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魔法の訓練  --<魔王>--






 魔法の訓練をするということで訓練場に来た。

 訓練場には普段、兵士たちが練習するの場所とは別の魔王専用の訓練場だ。


「魔法の訓練を開始する。まずは魔力を意識することから始める」

「はい、りょーかい」


 グレイは若干、嬉しそうに返事した。たぶん、魔法を使うことを楽しみにしているのだろう。

 とりあえず魔法を使う第一段階である魔力の意識から始めることとする。


「では、目を閉じて体内に循環する魔力を意識しろ。イメージ的には血液が身体を巡るような感じだ」


 グレイは目を閉じて集中を始めた。

 グレイの周りの空気がはりつめる。


「ほぉ」


 思ったよりも高い集中力に感心をした。この分だと早く魔力を意識することが可能かもしれない。

 といっても訓練の際に魔力による補正を行っていたので早く出来るだろうとは踏んでいる。無意識でやったことを意識的にするだけなのだから通常よりは楽に出来るはずだ。


「……うん、コレか?」

「!? もう意識出来たのか?」

「あぁ、多分だが」


 開始して直ぐに魔力の意識が出来るということは中々ない。無意識に使用していたことを意識するようになっただけとはいえ、これだけ早く出来れば優秀といっても過言ではない。いや、かなり優秀と言える。

 とりあえず次のステップへと進めることとする。


「ではこのように手を前に出して、魔力を手に集めるようにしてくれ」


 そう言って目の前で実践させる。


「こうか?」


 グレイは特に苦にした感じもなく、真似してみせた。

 確かに虚言ではなく魔力が手に集まっているのが解る。


「次はこの玉を持って魔力を込めてみてくれ」

「おう」


 魔玉を渡すと魔玉が発光し始めた。

 魔玉は込められた魔力に応じて発光をする。一応、魔力がキチンと込められていることを確認するために渡した。そして、やはり魔力をキチンと集めることが出来ているようだ。

 普通のセンスならば、ここまでに1週間程度はかかる。そのことを考えるとグレイはかなり優秀だ。と言ってもグレイが調子に乗るので口に出して褒めはしない。


「今行っているソレが魔力を集束させるという技術だ。魔法を扱う上で基本となる技術だからしっかりと身体で覚えろ」

「おう!」

「では反復練習で今から何度も行うぞ。十回連続で成功したら、次のステップへと進む」











 あのあと、危なげもなく魔力の集束を成功させた。コレもまた感覚を掴めたからと言って、直ぐには出来ないことが多いのだがな。

 勿論、そのことはグレイを調子に乗らせないようにするため、教えていない。


「魔力の集束は出来るようだから、次のステップにも進めよう」

「おう!」


 ここまで順調にいっていたのでステップを次へと進めることとした。

 あとグレイはかなり嬉しそうに返事をする。やっと魔法を使えるという感じだ。よっぽど魔法に焦がれていたのだろう。


「では光属性の魔法の一つを使ってもらう。あと、俺が普段使用しているのは無詠唱魔法になるがグレイは初めて魔法を使うのだから、詠唱魔法を用いる」

「解ったが詠唱無しと詠唱有りでは何が異なるんだ?」






『詠唱』

・詠唱魔法

 魔法に関する制御を詠唱により、補正することにより魔法の発動・制御が容易となる。

 威力についても詠唱による補正が掛かるため、無詠唱と比べて威力が高い。

 詠唱魔法は一つの魔法(大魔法)を一人だけではなく複数人で発動させることが出来る。

 大戦などで用いられる大魔法についても大人数による詠唱魔法を用いることが多い。

 ※高速詠唱などは詠唱魔法も同等の威力を持つ。


・無詠唱魔法

 魔法に関する制御を自身の魔力のみで行うため、魔法の熟練度が低いと制御はおろか発動すら出来ない。

 威力についても自身の魔力のみが反映される。

 詠唱がないことにより前もって発動する魔法の種類などが事前に相手に察知されないことと発動に時間を要しないことより、接近戦においても使用出来る。






「と言ったところだが、理解出来たか?」

「そうか、発動が簡単ということでまずは詠唱魔法で魔法を発動させるのか」

「そうだ。だから、魔法名と詠唱を教える。魔法名は『光の銃弾(ライト・ブレット)』だ。単体で放つ詠唱魔法では魔法をイメージしやすい意味を持つ言葉を入れるだけでいい。例えば、だ」


 俺は手を模擬訓練人形に対して向けた。


『光よ、銃弾と化し敵を穿て光の銃弾(ライト・ブレット)


 模擬訓練人形に向けていた手から『光の銃弾(ライト・ブレット)』が発射され、模擬訓練人形に命中し、穴があく。


「あくまでも自分がしっくりとくる詠唱を行うことがポイントだ」

「おう、解った!」


 実践して見せた俺のようにグレイは模擬訓練人形に手を向けた。

 そして、深呼吸をし、魔力を手に集中させた。


『光よ、銃弾と化し敵を穿て光の銃弾(ライト・ブレット)


 グレイの手から『光の銃弾(ライト・ブレット)』が発射され、模擬訓練人形に命中し、穴があく。

 どうやら、一回で成功させたようだ。一回で成功させるのはかなり、珍しいというか凄いことだ。

 一回も泳いだことのない人間が海でいきなり泳ぎ始めるようなものだ。

 これにもまた、驚かされる。


「やったッ! マジで出たッ!」


 どうやら、魔力封印されていなければ、勇者であり天才と呼んでも差し支えない程の人物だったのかもしれない。

 と言っても今はまだヒヨッコには変わりないがな。

 

「って聞いてるのかよッ!」


 ……いや、ヒヨッコというより子供そのものだな。うるさい。

 

「あぁ聞いている。それよりも何度か魔法が使ってみて熟練度をあげておけ」

「おう、解った!」


 そう言ってグレイは再び、魔法を使って訓練を再開した。

 

 

 




「そう言えば、ヴェルトって何で光属性の魔法が使えるんだ?」


 グレイが何度目かの魔法を放った後に聞いてきた。


「確か魔族は闇属性の神の眷族だから、さすがに光属性の魔法は使えないようになっていなかったっけ?」


 そして追撃をするように属性の話を持ち出す。

 グレイは俺を見ている。

 どうやら、答えを待っているようだ。


「……それよりも俺は仕事があるから失礼する。昨日のように晩御飯を運ばせるから訓練に区切りをつけて自室に戻っていろ」


 だが、俺は質問に対して答えずに、そう言って訓練場を後にした。












 誰にだって秘密にしたいことはあるだろう?


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