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王都

「はぁ・・・疲れた。でもこれを見ると、大量のものから『選出』したのは無駄じゃなかったのかな。」


オレは1週間のパウエル滞在を経て、移動時間の1週間も含めると2週間ぶりにセルティックのナミアの家に戻ってきた。そして、戻ってきてから確認したオレのステータスはこうである。



Lightning Ridge (ライトニングリッジ) Lv.9 スキル『選出』



・・・これは『選出』を使ったことでレベルが上がったということで良いのだろうか? イマイチ実感が湧かないが、そういえば前より多くのものから『選出』できるようになった気がする。


「はぁ・・・神様も、もっとわかりやすいスキルとか能力くれよな。ステータスとか数字になってなくて見れないし。」


オレは一人ぐちながら、部屋のベットに寝っ転がる。しかし、この能力を使えば、この世界で稼ぐことは容易なようだ。・・・今のところ、1日1回という回数制限がネックといえばネックではあるが。


「(コンコン)リッジお兄ちゃん、ご飯ができたよ。」

「・・・ん、ああ、今行く。」


そういえば、ナミアがお兄ちゃんと呼んでくれるようになった。まぁ、1ヶ月くらいの付き合いになるし、いつまでもさん付けよりは親しくなった気がして嬉しいが。


*********************************************************


港町パウエルの後も、いくつかの町をゴールさんと周り、優秀な武器を買い集めていった。その一方、優秀な武器を求めてやってくる冒険者に買い集めた武器を売り、ゴールさんとナミアの店はセルティックではかなり評判のいい店となっていった。


「ガハハ! 儲けが大きすぎて笑いが止まらねえぜ!」

「もう、お父さん! ちょっと飲みすぎだよ!」


いつもの夕食時、ゴールさんが男らしくデカイ容器で酒をあおり、それをナミアがたしなめている。


「それもこれも、ナミアがリッジを連れてきてくれたおかげだな。これからもしっかり身も心も繋ぎ止めとけよ!!」

「もう! 何言ってるの!! ・・・お兄ちゃん、お父さんの言うことは気にしないでね・・・?」


ナミアが赤い顔をしながらも否定する。だけど、まんざらでもなさそうな表情だ。


「・・・うん、それでな、ナミア、リッジ。ちょっと話がある。」

「なに? 急に改まって、お父さん。」

「なんですか、ゴールさん?」


少し酔いが醒めた風なゴールが、急に真面目な顔をして、2人を見つめる。


「いやな、前から考えていたことではあるんだが、最近は利益も順調にだしているし、そろそろ王都ライオネルに店を出そうと思うんだ。」

「・・・えっ!? お父さん、それ本気で言ってるの?」


ナミアが驚いた顔をしてゴールの話を聞いている。


「ああ・・・。そろそろ良い武器がセルティックではさばききれなくなってきてな・・・。リッジもいることだし、これを機に商売を増やすのも良いと思っているんだが、2人の意見を聞きたくてな。」

「私は・・・お父さんとお兄ちゃんの行くところに付いていくよ。離れ離れには絶対なりたくない。」


ナミアは真剣な表情でそう答える。幼い頃に母親を亡くなったナミアにとっては、家族の繋がりがなりより大事であり、大切なのだろう。現に、ゴールが地方遠征に行っているときはいつもより寂しい顔であることが、最近はっきり分かるようになってきた。


「そうか・・・お前はどうだ? リッジ。王都ライオネルまで付いてきてくれるか?」

「オレは・・・。」


ゴールさんにそう聞かれて、オレは考える。この世界に来て早半年。ナミアとゴールさんに世話になり、衣食住の面倒まで見てもらって親切にしてもらっている。確かに『選出』の力をゴールさんのいいように使われている気もするが、家族が食べていくため、ナミアを幸せにするためなら、それでいいと思っている。なにより、オレはナミアとゴールさんが好きで、2人を幸せにしたかった。


「オレも・・・行きます、王都ライオネルに。役に立てるかどうかは分からないけど。」

「ガハハ! 何言ってんだ、お前の力に助けられてるんだし、たとえ力がなくても男手は必要だ。それにお前はもううちの家族で、オレは息子だと思っているぞ。」


ゴールさんはそう言ってくれる。なんとなく、この世界にきて初めて家族の暖かさを痛切に感じた。・・・以前のオレにも家族はいたのだろうか? その家族はオレのことを心配してるだろうか・・・。


「・・・っと、悪い。お前はここに来るまでの記憶が・・・」

「いえ、いいんです。今のオレにとっては、ゴールさんが父親で、ナミアが妹みたいなものですから。」

「そうか、それならよかったぞ! ガハハ!」

「もう・・・。」


ゴールが陽気に笑い、ナミアが何故か少し拗ねたような顔になっている。・・・多分、王都に上がっても同じように暖かい家族を築いていけるだろう。


************************************************************


「ほぇ~! こんなにデッカイんだねぇ、お兄ちゃん。」

「あぁ、こいつはビックリだな・・・。」


それから1ヶ月後、オレたちは王都ライオネルに来ていた。人の多さは東京よりも多いかもしれない。そのくらい人がごった返ししていた。


「ん?あれは何、お父さん?」

「ん、ああ、あれは王都の王族と議員たちが住む議会場だよ。」


ライオネルは議会場を中心に、円のような作りになっていた。議会場は街の中心の丘のようなところにあり、東京ドーム何個分もあるような莫大な大きさだ。


「ふーん・・・。あ! 私たちが住むお店はどこ!?」

「はいはい、ちょっと待ってな、もうすぐ着くからよ。」


そう言ってゴールは先を先導して歩く。オレたちの店は中心街から少しはなれた、鍛冶街の外れの方にあるらしい。


「・・・中心街に住むこともできたんだが、いきなり地方からきたやつが住むと、ご近所の目がヤバイらしくてな・・・。」


・・・王都だけあって、政治的な駆け引きや人の恨み辛みがあったりするのだろうか。まぁその辺はどこにいっても同じかもしれないが。


「ほら、着いたぞ、ナミア、リッジ。」


思いにふけって歩いていると、オレたちの店に着いたようだ。少し古いが、商売をするには充分広い。というかセルティックの店の2倍の広さはあるぞ、これは。


「これからヨロシクな、2人とも!」

「うん、頑張ろう、お父さん!」

「はい、頑張りましょう!」


3人の王都での日々がこれから始まろうとしていた。

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