勇者と少年と戦いと ――<勇者>――
ここのところなんとか連続で投稿できています。ちなみに今回は勇者(本編の主人公)のお話です。
「最近はちょっと相手が弱くて楽勝すぎるな」
俺こと勇者は最近の敵であるモンスターの強さに不満を抱いている。
F~Dランクの敵ばかりを相手にしているのだ。だが、自分にとって、その程度の敵は相手にもならなない。
正直に言って、物足りなさを感じている。
クリュスと比べて圧倒的に弱いのだから当然といってもいいだろう。といってもクリュスと再戦すれば、勝てる可能性は低そうだが。
「そうか。グレイも多少は強くなったのだな。ならば、退治依頼が来ているコイツを倒してきてもらう。もちろん、俺は忙しいからお前に付き合うことは出来ないぞ」
そう言って、ヴェルトは不満気味である俺に一枚の羊皮紙を渡す。
ふんふん、なんて書いてあるかと言うと――。
『ワイバーンが村の近くに生息するようになってしまい、困っています。今はまだ被害が出ていませんが、いずれ被害が出てしまうかと思いますので退治を宜しくお願い致します』
――うん、ワイバーンね。
ってオイッ! いきなり相手がランクアップだな。
確かワイバーンってドラゴンの亜種の一種で翼竜と呼ばれ、C+ランクだったはず。
しかも一人で行くのかよ!
「これはいきなしキツくない?」
「大丈夫だろう。クリュスよりは弱い。クリュスはB++ランクぐらいの強さだったからな」
うん、知ってるよ。クリュスのほうが強いことは。
ヴェルトくん、でもだよ。あの時はクリュスが俺を格下の相手として油断し、最初から全力で挑まずに隙をみせたから勝てただけだよね。
それ知ってるよね。舐めてんのかこの野郎!!
「とりあえず、行って来い。地図は用意してあるから、行け。出来る限り早く行けよ」
「クッソー。問答無用かよ」
「あぁ、問答無用だ。助けを待っている人がいるのだから、早く行け」
「ったく仕方ないな。そう言われると行くしかねーな」
俺はそうヴェルトとやり取りを行って目的地を目指す。
「えーと、もうそろそろ目的地かな?」
ワイバーン退治の依頼があった村へと向かっている途中だ。道中にスライムやゴブリンといった雑魚クラスのモンスターが出てきたが問題なく討伐しておいた。
うん、俺は強くなったね。
ほら、今も目の前から、ゴブリンが現れたけど、相棒のタナトスで相手を葬り去る。
いやー、俺は最強じゃね? ヴェルトを倒すのすぐそこかもな。
なんて考えながら歩いていると、村が遠くに見えてきた。地理的に目的地は間違いなくここだろう。
「着いたな。では村長さんのところへと行くか」
俺は村で一番大きな家を目指して歩く。やっぱり村長って言ったら威厳も必要だし。一番、大きな家に住むのが普通だろう。
テクテクと歩く俺に一人の少年が立ちはだかり、俺を睨みつける。
俺、なんか恨まれることしたかな? いや、待て。俺はまだこの村に来たばかりなのだぞ。なのに何故? うーん、解らない。というよりか睨んでいるって思うのは勘違いだな。勘違い。
うん、解らないから、とりあえず無視だ。むーし。
俺は少年を横から避けて、村長の家らしき場所を目指そうとする。
すると、少年も横へと身体を動かし、また俺の前へと立ちはだかる。
「……」
「……」
お互い無言。
俺も特に少年に話すことないしな。そりゃ無言になる。
というか少年、お前は無言になるなよ。
と思いながらも身体をまた横に動かして通り抜けようとする。
すると、少年もまた横へ動き、俺の行く道を塞ぐ。
俺はまた横へ。少年もまた横へ。俺はまたまた横へ。少年もまたまた横へ。俺はまたまたまた横――。
「ってなんだよ。俺の行く道塞いで何だ?」
「お前がワイバーンを退治しにきたヤツか?」
「何で質問を質問で返してんだ? バカか?」
「バカじゃない。それよりも答えろ。お前がワイバーンを退治しにいくために来た者なんだろ?」
「あぁ、そうだよ」
「そうか……なら!」
いきなり少年は剣を抜いて俺に向かって走り出す。
うーん、この状況はアレだよね?
