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戦争中止作戦会議  --<聖女>--









「ではまず、私から今回の議題について説明させていただきます。

 今回の議題は我が国よりの宣戦布告と暗殺計画を中止させて戦争をさせないといったものです」

「はーい、了解。とりあえず、大飢饉のことは置いておくのね」

「そうです。大飢饉も確かに問題ではありますが、内政をしっかりすれば、被害をかなり抑えることも可能かと考えていますし、それよりも我が国の滅亡の可能性がある戦争についてを議題とさせていただきます」

「そうですね。とりあえずはその議題についてお話いたしましょう」


 レニ、ミネア、私がミネアの屋敷の客間で会議を行っている。

 レニが会議を進行してくれる役で私とミネアが主に意見する側というスタンスで会議を行う。

 今回の議題は前回の国会で決まってしまった事項である宣戦布告と暗殺計画を止めるということだ。

 これを正面から止めようとすると王に対する反逆となってしまうため、ばれないようにと細心の注意を払う必要がある。

 しかも、絶対に成功をさせないといけない内容であるため、かなり重大な議題だ。

 

「ではご意見などございましたら、発言をよろしくお願いいたします」

「はーい、私から意見するわね」


 ミネアが手をあげてその場に立つ。


「宣戦布告と暗殺計画をするということなら、その使者を縛り上げてはどう?」

「それは確かに今回行われる宣戦布告と暗殺計画を止めることは可能だと思いますが、第二の使者や第三の使者が出てきた場合も何度も捕獲することは難しいでしょう」

「あと仮に捕獲することができたとしても、犯行がばれてしまう可能性が高いと思うわ」

「うーん、それならこの案はダメだねぇ」


 正直に言ってばれると元も子もないから使者をどうにかしてという策は良策とは言えない。

 だが、正面から戦争反対と言って、使者を送らないようにして、戦争を始めないようにすることも難しい。

 対応出来る方法をとればボロが出たり、根底からの解決にはつながらない。

 かといって根底からの解決を行う正攻法などは今の状況から考えて対応出来ない具体性なき策となってしまう。

 どうにかして、何か妙案を出さなければいけないのだが。

 

「あぁ、難しいわね」

「えぇ、確かに難しいです。ですが、何か考えなければいけないのは確かです」


 その言葉をあとに私たち三人は各自で色々な策を考えてみたが、どれも難色を示す策ばかりとなってしまっていた。

 やっぱりレニとミネアも考えてくれてはいるようだが、特に具体的な策は浮かんでないようだ。

 

「ご無理かとは思いますが、ミネア殿も大貴族であるので、それとなく使者を出すのを中止させたりなどは出来ないのですか?」

「それが出来たらとっくの昔に提案してるわよ。せいぜい使者の出発日程を遅らせることぐらいしか出来ないわ。それから、使者の出発日程を遅らせるための作業はもう開始しているわよ」

「そうですか。だが、もう既に動いているとはさすがミネア殿でございますね。マリア殿は教会から使者を止めることは出来ないですよね?」

「えぇ、出来ないわ。大体、教会は軍事に関わらないようにすると規定されていますので直接的な介入はできません」

「ではやっぱり正攻法は手詰まりといったようですね」

「みたいだわね」「みたいですね」


 やはり、正攻法についても確認してみてみたが良策ではないようだ。

 

