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氷の魔女の料理屋さん~最愛の師匠を探してモフモフな食堂を始めました!~  作者: 遠野イナバ
最終章『眠りの村の調査依頼』

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47 師匠は意外と近くにいたようです

「こいつ、いまは城で文官やってんだとさ」

「え? お城? じゃあ師匠はずっと王都にいたんですか?」


 なんと。

 店内に入りお話をうかがうと、いま師匠はお城で働いていて、第四王子とやらの偉い人の側近をやっているんだそうです。


 ジェシカさんから聞いた、白髪の補佐官。

 あのお話と一致します。

 ……あれ? 言われみれば師匠、昔よりちょっと若くなりました?


「──先生。まあね。といっても違う人間として、だけど」

「そ。だからいつでも好きな時に会えるぜ? よかったなあ、ロゼちゃんずーっとこいつのこと待ってたもんな~、このこの~」

「痛い。肘でつつくな。それから私も忙しい。会えると言っても休日くらいにしか店には来れないよ」

「休日! いつ!? いつですか!? わたし、先生の好きなオレンジたくさん仕入れておきますから!」


 テーブルに身を乗り出し興奮ぎみにわたしが尋ねると、師匠はほんのわずかに顔に影を落として「未定だ……」と呟きました。


 なんでも、サラさんとユーリさんの情報通り師匠はこの秋にお隣の国──イナキアに行っていたそうです。


 その長旅から戻ってきてすぐに国王の生誕祭(クリスマス)と新年祭と行事が満載で。

 その後、あるじの命でひと月以上も国内を駆け回ったりと色々と苦労なされたようです。


「いま仕えている人のまわりがやたらと騒がしいやつらばかりでね。大変なんだよ」


 はあ、と短いため息です。

 でも少しばかり楽しそうに話す師匠にわたしはその仕えている人とやらが、少しだけ羨ましく感じました。

 一目お会いしたいものです。


「んで。そんな忙しいこいつを城から引っ張り出してきたのがこの俺、エルフィード様ってわけよ」

「わーいありがとうございますエルフィードおじさまマジ感謝です」


 たいへんフラットな表情でわたしはお礼を棒読みしました。

 ビシッとご自分に親指を向けてのアピールが半端ないです。

 わかった。わかりましたから、そのしたり顔やめてください。


「でもどうやって師匠の居どころか?」

「んー? あー……そこは秘密♡って言いたいところだが、まあ、ペリードの手紙に書いてあったんだよ。ロゼの師匠がフィーティアから追われているらしいーってな」

「ああ、それで……」


 ユーリさん経由で『どうも師匠はイナキア内を移動しているらしい』と分かり、アルバちゃんが向こうの支部に確認したところ、『監視対象』として師匠らしき人物がリストに挙がっていたそうです。


 そこからは、トップシークレット。


 組織内でも幹部しか知りえない情報のため、ペリードさんが知り合いの幹部の方に手紙を送りましたが、返ってきたのは断りの一文でした。


 ても、実はペリードさんからの定期連絡(文通)で師匠のことを知ったエルフィードおじさまが動いたのです。


「俺、あの組織にも顔利くから」


 と、本人が仰るように、アルバちゃんやペリードさんが探れないことでもエルフィードおじさまならそれを聞き出すことくらい容易なのです。


 なぜならフィーティア機関の現代表と、森族わたしたちは古い付き合いだから。


「はあ……だったら最初からおじさまに探してもらえればよかったですね」

「ええ? それは無理。めんどくさいし」


 これですよ。

 エルフィードおじさまは女性以外の案件にはこれ以上にもなく、ものぐさなのです。


「──で? さきほどリゾットがどうのと言っていたが、出直そうか?」

「はっ! そうでした! すみません、先生! すぐに用意するのでちょっと待っててください!」


 ばたばたとわたしは厨房へと駆けました。

 実はさきほどベタにはベタをと言いますか、ベッタベタな展開にも師匠の記憶が戻り、感極まったわたしは師匠に抱きつき泣いてしまったのです。


 その際、オレンジリゾットを作って差し上げようと思ってうんぬん……みたいな、すみません。

 自分でも覚えてないんですけど、まあ、いろいろと涙ながらに言いました(間違っても愛の告白とかはしていないですよ!)。


 それで、その流れで店に入り、ご飯をというわけです。


 ちなみにシャワーは速攻で浴びてきました。

 小汚い恰好で、しかも異臭を放つわたしに抱きつかれたというのに優しく頭を撫でてくれた師匠には感謝というか、申し訳なさでいっぱいです。


 食事の準備をしていると、ノルさんがぴょこんと調理台の上に乗ってきました。

 そしてそのモフ口から落とさせるのは衝撃なる事実でした。


「なぁ、ロゼ。俺、豊穣祭ほうじょうさいのときにあの青年のこと見たぞ」

「え! 本当ですか!?」

「うん、ほら俺の友達。銀髪の嬢ちゃんが連れてたやつだわ。そんときとは全然雰囲気違うが……間違いねぇよ。あの男だ」

「……」


 はあ? ですよ。


「それ、はやく言ってくださいよ。なんでちゃんと報告しないんですか」

「ええ……俺の交友関係把握したいとかちょっと重い……」


 そうじゃねぇですよ。

 豊穣祭って言ったら春ですよ、春。

 その時ノルさんが言ってくれれば、もっと早く見つかったかもしれないのに。


 やれやれとため息をつくノルさんに、『こっちのほうがやれやれですよ』と思いながらもわたしはふと気が付きます。


「あ、ソフィアさんが行っていたお父さんの話……」


 ソフィアさんのお兄さんことジャンさんのお店(ドーナツ屋さん)に現れた銀髪少女。

 その連れらしき、星の首飾りをかけた白髪の青年。

 ノルさんの話が本当なら、それも師匠で間違いないでしょう。


「すごい。見事にすべてが繋がっている……」

「だな。お前みんなに感謝しろよ? もちろん俺にもな」


 言われずとも分かっています。

 ノルさんはともかく、みなさんのおかげで師匠に会えたのです。

 今度お礼の宴を開かなければ。

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