と思ったのもつかの間。少年は剣を俺に向けて振り下ろす。やっぱりね。
俺は、身体を横へと捻って剣を避ける。
振り下ろされた剣は地面へと勢い良く刺さる。いや、これあってたら、ヤバかったね。
「っていきなり何をするんだよッ!!」
「お前を倒せば、俺が代わりにワイバーン退治に行けるから、襲いかかったッ!」
「いやいや、そのために俺を殺す気?」
「それはもちろん。何かおかしい?」
「……」
うん、ツッコミ所がありすぎだろ。まず何で助けるために来た俺が殺されるんだよ。
それよりもワイバーン退治したいなら、勝手にしろよ。
っていうか国の使いを殺したら偉いことになるぞ、少年。そこんとこ解ってるのか?
あぁ!! 何から突っ込めばいいか解らないから黙ってしまったじゃないか!
「マルッ! お主は何をやっているのだッ!! その方は国より要請で来ていただいた方ではないか!! 勝手な真似はするな!!」
「チッ! クソ親父が」
いきなり、村長の家らしきところから出てきた中年のおっさんに少年ことマルが叱責される。
やいやい! 良い気味だぜッ! ふはははははッ!
っと脱線しても意味がない。それよりも話をとっとと進めよう。
「えーと、俺はグレイ。アンタがこの村の村長さんで依頼主ってことでいい?」
「その通りの認識で間違いないです」
「じゃぁ依頼の内容を詳しく知りたいんだけどいい?」
「良いですよ。詳しいことは中で話しますからとりあえず家へどうぞ」
「はいよ。お邪魔しますね」
そうマルを空気扱いして村長と詳しく話を聞くために家へと招かれる。
空気のマルは俺の後ろへとついて、「ケッ!」と言いながら家へと入った。
コイツ、不法侵入じゃないのか?
そう言った不安な視線を送っていると。
「その子は私の愚息になります」
村長さんは恥ずべくように言った。
いやいや、解りますよッ! 確かに愚息ですね。うん、うん。
次は村長さんからも少し厳しい視線を感じる。
いや、待て。俺ちょっと同意しただけだよ。それだけで何故、そんな顔で見られる? お前さては騙しやがったな!!
とかどうでも良い思考は置いといて、話を進めよう。
「それよりも、ワイバーンの話をしてくれない?」
「はい、解りました」
村長さんから、ワイバーンについての話をしてもらう。
ワイバーンは大きな翼と長くしなやかな尻尾を持つドラゴンの亜種。前脚はなく、腕部が翼になっている。尻尾は硬く鋭い鏃のようになっており、攻撃に気をつけなくてはならない。
そんなワイバーンが村のはずれにある山で見かけるようになったらしい。
今は、村でも屈強な男たちが見張りをやっているようで、この村に襲撃がありそうな場合は、足止めと連絡をして、被害を最小限に抑えようとしているらしい。
ただ、屈強な男といってもこの村では戦闘能力が高い者は少なく、ワイバーン相手だと分が悪いそうだ。
だから、村を襲いに来る前に、山で襲撃を行って、ワイバーンを倒して欲しいというのが依頼内容だ。
「なるほど、解った。確かにワイバーンが来たら、被害になるし倒してくるよ。場所はどこ?」
「ありがとうございます。ではワイバーンがいるところまで案内致します」
話を聞いた俺はワイバーンを倒すために、ワイバーンが潜む場所へと連れて行ってくれるように促す。
そして、それに応えるように村長が言う。
「ちょっと、待て! 俺もワイバーンを倒すのに連れていけ!!」
スルーしていたはずのマルが口を開いた。
ぜったい、その言葉を言うと思ったけどね。そうじゃないとあんな突っかかり方しないしな。
「マルッ! お前では危ないだろう! 何てことを言うのだ!」
「俺では危ない? そんなことはないッ!! そこにいるバカ男よりも安全だ!! 俺はそのバカ男よりも強い!! 村で一番強いのも俺だ!」
「こらッ! 何て失礼なことを言うのだ。だいたい、お主が強いと言っても――」
「あぁ、村長さん。村長さん。説教始められたら困るんだけど。それから、たぶんその子は止めても絶対についてくるよ。だったら、道案内させてもらうようにして、余り離れた位置に行かないようにしたいんだけど」
マルとやらは、この村長が言ったことを絶対に守らないだろうな。何て予測が出来たので、どうせならフォローしやすい近い場所にいるようにしたほうが賢明だろう。
ならば、道案内もしてもらったほうが良いだろう。
そんなこんなで提案をしたのだ。
「まぁ、グレイさんがそこまで言うのであれば従わせてもらいます」
「ふん、そんなバカ男の言うことなんて聞かなくてもいいが、この話は聞いてやってもいいかな」
このガキは!!
