼ばれた紳士的な男がそう心の中でつぶやく。
「へぇ、やはり下院議員様にも彼は注目される逸材なんで。あっ・・・着きましたよ、知人の商人の話では、あの館にライトニング卿は滞在しているようです。」
アーガイルとモゴクが館に到着する。館は古びてはいるが、丁寧に掃除が行き届いているように見える。
「ふむ・・・ライトニング卿が滞在しているといいのだが(なにせ、急な訪問だ。卿が大陸全土を周遊しているため、アポイントが取りにくいのもあるが・・・)。」
「へえ。・・・おや、館の前がちょっとした騒ぎになっておりやすね?」
モゴクが館の正面を見ると、2人の主婦らしき女性が門の前で、館の執事であろう人と口論している。
「・・・ですから、ライトニング様にこの子の様子を見てやって欲しいのです!ほんの少しの時間でいいですから!命がかかっているんです!」
「・・・申し訳ございませんが、館の主は他の事業で手が一杯でございまして・・・。貴方様も同じ要件ですか?」
「うちは主人が偽のお金をつかまされたって騒いでいて、ちょっと心配なのよ!!もし領主様に偽のお金を払ってしまったら、うちの一家の首が飛んでしまう!明日までに払わないといけないんだ、頼むよ!」
「・・・そうですが、それは困りましたね。しかし、主の方も時間がありませんもので、本日はどうかお引き取りください・・・。」
執事の男は女性2人に詰め寄られて、大変苦しそうだ。アーガイルはこれは自分が収拾しなければならないかと足を踏み出した。
「・・・どうした、ドルノド。そちらの方は?」
その時、館の奥から黒髪に燕尾服がよく似合う青年が優雅に闊歩してきた。
「はっ、我が主様。実は、この方々が申しておりまして・・・・・・」
ドルノドと呼ばれた執事が、2人の女性の要件をかいつまんで説明する。
「ふむ、事情は分かった。・・・奥さん、その子を診せてもらえるかな。」
「は、はい! ありがとうございます、ライトニング様!!」
青年は赤ん坊の頭に手を当て、なにやら集中している様子だ。
「・・・うん、分かったよ。奥さん、この子にはライーダ草とリルネル水を混ぜたものを3匙ほど飲ませなさい。それで明日以降は回復に向かうはずだよ。」
「ああ、ありがとうございます、ありがとうございます!!」
赤ん坊を連れた女性はしきりにお礼を青年に向けて言う。
「それで、貴方は?」
「あ、じ、実はこの金貨が本物かどうかを見て欲しくて・・・。」
青年は袋に入った金貨を受取り、なにやら難しい顔をして念じている。
「うーん・・・・・・この袋に入っている30枚の金貨のうち、見た目には変わらないがこの4枚は錫が75%入っているから偽物だね。この辺は悪銭をばらまく輩もいるようだから、取引の際には充分気をつけて。」
「は、はい! 助かりました、ありがとうございます。」
女性は深くお辞儀をして、お礼を述べて立ち去っていった。
「・・・ふむ、モゴク。かの卿は噂に違わぬ人物のようであるな。」
「へぇ。そのようで、旦那。」
その様子を一部始終みていたアーガイルとモゴクが呟く。
「ふぅ・・・それじゃあ、私も仕事に戻るかな・・・。うん? そこにいるのはモゴクさんじゃないですか?」
そばに経っていた青年は商人モゴクに気づいたようである。
「へぇ、ライトニングの旦那。お久しぶりでございます。パウエルでは大変お世話になりました。」
「いえいえ、こちらこそ良い取引をさせて頂きましたよ。それで、こちらの方は?」
青年とモゴクは軽い挨拶を交わし、アーガイルの方に向き合う。
「へぇ、こちらの方は、ヴェール大陸で下院議員を務めてらっしゃいます、アーガイル議員でございます。」
「! これは、お噂はかねがね。私はゴール商会で会長を務めております、ライトニングリッジと申します。以後お見知りおきを。」
青年は優雅に腰を折って、王都風の挨拶をする。青年の綺麗で上品な佇まい、そして好感を覚える顔にアーガイルは驚く。
「これは初めまして。ご丁寧にありがとうございます。私はモコグの紹介にあった通り、ヴェール大陸の下院議員を務める、アーガイルと申します。突然のご訪問申し訳ございません。・・・・・・実は、今日は貴方を政治の世界にお誘いしたく参りました。」