初めての戦闘訓練 --<勇者>--
鬱蒼とした森林。人間と変わらない程の背丈をし、猪のような頭を持つ野蛮で人を襲うモンスター。
オーク達はこちらに気づいた様子もなく森を散策していた。
「ふぅ、俺は出来る。俺は出来る。俺は出来る」
オーク達に聞こえないように小さく呟いた。
今、俺はオーク達を相手にして戦闘経験を積むといった訓練を受けている。
魔王の訓練をし始めてから2週間が経ったこともあり、実力はかなりアップしていた。うん、我ながら凄いね。
そのため、そろそろ実戦経験を積むには良い頃だと、このオークの森へと連れてこられたんだよな。……ヴェルトめ、好き勝手にしやがって。
オークの森――ここはオーク・エイシャントが統治する森。ゆえにオークの森と呼ばれてるんだよね。
そして現状。今、見える範囲にオーク・コモンが6匹いる。いやぁ、さすがオークの森って言うだけあって、オークがいるねぇ。オーク恐いなぁ。
オーク・コモンはEX級~G級まであるランクのF級に該当するモンスター。
正直に言ってモンスターとしては弱い。強くなった俺の実力を考えると余裕の相手だ。うん、俺強くなったね。やっぱり才能あるよね。
「俺は強い。……俺は勝てる」
だが、俺は生死を賭けた実戦経験というのがない。
だからまだ相手を見つけても襲撃出来ずにいた。
正直に言うと逃げ出したい。恐い。嫌だ。
……だが、俺は強くなりたい。ヴェルトの期待に応えるためにも。俺自身が憧れた本当の勇者になるためにも。
「……行くぞ!」
「グウオォォォォォッ!!!」
決心を決めて飛び出そうとした瞬間に相手もこちらに気づいた。
オーク達は怒鳴るような荒々しい未発達な言語を発しながら、手にしたこん棒を構えて突撃をしてきた。
「遅いッ!」
突撃してきたオーク達の横をオーク達が対応出来ない速度で駆け抜けていく。
速度は日々行われる『永遠なる業火』の回避訓練と魔法訓練にて覚えた魔力補正による身体能力向上のおかげにより、かなり上がっていた。
だから、オーク・コモンなどに後れをとることなどない。
「一匹目っと」
そして、通り過ぎ様に漆黒の短剣を持って一人を切り裂いた。
漆黒の短剣は全長40㎝程度といったところなのでそこまで深くは斬れないが、斬ったところはパックリと斬れているため、十分なダメージは与えたはずだ。
「グギギィィィィィッ!!」
やはり、ダメージは十分だったようで斬ったオーク・コモンの一匹は奇声をあげながら倒れた。
他のオーク・コモンは何があったのか理解出来ていないようで固まってしまっている。
「もう二匹っと」
固まっている間に二匹のオーク・コモンを一匹目同様に斬り裂く。
やはり、オーク・コモン程度なら、余裕で倒せるようだ。
「グウオォォォォォッ!!!」
残りのオークが怒声をあげながら、突撃してきたが、一匹目と同様に一匹づつ倒していき、三匹のオークを葬りさっていく。
「余裕~♪」
俺は調子に乗って散策を続けている。もっと、倒してやる。
……ふふふ、オーク・コモン……敵にもならないぜ。ほんっとうに弱いね。いや違う、俺が強すぎるんだよな。
ぬははははははははッ! ヴェルト抜く日も近いなコレは! 俺、無双時代突入の予感~♪
「ググオォォォォォッ!!!」
うん? またオーク・コモンか? また葬り去ってやるぜ! 来いよ! 来いよ!