……っと気持ちを隠しながら、俺は青筋を浮かべつつ笑顔を作ることに努める。
いや、そうしないとヤバいよ。すぐにこのガキを殺してしまいそうだもん。
「とりあえず、案内してくれよ」
「……仕方ない。ついてこい」
そう言ってマルは先に家を出て行った。俺もその後に続こうとする。
すると、村長さんが俺が出ていく前に口を開いた。
「息子の事、宜しくお願いします」
「言われなくても解ってますよ。では、待っていて下さい」
村長さんは俺の返答に安心したように「ハイ」と言って、頭を下げた。
まったく、こんな良い親なんだから、もう少し素直に育ったら良かったのにな。
「こっちだ」
「おう」
マルが前を歩き、案内してくれている。
そして、今はワイバーンが生息しているという山を歩いている。
それにしてもマルは本当に生意気だ。この道中も俺の事を「バカ男」としか呼ばない。さらに「俺はバカ男なんかと違って強い」とか何とか挑発もしてくる。
といっても一々相手するのも面倒なので相手はしない。
「もうすぐ着くぞ」
「おう」
そうこうしている内にワイバーンを見張る場所に近づいたようだ。
ギャァァァァ!!
突然、天を衝くような声が響き渡る。
嫌な予感がした。それはマルも一緒なのか、いきなり走り出す。
俺もマルを追って走る。
逸る気持ちを抑えながら、走る。すると、元々近くまできていたということもあり、すぐに目的地へと到着した。
大きな翼と長くしなやかな尻尾を持つ姿のモンスター、ワイバーン。
上空にてワイバーンはその大きな翼を広げ堂々とした風格で唸り声を上げている。
その姿は狂暴で、ギロリと睨む瞳だけで人間を竦みあげる程だ。
そして、地面には青年が3人ほど倒れている。
青年たちが気になり、俺はいそいで3人に駆けよる。
青年たちは息をしており、どうやら腕や足をやられて倒れているだけのようだ。
「あ、あなたは?」
倒れていた青年の一人が俺を見て尋ねてきた。
「俺はワイバーン退治を頼まれた男だ」
返答しながら、俺は青年たちを担いでワイバーンから離れた位置へ運び出そうとする。
ワイバーンが上空にいる間に戦闘区域から離れた位置には運びださないと。
「おい、バカ男。お前逃げるのか?」
俺が青年たちを運び出そうとするところにマルが引きとめる。
俺がワイバーンに戦いを挑まないのを見て、俺が怖気づいたとでも思ったのだろう。
だが違う。俺はワイバーンを倒す前にしなければいけないことがある。
だから、俺は気にせずに青年たちを運び出す。
「けっ! ビビりか。なら、俺が倒しておいてやるよ!!」
マルはそう言って、上空にいるワイバーンへと向き直る。
そして、魔力を集束させる。どうやら、魔法で牽制するつもりのようだ。
「くっ! まだ青年たちを避難させれてない! 無理はするな!」
「知らないよ! 避難させるならとっとと勝手にやれ!!」
マルはそう言って、青年たちが運び終わっていないのに攻撃をワイバーンに仕掛ける。
「暗き闇よ。矢となり、相手を貫け。闇の矢」
マルは闇の矢をワイバーンに向けて放つ。
そして、闇の矢はワイバーンに直撃して、ワイバーンにダメージを与える。ただダメージといってもごく僅かであり、かすり傷程度だ。
それでもワイバーンは怒りをあらわにして、マルを見る。
「こいよ!」
マルはそのワイバーンを挑発するように笑みを浮かべた。
ワイバーンはそれを読みとったようで、荒れ狂うように叫びマルへと突撃してくる。
「もらったッ!」
ワイバーンが近づき、低空飛行になったところにマルは飛び込んで、剣で斬りつける。
ワイバーンは相手が突撃してくるとは考えていなかったようで、回避できずに剣で斬られる。
といっても鱗は硬かったようで致命傷にはなっていない。
尻尾を振り回し、今だ空中にいるマルへと攻撃をする。
