魔力測定 --<魔王>--
グレイの魔力測定を始めるための準備を行う。
魔力測定を行う場所はグレイの自室とした。魔力測定には魔力測定用の水晶があれば行えるからだ。
ちなみにだが、魔力測定で解るのは魔力の量、質、属性となる。
魔力の強弱については水晶を用いて測定を行う者に暗闇内にイメージされる光の強弱や大きさや形により判別する。
少し曖昧な測り方にはなるが大まかな魔力が解る。
また属性については光の種類によって解る。
『光の強弱、量』
魔力量に比例した大きさとなり、魔力量のクラスに適した質によって光の強弱が決まる。
下級 :0~30cm程度 ⇒ 人間の兵士クラス
中級 :30~100cm程度 ⇒ 下クラス魔族、人間の隊長クラス
上級 :1~10m程度 ⇒ 中クラス魔族、人間の大隊長クラス
最上級:10~100m程度 ⇒ 上クラス魔族、人間の将軍クラス
伝説級:100m~程度 ⇒ 勇者、魔王、魔将軍、英雄クラス
究極級:測定不能 ⇒ 神クラス
『形』
形には本人が宿す魔力の本質を示す。
クラス別による形はない。
『光の種類』
属色は赤、青、黄、緑、白、黒の色を基本とする。
属種は純正属性と単属性と複属性というものがあり、色の純度や色そのものにより決まる。
『属色』
赤 ⇒ 火属性
青 ⇒ 水属性
黄 ⇒ 天属性
茶 ⇒ 地属性
白 ⇒ 光属性
黒 ⇒ 闇属性
『属種』
・純正属性(純白、漆黒、真紅など)
属性に対する神の化身として生まれてきたとされる者のみが持つ属性。勇者や魔王のみといった特定の者にしか持つことを許されない属性となる。
・単属性(通常の色)
属性に対する神の加護を受けて生まれてきた者の属性。一般的に一番多いとされる属性。
・複属性(複合色)
主とする神の加護と副とする神の加護の複数の属性神から加護を受けて生まれてきた者の属性。二つの加護を受けて生まれる者は普属性と変わらないぐらいに多い。
「マジで測るのか?」
珍しくグレイが苦々しい顔をして聞いてきた。
「あぁ、本当に測る」
「……ふぅ、そうか。解った」
いつもの能天気は何処に行ったのだと訊ねたくなるほど、おかしいのだ。
だが、これはどうしてもしておく必要がある。今後に関わることなので仕方ない。
「それでは開始する」
「あいよ」
無精無精といった様子で返事してきた。
一応、了承ということもあり、このまま続ける。といっても反対されたとしても俺は関係なく力付くで続けさせるのだがな。
「まずはこの水晶の上に手を置いてくれ」
「……おう」
グレイは呼吸を整えてから水晶に手を置いた。顔には汗が浮かんでいる。
いつもの調子は本当にどこにいったのかと思えるほどに深刻な表情をしている。
だが、俺は気にせずに止めずに魔力測定を行うこととする。相手していても仕方ないためだ。
「それでは魔力測定を行う」
瞼を閉じて魔力測定を開始する。
『汝の魂が宿す器。
汝の魂が宿す姿。
汝の魂が宿す色。
汝の魂の輝きを示せ』
『一振りの純白の剣。
一振りの漆黒の剣。
弱くもゆらめき。
強くもゆらめく。
小さくもあり、
大きくもある。
二振りの--』
突如として光景が変わり、暗闇が広がった。
というよりも瞼を閉じていたので暗いのは当たり前だ。
測定が終わり、感覚が元に戻ったということだ。
それから測定は予想通り、いや、予想以上の結果をもたらした。
やはり、グレイは今まで魔力封印を行われていたが、何らかの理由により魔力封印が最近になって解けたようだ。訓練時に補正されていた力にも納得がいく。グレイの身体能力から察するに魔力補正がなければ、あのスピードは出せないはずだからな。
しかも、何故かは解らないが、光と闇の属性が純正属性として現れていた。純正属性が二つ現れるということは聞いたことがなかったので、流石に驚いた。
「……結果はどうだったんだ?」
俺が色々、考えて固まっている間にグレイは期待はしていないが、一応という形で聞いてきた。
「あぁ、結果だが――」
「どうせダメだったんだろう? あんなに無言で固まっていたんならよ」
こちらが結果を伝える前に割り込んできた。それに、どうやら勘違いをしているようだな。
とりあえず結果を報告してやることとする。
「聞け。グレイは光と闇の純正属性を宿していたのだ。ただ魔力の量、質はまだ不安定な状態で強いとも弱いともとれる」
「え?? な、なんて?」
「もう一度言うが、グレイは光と闇の純正属性を宿していのだ。ただ魔力はまだ不安定な状態で強いとも弱いともとれるだ。……どうだ、解ったか?」
「……え?」
グレイは驚いたまま固まる。
グレイにとっては予想外な結果だったのだろう。
というよりも誰であろうが驚くような結果か。純正属性を二つも宿すなんてな。
「恐らく、つい最近までは魔力封印を施されていたようだ。だが、何かの拍子にそれが解けたのだろう。だから、魔力は最近になって現れたと考えられる。それと、魔力があるということだし、昼からは魔法の訓練を行う……ぞ」
「…………うッ……え、ぐッ! ひぐッ!」
後で魔法の訓練を行うことを伝えていたら、いきなりグレイが嗚咽しだした。
「……」
俺は何も追及せずに部屋を出た。
誰だって一人になりたいときはあるだろう?