目利き
「おかえりー!! ・・・って、どうしたの?」
『霊斧イカヅチノミコト』を購入した後、鍛冶街を後にし、ナミアの家に帰ってきた。ゴールさんはなんだか厳つい顔をしている。
「おぅ、帰ったぞ。・・・いや、こいつの目利きが凄すぎてびっくりしちまったんだ。」
「へぇーそうなんだ。やっぱり、リッジさんも人や武器を見る目があるのかもね!」
ナミアが嬉しそうに笑っている。ゴールさんは難しい顔をしたままだ。
「うーん、こりゃ、こいつにも商売を本格的に手伝ってもらった方がいいかもな・・・いや、でもさっきのは偶然ってことも・・・」
「いいからお父さん、早くご飯にするよ!!」
ゴールさんがなおもぶつぶつ呟いていたが、ナミアがその背中を押して食堂に進ませる。・・・オレも腹が減ったなぁ。・・・今日の晩御飯は何かな?
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ゴールさんと何度か鍛冶街に向かい、その度に『選出』を使って武器を選んでいたが、オレの『選出』はやはり武器の目利きに有効らしい。『霊斧イカヅチノミコト』以上のものはこの町では見つからなかったが、それでも業物や傑物を発掘することができた。
「ガハハ! こりゃすげえや、リッジ! 百発百中じゃねえか!」
「いた、痛いですよ! ゴールさん!」
何度目かの目利きの後、ゴールさんがオレの肩をバシバシと強く叩く。
「こりゃあ、お前がナミアと結婚したら、うちの商売は安泰だな!」
「いや、なんでそうなるんですか!!」
ゴールさんはご機嫌だ。それもそうだろう。まともに買えば数万ゴールドは下らない武器を、たったの数百~数千ゴールドで手に入れているのだから。
「よし、決めたぞ! 次の地方遠征はお前も来い! 次の遠征地は港町パウエルだ!!」
「ええ!? そんな急に決めないでくださいよ・・・。」
オレは散々の目利きに辟易としながら、ガックリと肩を落とす。・・・これは、ゴールさんには『選出』の力を話さなければならないだろうな。
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「おぉ、この世界にも海ってあるんだなぁ・・・。」
「おい、リッジ! 何してんだ! さっさと中心部に行くぞ!」
ゴールさんと一緒に来ているのは、セルティックの町から馬車で3、4日の距離にある港町パウエルだ。港町というだけあって、海に面しており、漁が盛んなようだ。海は地球ではありえないくらい透明度が高く澄んでおり、とてもいい気分になれる。・・・ナミアを留守番させているのがちょっと気がかりというか罪悪感があるが。
「・・・しかたねぇだろ、誰かが残って店番なきゃ、うちは飯が食えなくなっちまうんだ。」
そういうゴールさんもセルティックの町にいるより少し寂しげだ。愛する愛娘と離れるのはやはり寂しいのだろう。
「まぁ、その分、お前さんにはガッツリ目利きして稼いでもらうからよ! ガハハ!」
「・・・できる限りは頑張りますよ。」
この数週間ナミアとゴールさんと接してみて、オレは2人の人柄がすごく好きになっていた。ナミアは優しく親切で、将来が楽しみな美少女であるし、ゴールさんは表裏がなく陽気で人を楽しませる才能に長けた人だと思う。
「さぁ、中心部まではもうすぐだぞ、リッジ!」
・・・港町パウエルは海に面しているのは前述の通りだが、他の町にはない特徴が一つある。それは、海底ダンジョンがこの町のすぐそばにあることだ。ダンジョンからは有能な武器や防具が沢山発見され、それが町の商人に売られるのだそうだ。ちなみに海底ダンジョンらしく、水属性の武器が多く見つかるらしい。・・・まぁ、オレたちはダンジョンには潜らないけどな!
そうしてゴールさんと歩き、パウエルの中心部へとやってきた。見る限り人で埋め尽くされており、セルティックの何倍も商業が栄えた町だと分かる。
「・・・いやぁ、すごい人ですねぇ、ゴールさん。」
「そうだな、ここはいつもこんな感じよ。さて、お前さんの力は1日1回が限度なんだっけな・・・なら、一番大きな区画でやってもらおう!!」
ゴールさんには『選出』の力を話してある。最初は気味がられないか不安だったが、そんなことはなく、ゴールさんは陽気に接してくれた。
「よし、この辺りでいいだろう。やってくれ、リッジ!!・・・くひひ、これで水属性の良武器ゲットだぜ!」
「はい!行きますよ!(心の呟きがもれてますよ、ゴールさん・・・)」
そうしてオレたちは港町パウエルに1週間程度滞在し、『海槍クロノス』、『水聖剣エスパダ』、『水銃リオ・グランデ』の他、様々な業物を入手することができた(てゆうか、この世界にも銃ってあるのね!)
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『海槍クロノス』 攻撃力258 火弱点の敵に絶大なダメージ。水属性の攻撃を大幅軽減。
海王ポセイドンが幼い頃父から賜った槍。海の眷属を全て味方につける協力な槍。
『水聖剣エスパダ』 攻撃力178 火弱点の敵に絶大なダメージ。
聖なる儀式を経て精錬された剣。全ての者を水の流れのごとく淀みなく切る剣。
『水銃リオ・グランデ』 攻撃力147 火弱点の敵に絶大なダメージ。
銃弾に水属性の加護をつける2対の銃。リロードが流れるように速いことで有名。