マルは尻尾の攻撃を剣で防ぐ。ただ、威力は殺し切れていないようで地面へと吹き飛ばされる。
マルは回転して、勢いを殺し危なげなく着地をする。ダメージなどはないようだ。
ワイバーンは追い打ちを掛けるために、マルへと向かって飛んでくる。
マルはそれをサイドダッシュをして回避し、剣による一撃を避けるついでにしておく。
そして、後ろへと飛んで行ったワイバーンへと闇の矢を放ち、追撃もしておく。
ワイバーンは連続攻撃が痛むためか悲鳴をあげる。
どうやら、マルはワイバーン相手に善戦しているようだ。
もしかしたら、マルが勝つかもしれない。
青年たちを運びながら、戦いの状況を観察していた俺はそう思った。
青年たちを戦闘している場所から離れた位置へと運び終えたときに、ワイバーンは遠くに飛んで行く。どうやら、一旦、引くつもりだろう。
こちらとしても好都合だ。
この青年たちをもっと安全な村まで運べるほうが良い。
そう思い、ワイバーンが飛んで行くのを見守ろうとしていると、マルが一緒に駆けていくのも見えた。
あのバカッ! 追い打ちを掛けるつもりか? まったく、まだ相手の出方が全て解ったわけでもないのに、一人で行くなんて危険だ。
クソッ! でも俺は青年たちが気になる。しかし……。
「俺たちは大丈夫です。それよりもワイバーンを追いかけたマルが苦戦するはずなので、追いかけて加勢してやって下さい」
「……ありがとうッ! 後で迎えにくる!!」
俺は青年たちの言葉に甘えて、マルを追いかけることとした。
「追いついた」
マルがワイバーンを追いかけて戦いを始めている場所へと追いついた。
しかし、マルは先程と違って、息も激しく、かなり体力を消耗しているようだ。しかも、身体のあちこちに打撲の跡が見られる。
そうマルはワイバーン相手に苦戦していた。先程までは善戦していたはずなのに。
それには理由がある。そうワイバーン一匹相手なら苦戦はしないが、マルが対峙しているのは三匹のワイバーン。だから、苦戦しているのだ。ただでさえ、一匹相手に対等な戦いとなる強敵なのに、三匹もいれば防戦一方になってしまうのは必然だろう。
どうやら、ワイバーンは一匹だけではなかったようで、あそこで戦った一匹のみが逸れて戦っていたようだ。
マルはワイバーンから尻尾による攻撃で強打され、こちらへと飛んできた。
剣で何とか少しは防御したものの全てを防御できたわけではなく、腕と足をやられていた。
そうして、近くにきたおかげか俺に気づく。
「お前も来たのか。だが、俺がコイツらを一人で倒す」
「……はぁ、何言ってんだよ。その傷で体力で倒せるわけないだろ?」
「まだ倒せる。それに、これは俺の戦いだ。俺が負けようが関係ないだろ」
「関係あるよ。むしろここで戦わなかったら俺が強くなる意味なんてないよ」
俺はそう言って、こちらへ向かってきていたワイバーンの尻尾の攻撃をタナトスで受ける。
……なるほど、確かにC+ランクの強さと認定される程だな。受ける攻撃の重量感が違う。
だがな。クリュスの魔法には程遠い!!
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
俺はタナトスに魔力をも注ぎ込む。そして、腕に力を込めて、ワイバーンの尻尾をぶった斬る。
グァァァ!!
ワイバーンは悲鳴をあげる。その隙に俺はワイバーンの頭部へと近づいて、渾身の一撃を与える。
タナトスはワイバーンの頭部を真っ二つに斬り、ワイバーンを絶命させる。
その隙にワイバーンの一匹が俺に尻尾による強打をしてくる。
このワイバーンは先程の個体よりも大きい。それに最高速度からの尻尾攻撃。これを受けるのは得策ではない。
受けてしまえば、無防備にもなり、もう一匹の攻撃が回避できないかもしれない。
だが、俺が避けてしまえば、近くにいるマルに被害が及ぶ。
だったら、選択肢は一つだ。
ガッ!!
