28話
思った通りに話をつなげるのがこんなに大変だったとは……
さて、異世界にきて1,2……7日、最初に寝ていたという3日を含めると10日がたった。今日は遺跡に潜ることなく、学院の図書館に足を延ばしている。え、なぜって?もちろん勉強するためだよ。
「えっと、魔法語は大丈夫みたいだから、魔法を使う順序立てかな?まずは……」
今回はミコトに頼んで魔法について講義してもらう形にしてもらった。残念ながら、教本を読んだだけで万事OKなんて理解力を持っているなんてことがないからだ。今までティーナに流してもらった魔力を火種に、感覚で使っていたものを理論で補強しようって魂胆だ。
「確かに魔法を使うのに重要なのは想像力ですが、詠唱にもそれぞれ意味があって……」
もちろん授業でもやることではあるが、ほとんどの生徒にとって基本中の基本であるためそこまで詳しくやらないのだ。そういった基本から勉強する必要がある人たちは、もっと規模の小さい一般の学校に行くので学院ではあまり触れないのだ。
「この場合重要となるのは、言葉によって自分の意志に方向性を持たせることなので……」
それだけでわざわざ図書館に足を延ばすのかって?授業についていけなくなったんだよこの野郎。基礎となる知識が全くない状態なので、授業で先生が何言ってんだかさっぱりわからないんだよ。
「無詠唱で魔法を使うと、どうしても規模が小さくなるのは、世界に対する干渉が……」
とは言え、言語の知識はあるので軽く教われば何とかなるんじゃないかって思って、先生じゃなくミコトに頼んで教わっているってわけだ。……まあ、そんなの甘い考えだったと思い知らされて今はただ自力で魔法を使うための1歩というやつを牛歩ながら歩んでいる。
「そこで生み出されたのが魔法陣による詠唱破棄です。ただし魔法陣の強度の限界が……」
いくらかごちゃごちゃ言ったが、つまり色々すっ飛ばしていたものをちゃんと理解しようってことだ。本来あるべき魔法の覚え方ってやつだな。最低でも数か月かかるそうだが……
「っと、ここまでが今主流の魔法基礎理論です。ちょっと脱線してしまったところもありましたが……何か質問はありますか?」
「……」
……俺だって馬鹿じゃない。特に全く知識のない状況だったし魔法に対する憧れもあり、ラルツから借りた教本は一応目も通した。だが、一朝一夕でマスターできるほど魔法は甘くない。わかっていたことなのだが……先ほども思ったが、魔法というものをなめていたようだ。
「どこがわからないのかすら、わかりません」
「……確かにこれは、大変ですね。アーノルド先生が言ったことの意味が分かった気がします」
先生モードに入るときにつけたメガネを治しながら、どこか暗さを感じる表情を見せる。
「今まで本当に感覚だけで魔法を使ってたんだね……天才肌ってやつかな?正直妬ましいよ……」
「いや……」
正直に『カミサマが認めるレベルの凡人です』って言いたかったが、そういうわけにもいかない。あえて言うのなら、俺が魔法を使えるようにできるティーナとかが天才なのだというべきだろう。
「まあいいです。じゃあもう1度、今度はもう少し噛み砕いてやってみましょう」
表情を見る限りちっともよさそうじゃないが、今回おれが教わる側であるので無粋なツッコミはしないで置く。
「……となるわけです。これでどうですか?」
「……なんとなく、少しは、わかった、気がする」
1度目の説明を聞いてからさらに2回、手を変え品を変え説明をしてもらってようやく理解のとっかかりができた気がする。講義だけでなく、実演もしてもらったため司書の先生から説教されたが何とか収穫があってよかった。
「まったくです。これで何の成果もなかったら困ります」
出来の悪い生徒でホントすみません……だけどおかげで魔法について大分理解できた(俺主観)。この調子でいけば……どうなんだろう?ナハートに追いつけたりしないかな?まあ、足手まといにならない程度になればいっか。
「おや、グランツ君にグランバルドさん、そろそろ閉館時間ですよ?」
「あ、お疲れ様です、先生」
「お疲れ様です」
突如湧いて出たのは、担任のアーノルド先生だ。一応言っておくが、俺たちを叱った司書の先生とは別の人だ。
「どうして、ここに?」
「借りていた本を返しにね。ここは地下に未整理の本が大量にあってね、王国の黎明期の本もたくさんあるんだ」
なるほど、だからこの人はここで教員をやっているのか……笑顔が眩しいっす、先生。
「ついでに君の様子を見に来たんだよ。で、どうだい?ここには慣れて来たかい?」
俺はついでかい……
「まあ、一応。何とか、落ち着いてきました」
思っていたより高い俺の適応能力に自分で驚きながらも、とりあえず問題なく過ごせていることを告げる。
「そうか……それならいいんだ。そうだな、問題がないのなら少し頼みを聞いてもらえるかな?」
「モノによります」
これは……次のステップに行くイベントかな?できればもうちょっと力をつけてからにしたいが、時間切れでゲームオーバーは避けたいからしょうがないな。
「そう構えなくても大丈夫だよ、君の故郷の話を聞かせてもらいたいだけだからね」
「?」
ミコトが不思議そうな顔をしているが……なるほど、『初代』について隠れ里に伝わっていることを知りたいってことか。
「話せるようなことは知りませんよ?」
「なに、これでも私は学者でね。小話の中からそういったものを探すのは得意なんだよ」
む……あまり断っても不審に思われるだろうし、どうしたものか……いっそ誤解を解いてしまうか?でもそうすると、俺はなんて名乗るべきか、って今はそんなこと考えてる場合じゃない!
「……いつですか?」
「そうだね、1週間後に邪魔が入らない場所を用意するよ」
「わかりました、ではあとはその時に」
細かいことは後日に連絡することになりその場での話は終わったが、そこで一つ問題が発生した。
「なに、今の話?」
「先生に聞いてくれ……」
ミコトをごまかすのに時間を使い、図書館の閉館時間を過ぎてしまい司書の先生に再び怒られることになった。




