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月夜の追憶

追記:サブタイトル、小説本文の一部修正をしました。

 日もすっかりと暮れた夜の街、月明かりが静かに全てを照らしている。殆どの人間が眠りに就いている時間、しかしその家の二階の一室にはまだ明かりが灯っていた。

 

 その部屋には一人の青年が眠りもせずにベッドに腰掛けて考え込んでいた。青年の名前はカイル、明日からギルドに登録し冒険者となる者だった。彼は明日からのことを考えるとなかなか眠ることが出来なかった。冒険者になることへの期待と不安、それが胸の中で渦巻いていた。

 

「あれから四年…か」

 そう一人で呟いてベッドから立ち上がり、自室の窓を開けた。ひゅうっと冷たい夜の風が入ってくる。カイルはそんなことを気にせず窓の外を眺める。月明かりに照らされた家々が見え、少し遠くにはこの国の王城がそびえ立っている。

 

 この国の名はオルタフス王国。この世界の中央大陸、その丁度中心のディメオと呼ばれる地に位置する、賢王とも謳われる名君が統治する豊かな国家。それは今も昔も変わらない。だが、一つだけ変わってしまった所がある。

(四年前から…、あの場所だけは)

 カイルは王城よりも更に遠く西側を眺める。そこはかつて西街が存在した場所。今では高く白い壁が建ち並び、壁の向こう側には青々と生い茂った木々、日の沈みを告げていた鐘突きの塔。そして廃墟となった王立の研究所くらいしか見えない。

 

 カイルは自分の胸の内に苦い感情がこみ上げて来るのを感じていた。築き上げられたあの白い壁を見る度に感じるものだ。

 

(冒険者になれば、また二人に会えるだろうか……)

 そんなことを考えながらカイルは思い出す。四年前のあの日を、それは決して忘れることの出来ない一日の記憶を。




-四年前のオルタフス王国の西街、とある広場-


 その広場の中央には噴水があった。カイルは噴水の近くのベンチに腰掛けて、友人たちを待っていた。けれども、そのうちにウトウトと眠ってしまっていた。


「…イル…!…きろ……」

 誰かが自分を呼んでいるみたいだ。だけど眠くてしょうがなかったので無視をしてみた。そうしたら、はぁ~っと短い溜息が聞こえその直後に。

 「おいっ!!、カイル!起きろってば!!」

 と大声を掛けられ更にぐらぐらと身体を揺すられて、驚いてカイルは目を覚ました。

 

「そんなに強引に起こすことはないだろルーク?」

 カイルはやや不機嫌に自分を起こした友人の名前を呼んだ。名前を呼ばれた少年、ルークはちょっと笑いながら悪びれる様子もなく。

「あはっ!悪い、悪い…」

 と軽くルークは謝るだけだった。いつも彼はこんな調子だとカイルは知っている。だからそれ以上は何も言わずに、彼に対して呆れる仕草をしただけだった。


 ルークは十四歳の自分よりも一つ年上の友人で、自分と彼の両親が知り合いだったこともあって小さい頃からよく遊んでいた。いわゆる幼馴染だ。


「みんながここに集まるまで、少し眠っていただけだよ」

 そう言ってカイルは欠伸をした。

「よくこんな場所で眠れるな……」 

 ルークは呆れ半分、関心半分の視線でカイルのことを見ながら言った。しかし、彼はそんな視線に気付かずに目を擦りながら話を続けた。

「うん、まあね。昨日は夜遅くまで父さんの話を聴いていたから、それで寝不足でね」

「あっ?おじさん帰ってきたんだ」

「うん、ストヴァ-ク方面でのギルドの仕事を終わらせて、昨日の夕方に帰ってきたんだ」

 先程までの眠たそうな表情とは一変して、少し笑顔でカイルはルークの問い答えた。


 カイルの父親はギルドに所属する冒険者だ。だからギルドの仕事で家を空けることが多く、長い場合は半月近く帰ってこない時もあった。その間は母親と二人で過ごしているが、時々父親がいなくて寂しいと感じる時もあった。だから父親が帰って来るのはとても嬉しくて楽しみなことだった。とくにカイルは父親の土産話が大好きで、仕事で訪れた地で出会った人や食べた料理。それに見た景色の話をよく聴いていた。そんな父親に憧れて自分も将来はギルドの冒険者になってみたいなと、ぼんやりと思ったりもしていた。


「いいな~、おじさんの土産話」

 ルークはそのことを聞いて羨ましそうに言う。

「父さんならあと三日間くらい家にいるって言ってたから、明日にでも家に来なよルーク。父さんも喜んで話をしてくれると思うよ」

「本当か!ありがとな、カイル!!」

「それはそうと……」

 言いながらカイルは、友人たちと待ち合わせ場所にしている広場をぐるりと見渡す。

「ティアに君の妹のレイラはどうしたの?」

 まだ来ていないもう一人の幼馴染とルークの妹のことを彼に聞いた。今もこうして二人で会話をていても一向に姿を見せない。

 

(もしかして、ティアもレイラも体調でも崩したのかな?でも、昨日は二人に会っているし……)

 そんなことをカイルは考えていた。そしてルークの方を見た。彼は自分が何を考えているのかを察したのか、ニヤッと笑っているだけだった。

「……はぁ~。ルークは何か知っているんだね?」

 そんな態度にカイルは気付いて、ルークに質問をした。彼がこうやってニヤニヤとしているのは、間違いなく自分をからかっている時だと知っている。


「ははっ!実はなカイル……」

 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 書いてみて、小説って本当に書くのは大変なんだなと実感しました。一話完成させるのに二日近くかかるとは……。


 読んでいて誤字、脱字その他気付いたことがあったらご指摘お願いします。

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