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聖地

「おお、ここが武器の聖地、カリバーンかぁ・・・。」

「うん・・・ここは凄い雰囲気だね。びしびしと伝わってくるよ・・・。」


オレが下院議員になって1ヵ月後、議員での手続等が終わり、アーガイルさんとも何度か打合せをして、国会まで残り2ヶ月となってきた。オレとナミアは武器の聖地カリバーンに住むという、ゴルコンダ下院議員を訪ねる途中にある。


「ゴルコンダさんってどんな人なんだろうね・・・」

「ああ。話に聞く限りは元冒険者で元貴族、かつては上院議員の副代表までなった男なんだが、冒険を通じて民衆の助けになることがしたいと下院に転院。しかし、元上院の経歴が邪魔して下院でも厄介者の扱いを受けているという噂だ。」

「ふ~ん・・・元貴族で冒険者だけど、優しい人なのかなぁ・・・。」

「まぁ、会ってみればわかるさ、ナミア。」


ゴルコンダ下院議員は武器の聖地カリバーンの南はずれに住んでいる。元冒険者でそうとう強かったという話だから、このカリバーンで支持を得られているのだろう。


「すみません、お約束しておりましたライトニングリッジと申しますが、ゴルコンダ議員はいらっしゃいますでしょうか。」

「はい、お待ちしておりました。本日は2名様ですか? 奥へお上がりください。旦那様がお待ちです。」


ゴルコンダの館では妙齢のメイドが出迎えてくれた。メイドは杖をもっており足腰が悪そうだ。だが約束はしてあったので、快く奥に通される。


「・・・うむ、来おったか。貴様がライトニングリッジだな。」

「・・・お初にお目にかかります、ゴルコンダ議員。セルティックの町出身のライトニングリッジと申します。この度、下院議員に所属させていただくことになりました。」

「ふん・・・成金風情が・・・。まぁいい、そこに座れ。」


・・・なんだか見るからに悪印象だ。オレは何か粗相をしでかしただろうか?


「して・・本日は何のようだ、ライトニング議員?」

「はい、実はかつて上院議員の副代表でもあらせられたゴルコンダ議員に、上院の内部組織をお伺いしたく存じまして参じました。」

「・・・・・・」


ゴルコンダはあからさまに面倒くさそうな顔をする。


「それを知ってどうする? わしもかつては腐りきった上院を正そうと、元上院副代表の力をつかって政治を正しい方向に導こうとしたが、結局は無駄だった。下院議員は誰もわしを信用せぬし、信用したとしても上院には絶対に勝てん。そもそも、わしが貴様に協力する理由がない。」

「・・・この子ナミアはこの大陸の政治に、父親を殺されました。その復讐というわけではないですが、私はこの子ナミアを幸せにするために、この大陸の政治を変えたい。私がヴェール大陸の内閣総理大臣となって、この大陸の不正を一掃したいのです。」

「・・・・・・ふはは! 何を言うかと思えば、内閣総理大臣だと!? 無理に決まっているであろう!! 貴様はまだ若いから知らないかもしれないが、この国では47回議員選挙が開かれている内、下院が上院に勝ったことは一度もないのだ!! 民主主義を詠いつつも、実際は元貴族どもの言いなり、それがこの国の政治よ。・・・それとも、貴様にそれだけの力があるというのか?」

「・・・力なら、あります。」


ゴルコンダの憤るような、嘲るような言葉を受けて、オレはキッパリと断定する。


「・・・ほう、ならば証明してみろ。そうだな・・・わしは元冒険者だ。最も強いものに選ばれるものが、一番上に立つ資格があると思っている。明日の晩までに、この武器の聖地カリバーンで、最も強い武器と思うものをわしに示してみせよ。それが正しいものであれば、貴様に協力してやる。」

