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氷の魔女の料理屋さん~最愛の師匠を探してモフモフな食堂を始めました!~  作者: 遠野イナバ
第三章『料理の特訓です!』

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09 偵察に行きましょう

 大通りをぶらぶらと。

 今日は天気がいいですからね。

 運動を兼ねて少し遠くまで歩きますかと、わたしが鼻歌交じりに歩いていると、ふいに香ばしい匂いが鼻腔をくすぐりました。


 横を見れば、おしゃれなオープンカフェ。

 しかも満席です。

 店員さんが何枚もの皿を持って店内をかけずり回っています。


 匂いの正体は焦がしプリン(クレームブリュレ)のようでした。

 いいですよね焦がしたやつ。

 上の砂糖がカリカリとしてわたしも大好きです。


 それにしても、先日行ったドーナツ屋さんしかり、いまはあんな店もあるんですね。


 前に王都に来た時は『大陸戦争』と呼ばれる大きな戦のあとだったので、町の活気はおろか、食糧も満足に行き届かず、創意工夫の凝らされた質素メシ(失礼)が主流でした。

 それがいまや、あんな豪華なパフェまで出てくるとは。


 ふんだん盛られたイチゴのパフェを一瞥してからわたしは大通りから逸れて路地裏へと入りました。


「おや、あれは……」


 立ち並んだレンガ造りの集合住宅たてもののあいだに、こじんまりとした一軒家が建っていました。

 表には『ランチやってます』の文字が。

 なるほど。

 隠れた名店バリバリな雰囲気を放っていますね。

 さっそく中に入ってみましょうか。


「失礼しまーす……」


 ゆっくりと戸を開ければ、古びた外見とは裏腹に、思ったよりもきれいな空間が広がっていました。

 かわいらしい花柄の壁紙。

 若葉を連想される淡い緑色のカーテン。

 なんとも目を和ませてくれる店内です。


「いらっしゃいませ」


 来客に気づいた店主さんが店の奥からひょっこりと顔を出します。

 白い帽子に、白いコック服。

 六十路過ぎくらいのおじいさんです。

 すぐにレモン水が注がれたグラスと、メニュー表を渡してくださいました。


「おすすめは、日替わりランチですよ」

「ではそれを」


 注文すると、おじいさんは厨房奥へと引っ込み、調理を開始しました。

 トントントンとリズミカルな包丁さばきの音が聞こえます。

 つづいてじゅわっ。

 なにかを焼く音ですね。


 おいしい匂いが店内中に立ち込めて、わたしのお腹はぐぅと鳴りました。

 ランチが待ち遠しいです。


「わあ……!」


 出てきたのは、オムライスとナポリタンのセットでした。

 さっそくひとくち頬張れば、


「おいひぃ~!」

「それはよかったです」


 おじいさんはニコニコと笑顔でわたしが食事をする姿を眺めていました。

 見られながらのご飯。

 ちょっと恥ずかしいです。

 しかしながらこの味、どこかで食べたことがあるような……?

 そこでわたしは「あっ」と思い出します


「師匠とはぐれた時に食べたオムライスの味!」


 そうでした。そうだった。

 この甘酸っぱいライスの味。

 上にかかったまろやかなブラウンソース。

 ちゅるんと飲めるとろっとろのタマゴ。

 間違いありせん。

 これは、あのとき食べたオムライスの味でした。


「あの! これ、この店! 昔もここにありましたか!?」

「え? ああ、はい。ありがたいことに今年で創業九十五年になりますよ」


 九十五年! 想像以上に歴史深い店ですね。

 なんでも祖父ぎみの代から続くご長寿店だそうです。

 あと五年。百年続くことを祈っています、と返したら、


「ははは、それがここはもうすぐ閉店するんですよ」


 と、店主さんは苦笑しました。

 事情をお尋ねすると、近くに新しいレストランができたらしく、常連だった人たちもそちらに流れてしまったそうです。


 おしゃれで華やかで、おまけにおいしい料理を出す店とあっては確かに繁盛するでしょう。


 店主さんは、「お嬢さんがおそらく最後の客になるだろう。来てくれてありがとうね」と寂しそうに笑いました。


 いやいやいや。閉店とか困るんですけど、わたしが。

 せっかくあのときの店を見つけて、ひとり感動に打ち震えていたところに、もう店閉めます、とか。

 ですから、わたしは言いました。


「わかりました! しばらくここで修業させてください。その代わり、遠のいた客足を戻すお手伝いをしますから!」


 案の定、店主さん(とノルさん)は目を丸くしていました。

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