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24話

 ~~~ラルツ~~~


 今目の前でスライムと戦っている少年は、やはり天才と言うやつなのかと思う。

「やはり苦戦しているようだな!」

 ナハート君にとっては普通に見える様だね。でも凡人である俺にとっては違って見える。凡人には、イヌ型と戦って青い顔していた直後に、今度は平気な顔をしてスライムと戦うなんてできないだろう。

「しかしどういうことだ?あれに物理耐性がある事に気付いていないわけではないだろう?」



 そうなのだ。アスカ君はバカではない。確かに常識に疎い様だが理解力が無いわけではないのだ。恐らくではあるが……

「練習してるんじゃないかな?」

「どういうことだ?」

「そのまんまの意味だよ。スライム相手なら何度切ったって大したダメージにならないから、あれで戦闘の練習をしてるんだと思う」

 最初こそスライムが動き出したら完全に回避に移っていたけど、今はもうカウンターを試すレベルにまでなっている。……まだうまくできてないみたいだけど。



「だが!彼ならもっと上位個体相手でもどうにでもなるだろう?」

「だからこその練習なんじゃないかな。アスカ君はまだ自分がどこまでできるか把握できてないみたいだから」

 これにはナハート君も納得したみたいだ。でも実戦でここまで躊躇なく自分の力を試せるなんて、ちょっと正気を疑うレベルだ。

(やっぱりおれにも隠してることと、何か関係あるんだろうな)

 ティーナと一緒に何か隠しているのは、もう言うまでもないことだ。こんな中途半端な時期に学院に来て、自力で魔法をつかえないのにナハートと同レベルの魔法を使うよくわからない人だ。



(でもティーナが隠していることだしねぇ、できるだけ力を貸したいな)

 もうこれは、惚れた弱みとしか言いようがないだろう。幼馴染として過ごし、その才能に嫉妬したこともあったけど、やっぱりティーナが好きなのだ。これからアスカに嫉妬するようなことも起こるかもしれないが、それでもティーナが望むならどこまででも協力しよう。しかし、それでも、

(これだけは言えないよなぁ)

 この遺跡に来る前にアスカと話していた話題である。明確には2人とも言ってはいないが、それでもあれはわかりやす過ぎた。これからアスカには隠し事の仕方を教えなくちゃいけないんじゃないか、と思うぐらいだ。



(おそらく、いや十中八九アスカ君は人族の純血だろう)

 この話題を何のためらいもなく話したことから、ティーナもシンシアさんも知らないことだろう。そして誰かに話せば、必ずどこからともなく噂は広がっていくだろう。この類の秘密は隠しきれないのが常なのだから。

(まあ今のおれにできるのは、何が起こったとしても対処できるように少しでも力を、知恵を身に着けることだけだ)

 そう考えると自分の知らない知識を持つアスカの存在は、自分を高めるにはとても良い存在だといえるだろう。



(彼がいるからこそ、起こる問題の方が多いような気もするけどね)

 まったく、人生とはままならないものである。

「終わらせるようだぞ」

 ナハート君の言葉で我に返る。いつの間にかアスカ君の方は、どうやら体力的に限界のようだ。汗だくになって、体を覆う魔力も薄くなってきているのがはた目からもわかるぐらいだから相当頑張っていたのだろう。おれたちの後ろでは、ミコトが水とタオルの準備を終わらせている。



「ずいぶんとぎりぎりまで頑張ったみたいだね」

「一番最初とは比べ物にならないくらいうまくなったわよ」

 やっぱりティーナはしっかり見ていたみたいだね。まったく、うらやましい限りだよ。



 ~~~アスカ~~~


 ヌポッ、ドゥプッ、ジュボッ、シュパッ!


(お、今のはいい音だったな)

 かなり一方的に切りつけることになってしまったが、一向に動きを止める様子を見せないスライムに自分の予想が正しかったことを確信した。

(やっぱり物理耐性を持っていたな)

 俺のスライムに対する印象は2つ、そのうちの1つはただの雑魚というものだがもう1つは違う。物理無効、触れた相手を溶かし、一度とらえられたら脱出不可能といった剣士にとって最悪クラスの強敵、というやつだ。今回は両方あたっていた印象だけどな。



「おっと」

 あぶないあぶない、体当りか。……一度わざとくらってどれくらい<外装>の耐久があるのか確認しておくべきかな。その前にこの<外装>がどれぐらいの時間使えるのかを調べるのが先か?

『まったく……やらないといけないことがどんどん増えていくじゃないか』

 気づかず日本語でつぶやいてしまったが、幸いというべきか聞いていた人はいなかったようだ。

「さっ、ハッ!」

 さっきまでの剣が速さを重視したものだったのなら、今の一撃は威力を重視したものだ。だが思ったような一撃にはならず、無様極まりないものになってしまった。



(剛剣は向かないってか?)

 更にもう数回試してみるがしっくりこない。とりあえず距離をとって2,3度振り回してみると、結構いい感じの手ごたえがある。……今後の課題にしとこう。

「じゃあ、次の課題」

 今度は速くもなく、力も込めない、ちょっと中途半端な一撃である。だがアスカにとっては今回の最重要課題だ。それは剣を剣として扱うこと。

(ちゃんと刃を立てて、斬撃にしないと剣を持ってる意味がない、しな!)



 剣の向きに意識を割きながらの一撃は、満足はできないものの、それなりの成果を見せた。回避がおざなりになるが気にせず、力の限り剣を振るう。

(2,3発くらったけど全然痛くなかったな)

 今は実験中だからともかく、別に食らっても大丈夫なんて考えが染み付かないようにしないといけないな。敵の攻撃を甘く見て、致命傷を受けてから後悔しても遅いのだ。……今度イヌ型相手に回避の練習しとこう。



「さて、そろそろ、限界だな」

 それからどれぐらいの時間が経っただろうか。あれからバックステップやカウンター、サイドステップに連撃など、考え付く限りの実験をしてみた。その結果、

「こんなに、小さくなるとは……」

 最初はひざぐらいの高さまであったスライムだが、今では1/3程度の大きさになってしまっていた。ここまで来ると地面にいるときは攻撃しづらいのなんのって。



<剣気よ、集い、巡り、燃え上がれ>



 最後は火の魔法を試すことにする。……いやスライム相手だと他に選択肢がないだけだよ。剣をまとっていた魔力を火種に、とりあえず燃やしてみる。が、次はどうしよう……そうだ!魔法剣を試してみるってのはどうか!そうと決まればやってやろうじゃないか!



<剣に纏いし炎よ廻れ、そは敵を焼切る炎熱の剣、赤炎魔剣>


 ……燃える剣を予想していたんだが、真っ赤な刃の剣になってしまった。ヒートソード?ってやつっぽいな。

「ま、いいか」

 タイミングよく飛びかかってきたスライムを、今までと同じように切り裂く。が、結果はもちろん違ってきた。

「ほう!まさか一撃で蒸発させるとはな!」

 てっきり燃えると思っていただけに、何とも言えない終わり方になってしまったが、勝ちは勝ちだろう。



 剣を鞘にしまい、完全にくつろいでるティーナとミコトの所に戻る。さすがに疲れたし少し休んだら帰ることを提案しよう。


 アスカは剣体術(練度小)、<赤炎魔剣>を習得した。

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