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17話


「よく逃げずにここまで来たな!」

「いや、授業だし、サボるつもりは、ない」

 アーノルド先生の提案により、授業にて行われることになったんだからいまさら逃げようがないだろうに……なぜそんなにテンションが高いんだナハートよ……。

「ぬぅ、せっかくの決闘なのだぞ?もっとこう『貴様相手になぜ逃げる必要がある!』ぐらいの返しをやっても罰は当たらないぞ!それをなんだ、その疲れきった顔は!」



 無茶を言わないでくれ、決闘を受けることになって昼食もそこそこに対抗手段を必死に考え続けたんだぞ?一応あの後図書室に行って2~3個の術式名だけでも調べてきたのだ(詠唱まで調べてないのは、覚えられる気がしなかったからだ)。

「まあ、ここにいる以上アスカのやる気を疑うわけじゃないでしょ?それよりルールを決めましょう。アーノルド先生お願いします」

 隣についてきていたティーナが時間の無駄と言わんばかりにぶった切ってくれた。ちなみにラルツは他の生徒とともにすでに観戦モードだ。



「はい、では説明しましょう。

 1つ、ブランシェード君対グランツ君の1対1とする。

 1つ、相手を死なせる可能性のある魔法の使用を禁止する。

 1つ、私ロイ・アーノルドが継続不能と判断した時点で終了とする。

 1つ、決闘の勝敗の判断は私ロイ・アーノルドが行う。

以上4点を守り、決闘を行ってください」



 この世界の基準が分からないので何とも言えないが……俺の剣、刃引きされてなかったんだけどいいのか?

「ああ、僕は問題ない」

「1つ、わたしがアスカの後ろにつくことを許可してくれる?万が一があったら困るんで。もちろんその万が一があったら強制終了でいいわ」

 俺が答えるよりもやっぱりティーナの方が早かった。ティーナがいないと魔法が使えないのでこれが通らなければ開始直後に降参だ。あと俺に防げないと判断したら守ってくれるんだろう。

「ぬぅ、まあいいだろう。だがぎりぎりまで手を出すな!興が削がれる!」

 ナハートはティーナの存在が不満そうだが、それでも許可を出した。



「ブランシェード君が許可したので、アーヴァンクライトさんの案を採用します。では中央の開始線へ移動してください」

 そう言ってアーノルド先生は演習場の中央へ歩を進めた。それにナハートが続き、最後が俺らだ。

「(で、勝算はありそう?)」

「(最低限、戦える、かも?程度には)」

「(まあ、昨日魔法を初めて使ったレベルなんだし、それだけ言えれば上等かな)」

 本来なら上等なんてものではないのだが、ティーナとしてはそもそも戦ったという事実さえあれば何とかなると思っているだけだし、アスカとしてはただ甘く見てるだけといえなくもない。



「両名とも、準備はよろしいですか」

 中央開始線にたどり着いた俺らを確認し、改めて声をかける。おそらく俺に対しての物だろう、最後の機会だ。まあ、いまさら逃げる気はないが気を使ってくれたことには感謝しておこう。

「いつでもやれるぞ!」

「問題、ありません」

「そうですか、では観客もそろったようですし始めましょう」



 周りを見ると、たまたま時間が空いていたのか数人の先生方(シンシアさん、もとい学院長も含む)が演習場の端に集まっていた。

(……あれ?)

 さらに離れた所に、今朝見た黒猫もいた。そういえば2人が神出鬼没って言ってた気がするが、こんなとこにも現れるのか。いや今は集中しないと、とナハートに視線を戻す。



「双方構え!」

 アーノルド先生の合図でナハートは懐から20センチ程度の木の杖を出し、アスカは剣を抜くだけ抜いて構えることなく立つ。ティーナは1度左腕に着けた腕輪に触れてから、アスカに手を当て微量の魔力を込める。

「始め!」



<魔力よ集い、我がかいなと成せ、腕部外装>

<雷よ集え、集え、集え、三度集いて魔杖と成れ、雷鳴魔杖>



 ティーナの魔力を火種として、腕部強化を行う俺に対して、ナハートは雷を杖に集めていた。見た目は完全に剣だ。



<魔力よ集い、我が脚と成せ、脚部外装>

<魔杖に集いし雷よ、巡り、拡がり、槍と成せ、雷鳴杖槍>



 さらに脚部強化を行うが、それとほぼ同時に雷杖をさらに強化され雷槍とされる。おいおい、雷って遠距離型じゃなかったのかよ!思いっきり近接武器じゃないか!!

「お気に召したかな?半分以上趣味の領域だが、威力はそれなりのものを持っているし、何よりこれで対等だろ?」

 まともに訓練を受けていないだろうアスカに対して、お互い全力で戦うには自分が不慣れな領域フィールドに、つまり『鋼』の得意な接近戦に持ち込めばいいと本気で考えたわけだ。



(無茶苦茶だ!上から目線で試してくれればよかったのに、お互い全力で戦おうだなんて死ぬぞ!?俺が!!)

 あくまで相手が自分を試すもの、と思って考えていた戦略が一瞬で吹き飛ぶ。そもそも、人間相手に剣をふるうなんて、今のアスカにはいささか荷が重い。

「では、行くぞ!」



<風よ、わが背を押せ、風駆疾舞>



「くそ!!」

 おそらくラルツが使った風の補助魔法の戦闘版だろう。詠唱が早く『切り札』にしようと思っていたカードを切る時間がない!仕方がない!



『金剋木!』



 アスカが、『切り札』の補助・・に使おうと思っていた日本語・・・を魔法として唱え、駆けるナハートを迎え撃つ。



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