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決闘その後  ――<魔王>――




 グレイとクリュスの決闘後、クリュスに二つのお願いをすることとしていた。


 まず一つ目が、『勇者と魔王の決闘は延期』ということを人間達に伝えてもらう。もちろん、その際には『勇者は強くなっている最中であり、魔王に勝つ見込みもある』というのも流布してもらう。

 この事により、戦争の開戦は時期尚早であることを悟らせる。

 だが、やはり目の前の問題である食料難をどうにかしないことには開戦をすべきだと言うものもいるだろう。

 その問題については二つ目のお願いにより解決させる。

 

 二つ目、『延期を持ちかけたのが魔王からということもあるため、延期の了承の交渉材料として、食料の譲渡をする』ということを人間達に伝えてもらう。

 この事により、開戦する理由を弱くする。さらにはすぐに開戦する必要を無くすことが出来る。それに幸いにも魔族の食糧は余りある程に余裕があるからな。

 

 その二つのお願いにより、人間達が開戦する理由は弱くなり、少なくともすぐに開戦する必要はなくなる。

 

 だが、この解決方法では一つの懸念が生まれてしまう。それは食料まで献上する魔族は恐怖して開戦をしないと考えられてしまう可能性があることだ。この事により、開戦賛成派が調子付いてしまうだろう。

 それにより、開戦の可能性は残ってしまう。ただ、このまま放っておくよりも可能性は格段に低い。

 だから当初、それは仕方がないと考えていたが、聖女が協力的であるということで話は変わってくる。


 まずはだ。食料の献上量を些細な程度にする。些細とは、これでは食糧難になりそうな者たちに対する食糧で1週間程度の猶予しか得られないという程度だ。

 それでは、すぐに開戦する必要を無くすことは出来ないだろう。焼け石に水程度で軍議に余裕を持たせて、少し延ばせる程度だ。

 そこで聖女の出番だ。

 聖女は教会でも重要なポストに位置する。だから、今回はそれを利用する。

 まず聖女のポストを用いて教会に食料を贈る。そして、その食料は教会の施しと評して食料を配給する。

 これにより、食料難は緩和され、開戦する必要性は薄れるはずだ。さらに表向きの食料の献上量が減ることで恐怖しているなどと思われる可能性が低くなる。

 

 それであれば、教会からの食料配給だけで事足りるのではないかとは思いがちだが、それはそれで問題は出る。

 その問題とは案の議決と配給ルート確定の時間の確保だ。

 まず当案の議会は必須だろう。いくら聖女が重要なポストといっても教会の方針を一人で決めることは出来ない。だから、当案の議会が必要となる。といっても、今回の件について教会も協力的であることから議決は決まったようなものだがな。ただ、時間は要する。

 それから、配給もルートを確定しておかないと軍にダメ出しされたり、横領されたりする可能性も残るため、時間を要する。

 だから、食料の献上は僅かな猶予を生む程度にはしておく。それにより、僅かでも猶予が出来れば、教会が事を済すことが出来る。


 という訳でクリュスには『勇者と魔王の決闘延期』連絡と『延期の詫びの食料』話を伝えるようにお願いをした。

 

「仕方ないね。けど、言う事を聞くって言ったしやったげるよ」

 

 と言葉は渋々だが、本当のところは嫌そうではなさそうな表情で答えてくれた。

 聞き入れてもらうためには手こずりそうな相手と思っていたが、意外とすんなり済んだ。意外と義理がたいのかもしれない。

 その後、クリュスは帰国する準備をし出発した。

 行きと同じように道中で襲われないように手配もしておいた。襲われて機嫌を損ねると面倒だからな。

 

 

 クリュスの出発後に聖女――マリアと話をする。

 あの護衛とやらがいると話が進まないので二人で話をさせてもらった。

 ただ二人になる際にも護衛はわめき散らして面倒だった。マリアがよーく説得することで黙ったが、本当に面倒なヤツだ。

 そして、二人きりになった後、マリアに食料配給の話を提案する。

 初めマリアは驚きの表情を見せ、次第に冷静になり考える。具体的に考えているのだろう。

 そうして、少し時間が経過した頃にマリアは口を開く。

 

「確かに私の立場があれば、可能な話だし、私が人質になるということで一時しのぎするより、遥かに良い話だわ」

「あぁ、人質になるということでは根本的な解決にはならないからな」

 

 やはりと言うべきか、マリアは考えることが充分に出来るようだな。これなら、話は早そうだ。

 

「でも、一つ問題――いや、確認があるわ」

「なんだ?」

「正直、魔族である貴方、いや魔王である貴方がここまでのことしても大丈夫なの? 謀反が起きてしまったりしない?」


 やはり、マリアは鋭いな。

 確かにマリアの言う通りの懸念は大いにしてしまう。只でさえ、勇者を魔王城に住まわし、強くしていたりするのだ。

 これ以上、魔族の大勢の者達に反感、不信感を抱かせてしまうと魔族の中でも調子に乗る者達が出てしまう。

 だが――。


「そんなことが起こったとしても関係ないな。俺が鎮めてやるよ。なんたって俺は最強の魔王だからな」


 そう俺は最強の魔王だ。

 だから、力で解決させる。それに、謀反といっても一部の者が決起して、裏で決闘をやる程度だろう。

 ならば、全て撃破してやればいいだけだ。

 戦争なら一人の力だけではどうにも出来ないが、標的が俺。しかも、裏での戦いなら、力さえあればどうにでもなる。


「ふーん、意外とグレイと似てるのね」

「……どこがだ?」

「さぁね。内緒よ」

「……」

 