というわけで意気揚々と声が聞こえた後ろへと振り向く。
「えーと、調子乗ってました。はい、すみません」
目の前に現れたのは大男よりも大きい体躯のトサカが赤いオーク……オーク・ジェネラル。オークの中でも強い部類に入り、モンスターとしてもD++ランクに該当する程に強いとされる。
正直に言ってさっきのオーク・コモンとは比べると強さは比じゃない。うん、これは本当にヤバい。調子に乗って森の奥なんかに来るんじゃなかった。
「ググオォォォォォッ!!!」
「くッ!」
オーク・ジェネラルは俺との距離を詰めて手に持ったこん棒を縦に振り下ろす。
何とか、振り下ろされる前に後ろへと飛んで回避する。
「ググオォォォォォッ!!!」
追撃されるが、先程と同じように回避する。
どうやらスピードはやや俺のほうが速いようだ。
だが、武器の間合いが違うということで迂闊に近づけない。
オーク・ジェネラルが持つこん棒は1m以上も長さがあるため、間合いが広い。力の差もあって相手の攻撃を受け止めることは出来ない。だから、攻撃を仕掛けるためにはオーク・ジェネラルのこん棒による攻撃は避けて近づく必要がある。だが、攻撃を避けて近づくには危険が伴う。
「くッ!」
避けて近づくことも出来ない状態となってしまったため、相手の攻撃を距離をとって回避することに努める。
だが、このまま回避していても勝てない。それよりも他のオークが来てしまったら、もう終わりだ。
だったら……!
「うぉぉぉぉぉッ!」
意を決して飛び込んだ。振り下ろされるこん棒を見極めて攻撃を回避しオーク・ジェネラルの懐へと飛び込むことが成功する。
やった! もう懐だ! こん棒をもう一度、振り回す暇なんてない。もらったッ!!
「もら……ぐぁッ!!」
懐に飛び込んで一撃を入れる寸前に横からの衝撃によって吹き飛ばされた。
「グオォォォ!」
吹き飛ばされたところにこん棒がまた振り下ろされたので回避する。くッ! さっきの衝撃は当り所も悪くなかったようで致命傷とはならなかったがダメージが蓄積されてしまった。ダメージのせいかスピードも相手と同じくらいしか出せない。
しかも、懐に飛び込んでもパンチによる攻撃があるのは厳しい。ダメージがない状態なら意識していれば避けれたかもしれないが、今ではかなり厳しい。
相手に誘いこまれたということか。クソッ! もっと冷静に戦う必要があったな。
これは本当にヤバい。
ここはもうヴェルトに助けを求めるか? ヴェルトなら助けることが出来るようにしているかもしれない。
……いや、やっぱりダメだ。まだ、勝負がついた訳でもないのに助けを求めるだなんて。
俺は強くなるって決めたんだ! だったら、足掻いてやる!!
だが、回避している内にダメージが身体に響いてきているため、スピードが下がってきている。クソッ! 早く勝つ方法を考えないと。
どうやって俺はコイツに勝てる。俺は何が出来る? 俺は……そうだ。俺はコイツよりも間合いが広い武器がある。優位に立っているオーク・ジェネラルは油断しているから当るはず。だから、それを使えば……勝てる!
距離をとるため、後ろに大きく跳んだ。
そして、一直線に追ってきながら大きくこん棒を振り上げているオーク・ジェネラルに手を向ける。……今だッ!
『光よ、銃弾と化し敵を穿て光の銃弾』
光の銃弾がオーク・ジェネラルに的中し、オーク・ジェネラルを貫く。さらにオーク・ジェネラルは少し後ろの方向に態勢を崩す。
「うぉぉぉぉぉ!!!」
そして、その一瞬の隙をついて近づき漆黒の短剣により斬り裂く。
「ギオォォォォォッ!!!」
オーク・ジェネラルは光の銃弾と漆黒の短剣の攻撃により、倒れた。
「ははは、足掻けば何とかなるもんだな」
どうやら、俺はオーク・ジェネラルに勝てたようだ。正直に言って、パンチの当り所が悪かったら死んでいた。光の銃弾も相手が油断せずに反撃について警戒されていたら、避けられていた。かなり、危ない戦いだった。良かったか悪かったか解らないが本当の生死を賭けた戦いが経験出来た。
……あぁーでも、もう無理。ダメージも響いてきているし、しんどい。早く帰ろうっと。
「……勘弁してくれよ」
帰りの方角を見るとオーク・コモンが群がっていた。
うん、確かにオーク・コモンぐらいなら今の状態でも何とかなるよ。だけどね。
あぁ!! もう、しんどいから帰りたいってのによおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
戦闘描写って難しいですね。その前に文章能力がないので『全体的にあかんやん。難しいわ』って感じではありますが。笑
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これからも読んでいただけるようにできたらなって感じで続けていくようにします!