26話
さて昨日の帰り道だが、ティーナとナハートで殲滅したかと思っていた魔物もどきだが、また山のように出てきてもう大変だった。でもみんなは『思っていたより再生が早いな』程度の感想しかなく、本当に死ぬかと思ったよ。
「それで、今日はどうする?」
基本的には俺とナハートでほとんど倒したけど、ナハートは結構被弾があった。ここは身体能力の差だろう、後衛型の魔法使いって本当にスタミナがないんだって思い知らされたよ。この時ちょっとだけ<円楯>を試してみたけど、タイミングが思った以上に難しかった。……一応言っておくけど、楯をもう一回活用するタイミングが、だからな。
「さすがにアスカがこんな状態じゃあ、遺跡に行ってもしょうがないしね」
とはいえ俺だって身体能力を魔法で水増ししているだけなので、ある意味当然の結果でもあるわけだが……朝起きたら全身筋肉痛でまともに動けない始末だ。<強化外装>の特徴だが、あくまで外を覆うものであり中身は変わらないみたいだ。これから筋トレ必須だな……
「じゃあ、街に行ってみたい」
「そうね……これから何かあったとき街に行ったことがないっていうのも困るだろうし、ちょっと案内してあげるわ」
学院と寮の往復だけの生活だなんて健康的じゃないし、何よりこのままじゃ遺跡にこもりっぱなしになりそうな予感がして……と言うより、戦い漬けの生活なんて耐えられません。せっかく異世界に来たんだし色々やっておきたいじゃないか!
「それじゃあ、ナハートとミコトに伝えてくるよ」
その必要があるかは微妙だがな。ちなみにナハートは俺以上の筋肉痛でベッドから出てくることができずに欠席して、ミコトもその看病をしているそうだ。俺?<全身外装>で無理やり体を動かしてきたよ。そのおかげか今は大分ましになってきた。
「それで、本当に大丈夫なの?」
「飛んだり、跳ねたりまではできない。けど、歩き回るぐらいなら、問題ない」
ティーナって実は結構心配性なのかな?まあ、部屋からから出るとき這って出てきたの見られたからな……
「そう……辛かったらちゃんと言ってよね?えっと、チームメンバーの体調の把握もリーダーの仕事なんだから」
…………ふむ、意外といいものだな。
「なによ」
「いや、なんでもない」
今のかわいかった、とか言ったらどうなるかな?いや、実際言えるほどの気概は無いけど……今のはちょっと無理していってみても良かったかもと思えるレベルだった。
『(今のかわいかったって思っただけだよ)』
日本語で、しかも小声だったのでたとえ聞こえたとしても意味は分からなかっただろう。
「と言う事で、街まできました」
「やっぱりそれ言うのね」
「まあいいじゃないか。それで、どこに行こうか」
そうだな、興味があるのは……
「雑貨屋、魔導具屋、食事処、傭兵ギルド……あと城も、見ておきたい」
物価とか、文化とか知るにはいいと思うんだが……ほら、日本食なんて本当に変わってると思うしさ、この世界ならではのものが見られるといいな。
「了解、ここからだと傭兵ギルドが近かったはずね?」
「一応5年生から所属できるようになってるよ。前にも言ったけど中央では戦える人が多いからね」
そんなことも言っていたな……ん?ってことはティーナってこの世界の学生の中では指折りの実力者ってこと?頼もしいね。
「なんというか……それっぽい、建物だな」
そこにあったのはこれぞギルドって感じだとしか言いようがない建物だ。と言っても俺のイメージは傭兵っていうより冒険者なのだが……
「そこに貼ってあるのが魔物の目撃情報で、討伐すると報奨金が出る仕組みよ。まあ、討伐証明部位を持ってこないといけないわけだけど……」
なるほど、ティーナじゃ部位が残らないのか。
「ま、まあそれはいいとして、わたしの持っているB級魔法使いみたいな資格が無いと見れないような情報もあるから、機会があったら取っておいた方がいいわよ」
B級みたいな総合的な物以外にも、実態を持たない魔物と戦える資格や、水中、砂漠などの特殊なフィールドで一定以上の成果を上げたものに与えられるものがあったりする。
「やっぱり、有名な傭兵とかに、憧れたりするのか?」
あれだよ、勇者探しの一環ってやつだよ。『二つ名』とかあるのかなー、とか言うのもあるけど……
「わたしはあまりなかったかな?」
「おれが憧れたのは『天空の弓』かな?歴史ある傭兵団だし、団長は必ず飛竜を倒せる実力者だしね」
竜って、魔物としての竜かな?さすがに竜種ってことは無いだろうし……
「竜殺しってやつ?それだったら蒼の魔眼の方が好きかな?」
「3秒未来を見るっていうやつかぁ、結局格上には通じないって噂が出てから聞かないな」
「おいおい、『天空』が出たなら『大地』を忘れちゃいけねーだろ」
む?ムサイおっさんが混ざってきたぞ?
「『大地の斧』か……あそこも竜殺しでしたよね?」
「おうよ!もっとも飛竜じゃなくて吠竜だがな」
おー……ラルツの奴乗っちゃったよ……
「ちっと変わったとこでは『ベフェルスボルク』なんてとこもあるぜ!」
「聞かないところですね?どんなところですか」
「たった3人で400の子鬼を殺しつくしたって話だ。西の方でのことだから知らなくたって無理はないってな」
ガハハ、と笑うおっさんだが隣にたとえ1000を超える軍勢でも蒸発させそうなやつがいるから、あまりすごそうに聞こえないんだが……ラルツは感心しているが、ティーナはどうでもよさそうなあたりが更にそう感じさせる。
「まあここ最近でいえば『火矢』『緑丘』『双盾』そして『聖銀』が断トツだな」
「……そうですね、それでは私たちも次に向かうところがあるので失礼しますね」
「おお、そいつは残念だ!それじゃあまた縁があれば会おうじゃないか、嬢ちゃん」
急にそれだけ話すと、ティーナは俺たちの腕をとって早足にギルドを出て行ってしまった。……こんなことやったら余計目立つだろうに。
赤くなった耳が見えたが、俺もラルツも何も言わずティーナについて行った。
おっさん他、名もなき傭兵たちに今後の出演予定はありません。




