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訓練  --<魔王>--

「ふぁぁぁ……」


 寝ボケ眼な状態でグレイはアクビをする。

 今から訓練します!

 という気迫は一切見えない。これが自信からくる余裕なら『何処からその自信が出てくるのだ』と頭を抱えたくなる。

 と思いつつ、その事は昨日に充分に知ったことなので今更驚くことでもない。


「ずいぶんと余裕そうだな。ただその余裕が続けばいいな」

「まぁたぶん続くんじゃね?」

「まったく……とりあえず、訓練を始めるぞ」

「ほい、了解。……でまず何するの?」

「まず基礎能力の強化から始める」

「基礎能力の強化?」


 基礎能力がどうしたの? 問題でもあるの?

 といいたげな表情で返答してきた。まったくもって自分のことが解っていないようだ。


「あぁ、グレイの基礎能力が著しく低いことから、まず基礎能力から鍛えることとする」

「ふーん、まぁ解ったよ」

「では本日の訓練は走り込みを行う」

「思ったより楽そうだな」


 確かに『走るだけ』となると脅しをかけた程、キツい訳ではない。だが、まだあるのだ。キツい訳が。


「まぁ待て。説明はまだ続きがあるから聞け」


 そう言って前に手を出し魔力を集束させる。

 そして『永遠なる業火』エンドレス・ヘルフレイムを出す。


「この俺が放つ『永遠なる業火』エンドレス・ヘルフレイムの特性は覚えているか?」

「……対象者を燃やし続ける?」

「あぁ、それもあるがコイツには自動追尾という特性も備えていただろう?」

「……あぁ」

「それで今から放つこの魔法の自動追尾の矛先はグレイだ。それでグレイはコイツに捕まらないように走り込む訳だ。どうだ、簡単だろう?」

「なッ!?」


 グレイは驚愕の表情を浮かべる。たぶん、焼かれた時のことを思いだしてしまったせいだろう。あと、今から焼かれる時のことも。

 とりあえず、先程までの余裕は何処かに消し飛んだみたいだ。


「じゃぁ始めるぞ」

「ま、待てッ……」

「問答無用! 」


 そう言ってグレイに向かって魔法を放った。


「ってギャァァぁぁ!」


 グレイは勢いよく走り込みを始めた。叫び声を上げながら。

 ちなみに魔法の初速は遅く徐々に速度が上がっていくという特殊な仕様とした為、一般人なら30分程度は逃げ続けられる。

 よって、少なく見積もっても30分程度は逃げ続けられるだろう。そのあとは容赦なくヤられるだろうが。

 それから魔法が対象者に命中したり、消し飛んだ場合は使用者である自分には離れていても解る。

 というわけで時間も空いたことにより、昨日残ってしまった執務を行うために執務室へと戻ろうとする。戻ろうとしたところで一言。


「期待してるぞ。頑張れよ」

「ギャァァぁぁぁ!!」


 どうやら聞こえないほど余裕がないようだが、気にせず執務室へと直行した。
















「ふぅ」


 執務が一段落着いたことにより、一息漏らす。

 まさかここまで執務が出来るとは思わなかった。これで今晩は遅くまで仕事をしなくてもいいだろう。

 ……ん? そういえば、何故ここまで執務が出来ると思わなかったのだ?

 何故だったか……。


「……そういえばアイツはどうなっているのだ?」


 思い出した。俺はグレイの訓練中に暇が出来たから仕事をしていたのだ。ただ、それは30分程度を予想していたのに3時間は経過している。

 魔法が消滅しているのを見逃したのかと思い、魔力探知すると確かに魔法は存在した。

 ならば、何故なんだ?

 疑問を浮かべながら執務室を出てグレイの所へと足を進める。

 あの魔法には徐々にスピードが上がる特殊な仕様にしていたため、これだけ時間が経った今ではかなりのスピードに達しているはずだ。それこそ、走り続けて逃げるのにはけっこうな実力者ではないといけないぐらいに。

 何か特殊な手を用いて逃げたのだろうか? それとも……。

 考えている間に辿り着いた。そして、そこではグレイは走っておらず突っ立っていた。

 そして、素早く動きブレた。

 そう、グレイは追尾してくる永遠なる業火エンドレス・ヘルフレイムを瞬間的に速く動き回避しているのだ。

 確かにスピードの上がった魔法を走り回って避け続けるよりも効率の良い避け方だ。

 だが、そう簡単に一朝一夕で出来るようなことではない。ましてや自分が知っているグレイなら尚更だ。

 グレイはかなり集中しているようで俺が来たことにも気付いていない。本当に精度の高い集中力だ。

 そうこうしている間にもグレイは何度も魔法を避け続けている。

 そして、幾度目か回避したところで魔法は消失する。どうやら、込めた魔力が切れたようだ。

 魔法が消失したところでグレイはドカッと座り込む。息も切れ切れになっている。体力的にも精神的にもかなり消耗した様子だ。


「思っていたよりもかなり良かったぞ」

「ハァ、ハァ……あぁ、俺も、そ、う思うよ……ハァ、ハァ」


 素直に称賛したところ、素直な返答があったことに驚く。グレイにも色々と自覚が目覚め始めたのだろう。うれしい限りだ。

 そうこう頭の中で考えて返答出来ないでいるうちにグレイは息を整えて再び口を開く。


「まぁ良く考えれば俺だから当然か」


 いや、前言撤回だ。グレイはグレイ(バカ)だ。

 見直そうとした俺が間違っていた。


「……はぁ」

「うん? なんだ溜め息なんか吐いて。もしや、俺にすぐ実力を抜かれることを気にしているのか? まぁ、それは……なんだ……その……し、仕方ないことなんだから気にやむなよ」


 嘆息の意味をはき違えたグレイは励ましをくれた。突っ込むところが多すぎだ。

 だが、今は良しとしよう。グレイは本気で頑張ったのだから。


「ふん、まぁ良いだろう。それよりも次の訓練に移るぞ」

「えぇー今日はもう終わりじゃないのかよ」

「そんな訳はないだろう」

「へいへい、解りましたよー」

「まぁ、次の訓練はとりあえず測定をメインとするつもりだから、大丈夫だろう」

「ふーん、で何の測定?」


 今からやる測定は本来、小さな頃もしくは修行を積んだ者がやることだ。だから、普通は今することではない。だが、昨日と先程のグレイを見て気になったのだ。いや、一つの予測が出来た。だから測定を行う。


「それは魔力と属性の測定だ」


 そして、恐らく予想はあたっているはずだ。それも測定をすればハッキリするだろう。







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