「おい、お前。何してんだよ!!」
マルは怒声をあげている。そして俺は尻尾の攻撃を受け止めている。
かなりの質量だ。吹き飛ばされそうになる。だが、俺は飛ばされるわけにはいかない。俺は力の限り踏ん張る。
そこへ、二匹目の攻撃が繰り出される。
それも尻尾による攻撃。ただ幸いにも同じ位置を攻撃してくれたようでタナトスで二つの尻尾を受け止めることが出来た。
ただ受け止めれたのは一瞬だけ。
二匹の攻撃の質量に俺は耐えられずに大きく後ろへと飛ばされる。
飛ばされた位置には岩壁があり、何とか受け身を取るも背中を強く打ちダメージを負う。
だが、ダメージはそこまで大したモノではない。
だから、すぐさまに立ち上がり、光の銃弾をワイバーンに放ち、隙を作ることとする。
一匹は光の銃弾を上空に飛翔することによって、回避した。
だが、もう一匹は反応できずに光の銃弾を受けて硬直する。
もちろん、俺はその隙を逃さずに近づき、首を刎ねる。
これでワイバーンは二匹倒した。あと一匹だ。
そう思い、ワイバーンの行方を追う。
ワイバーンはどうやら、いつのまにかマルの元へと行き、牙による攻撃をしようとしている。
俺はすぐさま駆けつけ、牙による攻撃をタナトスで受け止める。
牙による攻撃は受け止めることには成功した。だが、次の瞬間、尻尾による攻撃を腕に受ける。
それでも俺は何とか踏ん張り、マルを庇う。
「くッ! お前は本当に何してんだよ! けが人の俺なんて放っておいて戦えよ! そんなことしてたら、お前までやられるだろうが!」
「あのな。俺が戦う理由は守るために戦っているんだよ! 俺が勝ててもお前が無事でないと意味がない! それに俺は負けないから大丈夫だッ!」
クリュスと戦ったときのことを思い出す。俺は勝って守る。
タナトスに魔力を、力を、意思を込める!!
タナトスは強き漆黒の光を放ち、刀身を変えていく。漆黒の長剣。
俺はタナトスを持ってして、目の前にいるワイバーンの牙を裂き、ワイバーン全てを裂く。
そうして、ワイバーンは全て倒した。
ダメージと力を使いすぎたせいで、動けなくなったが、異常を察した村の人たちが来てくれたおかげで、連れて帰ってもらうことが出来た。
いや、本当に助かったね。
そして、ワイバーンは全てで三匹でだったみたいで、討伐は完遂したとのことであった。
というよりも複数匹いるなら、先に言ってよね。とも思ったが、どうやら見張り場所に襲撃のあったとき、初めて知ったようなので不問としておいた。俺って優しいね。
そうして、村に危険もなくなって俺は用が特になくなったのだが、怪我と体力の関係により、一日村長の家に泊めてもらうこととなった。
そういうことで、村長の家の客間で床につこうとしたが、「コンコン」とノックがあったのでドアを開けてやることとする。
「マル? なんか用事でもあるのか?」
ドアを開けるとマルが俯き突っ立っていた。
そんなマルに質問してやるが、俯いたまま固まってやがる。
いったい、何の用なんだよ。俺、心読めないから解んないっての。
「あのさ、ありがとう」
「ってなんだよ。そんなことかよ。いいよそんなこと。俺は俺のやりたいことやっただけだしな」
「うん、解ってる。だけど、助かったから」
まったく、いきなり素直になりやがったなコイツ。生意気なとこしか見てないからビックリするな。
と思っていたら、マルがいきなりバカにしたようにニヤケ顔をして言う。
「それから、俺も強くなって、守るよ。俺もグレイみたいに守ることが出来るように強くなる。だから、グレイはいつもすぐに抜かれるとか思ってビクビクしておけよ!!」
そう言って、マルは駆けていった。
「ったく。ガキが! 俺はお前なんかにビビらないっての!!」
やっぱりアイツは生意気なガキだ。だが、それでマルって感じだから良いだろう。
アイツはこれから強くなるだろうな。
俺も負けないようにもっともっと強くなろう!!
次回は誰の話をするかは未定。(ちなみに本編はあと2~3話ぐらい書いたら、始めようと思っています)
《補足》
・ワイバーン C+ランク
大きな翼と長くしなやかな尻尾を持つドラゴンの亜種。
前脚はなく、腕部が翼になっている。尻尾は硬く鋭い鏃のようになっており、攻撃に気をつけなくてはならない。
主な攻撃は牙による攻撃と尻尾による攻撃。
ブレス系の攻撃は使用しない。(このため、Cランク)