「あぁ、もういっそのこと勇者が勝ってくれてたらいいのに!」

「それは無理でしょう。彼の実力は自分からみても低いとしか評価できない程でしたから」

「まぁね。それはわかるんだけど。というか、もう今ごろ何やってるのかな? 本当に無責任よね」

「彼は無責任なんかじゃないですッ!!」


 策が浮かばないことへの苛立ちから勇者非難をしていたレニとミネアに叫び声をあげてしまう。

 だって彼は無責任なんかではないから。

 レニは「言いすぎましたね。すみません」と低頭し、ミネアも「確かに言いすぎたね。ごめんね」と謝ってくれた。


「いえ、こちらこそ言いすぎました。すみません」


 いきなり叫んでしまったこともあり、私も頭を下げる。


「もしかして、けっこうなお知り合いだったの?」

「いえ、そんなことはありませんけど」


 そう大した知り合いというわけでもない。会話なんてほとんどしたことない。

 だけど、彼の強さを知っている。彼の責任感の強さを知っている。


「そっか。なら良かった。でも本当に何やってるんだろうね」

「それは……」

「大差で負けてしまっていたなら、歴代魔王の性格から考えて、生きてはいると思うんだけどね」

「ミネア殿が言う通り、魔王の実力が如何ほどかはわかりませんが勇者との差はかなりあるとみても間違いないはずなので、私も生きてはいると思いますよ」

「じゃぁやっぱり、負けたけど帰るのが恐くて逃げてるってとこかな?」

「私は逃げてはいないと思います。たぶん帰ってこれない事情などがあるのだと思います」

「うーん、帰ってこれない事情ね……。何があるのかな?」

「それは……」


 そう聞かれて口を閉ざしてしまった。

 確かに、帰ってこれない事情となると中々、思いもつかない。

 ……たとえば。

 

「つ、捕まっているとか――」

「あッ!!」


 帰ってこれない事情を考えて、発言をしている最中にミネアが叫び声をあげた。

 

「どうしたんですか?」

「思いついたのよ。今回の議題うってつけの策がね」


 ミネアはどうやら策を思いついたようだ。

 

「マリアが捕まるって策なんだけど、どう?」

「……ミネア殿、確かにそれは良い策ですね」


 ミネアが思いついた策というのは、私が魔王に捕まるという策。

 確かに私が捕まることで簡単には戦争をしかけるわけにはいかなくなる。

 いかに国王が命令しようとも、教会の聖女を危険にさらすのが解っていて戦争することは出来ない。なぜならば、聖女は白神の臣下であり、民の光でもあるからだ。

 聖女は白神の臣下であるために国軍の事に関与してはならないし、国軍の事に関与させてもならないという決まりがある。そして、何よりも聖女という名の民に降り注ぐ光の効果は大きい。それも単に教会からの食糧の捻出、土地再生運動、無償での治療などといった日頃からの聖女の働きということが要因だ。

 そんな聖女が捕まっているのに戦争を始めるとなると民の信頼をなくしてしまうことや暴動が起ったりなどで我が国はなりたたなくなる。

 そのこともあり、聖女が魔王に捕まることによって戦争を止めることが出来る。といったところだ。

 

「でも私としてはマリア殿にとって危険が生じてしまうことなので、諸刃の剣の策とも感じられますが」

「確かにね。そうかもしんない」


 そう、確かに戦争を止めることは出来る。

 しかし、魔王に捕まる必要がある。あちらでの生活は保障されず、下手をすれば捕まるのではなく殺される可能性だってある。

 得られる結果は大きいがリスクが大きい策であるというのは確かだ。

 

「でも、この策しか具体的に行えるようではないことと、もう時間もないです。それに私としてはこの策に賭けてみる価値はあると考えています。女の勘ですがいけると感じでいますしね」

「確かにマリア殿がおっしゃる通りかもしれません。リスクはありますが良策と考えられるので私もこの策で問題ないかと思います」

「私としては提案した側だし、反対する気もないわよ」

「三人とも賛成ということにより、私が魔王に捕まり戦争を止めるといった策で進めていくとします」


 そうして策は決まり、魔王に捕まるまでの算段や魔王に捕まったときに説明をし協力を得られるようにするための話の内容を考えたりと会議は進んでいった。

 その後は特に問題事項も発生しなかったため、トントン拍子に策の詳細が決まっていった。

 策の詳細が決まったこともあり、後は策を実行する日を待つのみとなった。

 この策を絶対に成功させて、戦争を止めないと。と覚悟を決めて私の今日は閉じた。







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