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始まり始まり

 初めて投稿します! いたらない点などありましたらどうぞお気軽にビシバシ言ってやって下さい!

 というわけで感想などお待ちしています!

 ではでは『勇者くん と 魔王くん』をお楽しみ(できるんかな?)下さい。 

「覚悟ぉぉぉ!」


 魔王城の玉座にて叫び声が響きわたった。

 叫び声を上げた声の主は熱意溢れんばかりの瞳を持つ端正な顔立ちの青年だ。体格は俺と同様で細身の長身。出で立ちは鎧と真っ青なマントと大きな両刃剣といったところだ。


「うぉぉぉ!」


 青年は叫び声を上げながらこちらに近づき剣を振り上げた。……いや、振り上げようとした。


「うわッ!」


 青年は派手に転けた。どうやら振り上げようとした剣が重くて自身のバランスがとれなくなり、派手に転けてしまったようだ。


「……はぁ」


 青年が作り出した光景に思わず嘆息する。


「くッ! そこッ! 溜め息をつくな!」


 青年は嘆息する俺をみて怒声をあけだ。怒声をあげるぐらいなら少しはまともになって欲しいと切に願う。


「溜め息をつかれたくなければちゃんとしろ。大体、剣の重みに負けて転ける何てことはあり得ないぞ」


 青年の失態を正直に告げてやると青年は黙った。とりつく島もないとは青年のような状態を言うのだろう。


「だいたいだな。歴代でも流石にお前程に酷いのはいなかっただろう。そこまでお前は出来損ないだということを自覚しろ。まったくどうしたものか……」


 率直な感想を青年に告げた。すると、青年はまた黙るのだろうと思ったが、顔を真っ赤にして口を開く。


「あぁ俺は確かに出来損ないだよ! だがな、お前だってそうなんじゃないのか? 偉そうに話すだけで何も出来ないんだろうよ! 何か凄いことが出来るようならやってみろよ! ケッ! 口だけの野郎がッ!」


 正直に青年をぶち殺そうかと考えた。こんな奴にコケにされたとは酷く不愉快だからだ。だが、俺は大人なので我慢する。

 それよりもこのままコケにされたままでは気にくわないので青年の言う凄いことをやってやろう。


「ほら、黙ってるだけじゃないか。やっぱりお前も凄いこと出来ないんだな」


 俺が思案している最中に青年はどうやら勘違いをしてしまったようだ。勘違いをする青年のおかげで一石二鳥の凄いことをやることに決めた。


「まぁ見ていろ」


 俺はそう言うと手を前に差し出して、魔力を集束させる。魔力は赤き光を放つ。

 まだ魔力を集束させただけなのに青年は呆気にとられていた。そんなことも出来ないだろうと見くびられていたようだ。まったく舐められたものだ。


「数々の非礼の報いを身体で受け止めろ」


 集束させた魔力を用いて魔法を放つ。もちろん放つ先は青年に向かってだ。

 一瞬、青年は疑問を浮かべた表情をしていたが、魔法が直撃した直後に表情は変わる。


「うわぁぁぁ!」


 青年の叫び声が暗い玉座に響きわたった。

 叫ぶようになったのは俺の火の魔法が直撃したせいだ。ただ、火の魔法で青年が死ぬことはない。

 火の魔法は威力を限りなく抑えて、回復魔法も付加し死の一歩手前で燃やされ続けるようにしてある。だから死ぬことはない。ただ、地獄を長く味わうだけだ。


「た……助けてくれ!」


 燃え続けている青年が助けてくれと懇願する。


「……解った。助けてやろう」


 青年の様子を見て少しは反省しただろうと考えて魔法を解除してやることにする。

 俺が手を振りかざすと瞬時に火は消えた。

 火が消えたことにより、青年は安堵の表情を浮かべ口を開いた。


「流石に俺は凄いな。あんなに火を浴びても死なないなんて何か凄いことをしていたのだろう。それに俺が凄くないなんてあり得ないはずだ。うんうん」


 俺が攻撃魔法に回復魔法の付加という凄いことをしてみせたのに青年は自分の功績だと捉えたようだ。まったく何も解らない勘違い野郎だ。現実を教えてやろう。


「お前が死ななかったのは俺が回復魔法を攻撃魔法に付加したおかげだ。そんなことも解らないようでは凄いどころかただのバカだぞ」


 俺の言葉に青年は狼狽えた。


「いや、それぐらい解っていたさ。冗談を言ってみただけだ。だいたい俺が解らないはずない」


 狼狽えたようだが直ぐに嘘をついて取り繕う。

 本日二度目の嘆息をする。余りにも情けない。

 青年はまだ何か言っていたようだが、俺の耳に届かない。青年をどうしようかと思案する。

 そしてハッと妙案を思いつく。


「おい、お前。いや、勇者よ。俺がお前を歴代最強の勇者にしてやろう。そして、俺と歴史上最大最強の死闘しろ」


 青年――勇者を魔王である自分で育て上げて末代まで語られるような死闘をすればいいのだ。そうすれば、俺が幼き頃に夢みたことを実現出来る。何て凄い妙案だ。


「ちょっと待てよ。勝手にそんなこと決めるなよ。俺はそんなこと――」

「口答えするな。お前は俺に従えばいいんだ。文句があるならば力付くで通してみろ」


 勇者は「クッ……!」と声をあげる。

 そんな不満顔の勇者にとっても良い事実を教えてやる。


「それより、勇者よ。ここで今すぐ殺されないし、強くもなれる。こんな俺の案はお前にとっても良い案なはずだぞ」


 勇者は考えるために黙った。そして、考えた結果を口に出す。


「そうだな。まぁ元々俺は凄いが少しばかり魔王より実力が下みたいだからな。その実力を埋めるためにその案に乗ってやろう」


 まずはこの見栄を張るところから鍛えなおさないとな。

 それよりもとりあえず勇者が魔王の手により育て上げられることが決定した。

 そうして、勇者と魔王の奇妙な関係が始まった。

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