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都会の駅
2007年
7月2日〜峠駅前〜
「ねぇ、本当にやるの?」
夜11時になっても人がたくさんいる峠駅で、か弱い男の子の声が横にいる不安そうな顔をしている男に聞いた。
「あ、当たり前だろ。ここで逃げたら去年と同じだ」
その言葉に男の子は静かに頷き、その言葉を言った男は覚悟を決めたような顔になった。
「…うん。そうだね。僕たちは変わったんだよね」
「ああ。変わったんだ…よし、準備するぞ」それを合図に2人は背中に抱えていたギターを取り出して弾く準備を整えた。
「よし、いつものをやろう」
そう男が言うと2人はグーの拳を合わせ
「弱気な僕、広志」
「強気な俺、大輔」
「………………」
2人の間に沈黙が流れた。それは短い間。あと一人、今みたいな言葉が言えるくらいの間。
「よし!」
「よし!」
2人は拳を離し、自分のギターの弦に触り深呼吸をした。そして、2人のギターが、人の声でうるさい駅前で静かに音を奏で始めた。