「・・・わかりました、明日必ずやゴルコンダ議員のお目に叶う武器をお持ちします。」


売り言葉に買い言葉ではあったが、ゴルコンダ議員に勝負に勝った暁には協力してもらうことを取り付け、オレとナミアは館を後にした。



**************************************************************************:



「どうするのよ、あんなこと言って? この町はセルティックの何倍も広いのよ? いくらお兄ちゃんの『選出』でも・・・」

「あぁ・・・しかし、ああした条件を出された以上、受けないわけにはいくまい。」


ゴルコンダの館から、カリバーンに取った宿屋に戻り、ナミアと対策を相談する。


「なぁに、これまでもこうした逆境はあっただろう? 今度だって上手く成功させるさ。」

「うん・・・お兄ちゃんならなんとかしてくれるとは思うけど・・・」


そして、オレとナミアはオレがもっとも力を集中しやすいスポット(武器屋や鍛冶屋が固まっている箇所が効率よく『選出』の効果範囲に収まる場所)を探すべく、夜のカリバーンに繰り出した。


「カリバーンの地理を考えると、この辺りがいいな。よし、じゃあ行くぞ・・・!」

「うん、お兄ちゃん、頑張って!!」


オレは今までになく集中して『選出』を行使する。武器の聖地と言われるカリバーンの町でも最も強い武器を求めて・・・


「ん・・・これは・・・!!!」


オレは『選出』を使った結果に驚きの声が出た。


*********************************************************************:


「ご機嫌よう、ライトニング議員それで答えは出たのかな?」


翌朝、ゴルコンダ議員の館に再び訪れ、オレはゴルコンダ議員に面した。ゴルコンダ議員の隣には先日もいた妙齢のメイドが付き添っている。


「はい、この武器の聖地カリバーンで最も強い武器を示しに参りました。」

「ほう、そうか・・・にしては、今日は何も武器を持ってきていないようであるが?」


ゴルコンダが嘲るような笑みを浮かべる。確かにオレは今日何も武器を持ってきていない。


「・・・その前に、そちらのメイドさん。失礼ですが貴方の杖を少し拝借してもよろしいでしょうか?」


オレの言葉にゴルコンダとメイドが目を見開く。メイドからオレに杖が渡された。


「ゴルコンダ議員。この武器の聖地カリバーンはもともと、冒険者が集う名も無き町であったと聞いております。それがただ一人の無名の冒険者によって、数々のダンジョンが攻略され、多くの冒険者が集まるようになって武器の聖地と呼ばれるようになったのだとか。その一人の無名冒険者が使っていたとされる宝剣。・・・残念ながら、その冒険者は決して名乗らなかったため、名前はわかりませんでしたが、武器の名前は分かります。それがこの・・・『宝剣エクスカリバーン』です。」


オレは妙に太い杖に『選出』の力を使い、元の姿が選び出されるようよう願った。・・・すると、杖と思われたものは一瞬にして金色に眩い宝剣に変わった。


「・・・・・・素晴らしい。どうしてバレたのかは疑問に思うが、それが貴様の力なのだろうな。よかろう、ライトニングリッジ、貴様に力を貸してやる!」


・・・後から話を聞くと、ゴルコンダ議員に付き従う妙齢のメイドこそが、かつてこの町で伝説の冒険者となったその人だったのだそうだ。彼女の『宝剣エクスカリバーン』がこの町の由来にもなっていたらしい。


「やったね! さすがお兄ちゃん!!」

「ああ、これで目標に一歩前進だな。」


オレとナミアは抱き合って喜び合う。しかし、そんなゴルコンダを冷たい声が遮った。


「喜んでいるところ悪いが、わしの力を借りたからといって、政権交代がなされるとは限らない。特に、今の上院議員副代表ランメルスベルグがいる限りはな・・・。」


************************************************************::


『宝剣エクスカリバーン』 攻撃力355 闇弱点の的に絶大なダメージ。

かつて一人の乙女がその刀を振るい、戦争を勝利に導いたとされる剣。その眩く黄金の輝きには絶対の勝利しか映さない。


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