15話
「アスカ・グランツ!君に決闘を申し込む!」
午前の講義が終わり、ティーナに剣のことでも聞きながらお昼ご飯でも食べようと思っていたらいきなりこの宣言だ。俺が何をしたというんだ?それともあれか?イヤミ貴族による嫌がらせというやつか?
「おっと、そういえばまだ名乗ってなかったな?僕の名前はナハート。ナハート・ブランシェードだ」
「な、なに言ってるのよ!いきなり決闘だなんて!アスカが何したっていうの!」
おお、俺が返すよりティーナの方が早かったか。……俺の反応が鈍いだけか?
「僕に対しては何もしていない。しかし、場合によってはこの学院を否定する行為だ」
「申し訳、ない。見当が、付かない。けど、悪いことを、やってしまった、と、言うのなら、謝罪、する」
とりあえず謝ってしまったのは事を大きくしたくないからで決闘が怖かったからではない。……嘘です、決闘なんて間違ってもしたくありません。
「む、謝罪するには早いぞアスカ・グランツ!この学院を否定といってもまだ確定していないし、何よりこの決闘は疑いを晴らすためのものだ!」
クラスの全員と退出しそこなった先生が興味深そうに聞いている。これでもう目立ちたくないとかは無理かな?
「いったい何の……」
「その疑いというのは『裏口入学』だ!君は『縁があって中途入学することになった』と言っていたが、それが実力を認められたわけでないということならこれは大きな問題である!」
「なる、ほど」
確かに『国立』の学院である以上、不正があったというのなら大問題だろう。……試験を受けたわけでもなくここにいる俺って、かなりまずいんじゃないかな?
「あ~一応公然にできない理由があるんだけど……」
ティーナも少し気まずそうにフォローしてくれるが、試験も受けず入学したのは事実である。……というか、自分で言ったことながら覚えていないというかなり無責任な状態に心が痛む。
「わかっている!」
……はい?
「この学院の先生方が、何の理由もなく中途入学を認めるなんてことは最初から分かっているのだ!だが、だからと言って誰もが分かっているわけではないだろう。それが故の決闘なのだ!」
「つまりは、アスカ君がナハート様と戦ってある程度実力を見せれば学園に入学する資格あり、ってことを周りに示せる。理由については話さなくてもいいことになるかな?」
ラルツがナハートの発言をまとめる。確かにここだけ見ればメリットばかりだが……俺に周りに示せるほどの実力があればの話だ。
「(でもこれで断ったら『自分は無能です』って言ってるようなものよ?)」
そうなのだ。理由は言えず、さらに実力もないでは完全に不正扱いになってしまうだろう。だからと言って戦ったとしても、実力なんて示せないわけだが……
「(ひょっとして、詰んだ?)」
「(……戦闘以外で、何とかできそうなことある?)」
基本的な知識に欠けた状態で、こんなことを聞かれたって答えられるわけがない。
「まあ、とりあえず、決闘は、受けます」
受けない、という選択肢が取れない以上こうするしかない。手が出ないにしてもまだ逃げるよりまし程度の選択だ。
「うむ!君の勇気に敬意を示す!」
「では場所と時間だが、午後の授業が実技であるわけだしその時にやってはどうでしょう?教師として決闘に立ち会わないわけにはいきませんので」
結局最後まで聞いていたアーノルド先生が仕切ることになった。まあ妥当だろうが、日時については余裕を持たせてほしかった!
「わかった!ではまた、演習場で!それとラルツ・ルートソギー、僕にも『様』はいらないぞ!」
そういってナハートはさっさと行ってしまったが、生活レベルの魔法一つしか使えない俺にどうしろと?
「簡単に決闘なんて受けちゃって……どうするつもりなの?」
「どうも、こうも……玉砕?」
ティーナだって断ることはできないってわかっている以上、そこまで非難する響きはなかったがやっぱり呆れているようだ。
「えっと、ナハート君はこの学年でティーナに次ぐ実力者だね。学生の中でも、十指に入るかもしれないね。ブランシェード家は『雷の王』の直系で、彼の得意魔法も『雷』練度はB-、魔力量はBって聞いてるよ?」
律儀に呼び名を改めたラルツは、俺にとどめの一撃を加えた。