 グレイと似てる。これがこんなにも重いとはな。予想外だな。

 

「それよりも、それなら了解だわ。教会の件については任せて」

「あぁ、頼む」

 

 意外と色々と探られたが特に問題なく了承してくれたようだ。

 

「じゃぁ、セノアに頼むわね」

「……待て」

「なに?」

「何故、お前が帰国しないのだ? だいたい、お前が帰国し発言しなくれば、意味はないだろう?」

「別にセノアに私の書いた文書を持たせれば大丈夫だからよ。それだけ、教主様は協力的よ。それに万が一、策が上手くいかない場合に私の身柄を上手く使うほうがいいでしょ?」

 

 確かにマリアの言う通りだ。マリアの身柄は此方にあるほうが戦争の開戦する可能性は下げることが可能だ。

 だが、有用であることは確かだが、いくら何でも敵地のど真ん中に居ようと思うのか?

 ――まぁ、いい。余計な詮索はせずに協力してくれるなら、協力してもらおう。


「そうか。そこまで言ってくれるなら、協力してもらおう」

「えぇ、協力するわ。それよりも貴方には多大な恩があるから、それに比べれば安いモノだけどね」


 マリアはそう言った後に「文書を準備するわ」と文書の準備に取りかかり行った。


 その後、マリアとセノアは俺の自室に訪ねてきた。

 やはりと言うか、セノアはかなりご立腹な様子だ。だが、この部屋に笑顔のマリアと一緒に訪れたということは渋々ながらも了承したということだろう。


「セノアは説得したわよ。それから、セノアは今から出発するからその連絡で来たわ」

「わざわざ、済まないな」

「お前! 聖女様にもしものことがあったら、絶対に殺すからな!」


 セノアは親の敵でもあるような目で俺を見据える。俺は随分と嫌われたものだな。いや、俺がじゃなくて魔族が、か。

 といっても過去の歴史から考えるにそれは普通なのだろう。マリアみたいなのが珍しい。

 

「任せろ。俺がいる限り大丈夫だ。それから、万が一、もしものことがあれば、お前ごときには殺られはせんが、この命を持ってして償おう」

「貴様ッ!!」

「セノアッ! 魔王様は命まで掛けた約束をしてくれたのよ。それに対して文句を言ってはならないわ」

「……魔族が言うことなど信用出来ません」

「全く、さっきも言ったけれど、今の状況を考えたら信用に足る相手だと解るはずよ。それにはさっきも納得したわね?」

「そ、それは」

「ハイ、じゃぁこの件については終了よ。魔王様、用件はそれだけですので失礼致します」

「……くッ、失礼する」

「あぁ、頼んだぞ」


 そう言った後、二人は部屋を出ていった。あの場では収まったもののセノアは相変わらず俺を睨むことを止めなかったな。

 といっても不快でもないから気にならないがな。

 とりあえず、これで開戦についてはどうにかなりそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、セノアが帰ってきて、教会から協力の意向を受けて、開戦を回避するようにした。

 その行動によって、開戦はされずに済んだ。狙い通りだ。

 これで魔族と人間の醜い争いが無くなった。そして、今日も変わらずに執務室で仕事を続けていたら、急にドアが勢い良く開かれる。

 訪問者は――。


「今日こそ覚悟しろッ! 俺は最強になったんだッ!! 見せてやる真の力というモノを」

グレイ(バカ)か」

「ククク。そう言ってられるのも今の内だ!」

「どうやったら、治るのだろうか」

「フッ。余裕ぶっこく暇なんて無くしてやるよ!たぁぁぁ!」


 光の銃弾を数発放ってきた。

 俺は避けることもせずに、手を前に出して魔力の防壁を張ってヤツの魔法を消去する。


「そんなこと予測済みだぜッ! 本命はコッチだよ!」


 グレイは机を飛び越えて、タナトスで斬りかかってきた。


「はぁ……バカが」


 斬りかかってきたタナトスを華麗に回避して、バカを蹴り飛ばす。


「ガバッ!?」


 バカは派手な音をたてて壁に背中を打ち付けた。

 だが、バカにはまだコレでは足りないだろう。


「お、俺はまだ負けない!」

「……もういい。黙っとけ」


バカは治らないとは思うがうるさいし黙ってもらうために永遠の業火を放つ。勿論、中々消えないようにかなりの魔力を込めて。


「へッ、そんなの効かねえなぁ。タナトスで切り裂いてやるよッ!」


そう言ってバカはタナトスを振り切……れずにタナトスが吹っ飛んだ。


「へ? ……ってギャァぁぁぁあぁ!!」


 バカは間抜けな声を出した後に、目前に迫った永遠の業火を避けきれず燃やされた。

 全く、バカは死んでも治らないという言葉は確かだな。とバカを見てると感じられずを得ない。

 

 

 

 

 あれから、特に変わらずないつも通りの俺と勇者の日常。

 そんな人によって色々とある日常。

 そんな日常を守ったんだ。グレイよ、解ってるか?

 

 お前が目指す強さに近づいてるってな。




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