22話
「こんな、感じで、いいのか?」
そういいながら素剣をラルツに見せる。……やはり剣なんて普段持たないから凄くびくついているんだが、これからのことを考えると絶対必要なことだからな。
「そうだね、最初のうちはこんなもんだと思うよ」
一応合格が出たので、素剣に流していた魔力を止めて<左腕強化>にまわす。これは説教中に……違った、寝る前にあーだこーだ考えた妄想の結果だ。
「まあ、物理的な衝撃を受けたわけじゃなかったから今回は簡単だったね」
おっと、こっちは剣の話だ。いや、あっちこっちに思考が飛ぶのは俺の悪い癖だな。先に剣の話をしておこうか。
「指導、感謝する。それにしても、ラルツが、剣の手入れの、方法を知っているとは、思わなかった」
そう、今俺は昨日受け取った剣の手入れをしていたんだ。方法としては『魔力を流す』のみ。なんでも『魔導具』は属性のあった魔力を流すと自己修復する機能があるらしい。
もちろんそれ以外の方法もあり、簡単にだが口頭で教えてもらった。今度道具をそろえてから実演してもらうことになってる。
「一応これでもドワーフの血が流れているからね。ばあちゃんに教わってるんだ」
「なん……ですと……!」
ドワーフってあれだよね?背が小っちゃくて、筋骨隆々で、ひげ生やした鍛冶士の一族みたいな?やつだよね?
「なんていうか……確かにあってるけどずいぶん極端なイメージだね?でもそんな純血なドワーフ、おれも見たことがないよ」
どうやら心の声が漏れていたようだ。まあ、質問し直す手間が省けたんだからいいんだけど……
それはともかくとして、正直異種族と会うのは俺の『異世界で楽しみにしていたことトップ5』に入ってたんだが……まさかこんなにも感動なく迎えていたとは……
「何というか、もっと、これぞ!、ってものになると、思ってたのに」
「なんだか悪いことしたみたいだね?でも純血種なんてほとんど残ってないよ?」
バ、バカ……な……!
「そこまでショックを受けなくても……元々人種では人族が圧倒的に多いんだから、よっぽど注意深く血を守ってない限りこうして種族の壁がなくなっていくのは当然だと思うんだけど」
そうして話を聞くとこの国の黎明期、つまりは『初代』が原因になるらしい。
「簡単に言えば、『初代』様のもとに数多の種族が集まり、共に戦い絆を深めているうちに種族を超えた愛が始まり……ってやつだよ。この手の話はそれこそ星の数ほどあるよ?」
なるほど、こうして聞くと種族の壁があいまいなのも納得がいく。要はこの世界の存在は皆同士なのだろう。……あれ?これで『種族間の不和』という火種が無くなったけど、そうなるとなおさら俺がこの世界に来た理由が分からなくなってくるんだが……やっぱり2代目神王が出てくるのか?
「でもこんなことも知らないなんてね……もう少し詳しく説明しておく?」
おっと、また思考が別の方向に……まあ、俺の中では最重要な疑問だからこればっかりは仕方がないな。
「頼む」
「うん、じゃあまずは基本となる純血種からだね?『人種』がおれたちみたいな存在の総称だね。そんな中で特に特徴のない一族を人族って呼んで、主に四足の獣の特徴お持つ一族を獣族と呼ぶ。例えば猫とかだね」
俺の知識でいう人間が人族で、獣人・ライカンスロープとか言われているのが獣族。
「そしてドワーフとかエルフみたいな一族をまとめて精霊族って呼ぶんだ。一応ここでいう精霊は、魔法学に出てくる精霊と別物だから注意してね?この三種族が『人種』に分類されるんだ」
魔法学っていうとあれか、世界との契約云々の奴の異説か?紛らわしいが一応わかったと思う。しかしドワーフとエルフをまとめられるのか……仲が悪いって設定の世界もそこそこあったと思ったんだが……ここはここってことか。
「他にも夜貴種とか竜種なんかがいるけどここら辺は『初代』様以降交流がほとんどないから、よくわかってないんだ」
「とりあえず、人型は、『人種』、の、『人族』、『獣族』、『精霊族』が基本である、と」
「そうだね。でも、今はそんな人たちはほとんどいないから」
……何度聞いてもがっくりくる言葉だ。
「そこで現在は、人種人族がほとんどで、それプラス最も濃い一族を名乗ることになるかな?おれだったら、人種人族の精霊族寄りってとこだね。一言でドワーフ寄りでも通じるけど」
「なるほど」
とりあえず、『いかにも』ってのには会えそうもないってことだけ覚えていればいっか。
「これで大まかな説明は終わりだね?何か質問はあるかい?」
…………特にない。ないんだが、あることに気づいてしまった。
「……純血って、具体的に、どれぐらい、希少なのか」
何に気づいたかって?あれだよ、俺が元々いた世界には異種族なんかいないってことにだよ。
「う~ん……人種では、もう20人を切ったぐらいじゃないかな?人族では、王配殿下が亡くなられたから女王陛下と王女殿下の2人だね」
そこまで強く求めていたわけではないけど、そうなったらいいな、程度の気持ちで純血同士の会う機会を増やしていたらこうなったらしい。
「わかった、このことで、聞きたいことは、もう無い」
「そう?じゃあこれで講義は終わりだね。剣のことも終わったし、ティーナが戻ってくるのを待つだけかな?」
ここで何一つ聞かずに引いてくれるラルツは、いい男だと思う。ちなみにティーナがいないのは、これから遺跡に行くにあたって申請書やら許可書やらが必要だから、その手続きをしているためだ。それが終われば今度こそ実戦が始まる。つい、強化された左腕に力が入る。
「そういえば、それの調子はどう?」
「ないより、まし、程度かな」
そうそう、ある方法を使えばティーナがいなくても魔法が使えるようになったんだよ。とはいえ火種が必須なのは変わらないけどな。
「すでに発動している魔法をきっかけにするなんてね、すごい発見だと思うよ?」
「有効なのは、俺だけ、だけどな」
そうなのだ。今でいうのなら<左腕強化>を触媒にして別の魔法を使うってことができることが判明したのだ。そうすると触媒にした魔法は消えてしまうが仕方がない。それに問題が解決したわけではない。
「最初の、きっかけは、やっぱり、ティーナ頼り、なのは、変わらない」
強化ならともかく、手元から飛ばしてしまう類だと再利用もできないしな。っと、噂をすれば影ってやつかな?ティーナが帰ってきたみたいだ。思ったより時間がかかったみたいだけど、時間は十分あるしのんびりダンジョンめぐりと行きましょうか。




