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氷の魔女の料理屋さん~最愛の師匠を探してモフモフな食堂を始めました!~  作者: 遠野イナバ
第十章『燃える!炎のリゾット』

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39 ハッピー☆サウィン!

「本日は試食会にお集まりいただき誠にありがとうございます。それでは、炎の焼きリゾット、です!」


 じゅうじゅうと熱をあげるステーキ用の鉄板。

 その上には丸く盛り付けられたリゾット。

 チーズをリゾットのまわりに流し入れ、そして仕上げに魔法で火をつければ──


「うぉっ!?」


 ボッ! と鉄板から火柱が立ち上ぼり、アルバちゃんの顔の前で揺れています。

 そうです。

 わたしが思いついたのは燃えるリゾット。


 ペリードさんのあの破壊的なチラシから着想を得ました。


 リゾットに火をつけたらどうだろうか?

 面白いんじゃないかなあ、と思ったわたしはあれこれ試行錯誤して、フランベという手法を用いて燃えるリゾットを実現しました。


 フランベ。


 白ワインをお肉にぶっかけて火をつけると『ボッ!』となるあれですね。


 いつも通りパピヨン亭の店主さんに教えていただいた調理法です。

 毎度のことながら頭が下がるばかりです。


 そんなわけで新メニューを考案したわたしはみなさん──アルバさん、ソフィアさん、サラさん、ユーリさん、リックくん一家をお招きして試食会を開きました。


 今日はリーゼの月(じゅういちがつ)一の日(ついたち)

 一日遅れましたが、収穫祭ハロウィンパーティーといきましょうか。


「じゃじゃーん! 今日はとくべつに奮発してローズ印の葡萄酒ワインを持ってきたわよ! さあ、みんな飲んで飲んでっ!」

「ジェシー……、飲めない人もいるから」


 ジェシカさんがキュポン! っとワインのコルクを開けて、みなさんのグラスに注いで回ります。

 あ、わたしはワイン飲めないのでジュースでお願いします。


「わたくしからはこちらを」


 ソフィアさんが箱からドーナツを取り出して配ります。

 わたしのお皿に置かれたクモの巣柄のドーナツ。

 ショコラ生地のドーナツに、白い線が描かれた季節感満載の一品です。


「収穫祭限定商品だそうですお姉様。今朝兄からもらってきました」

「え? まだ売っているんですか?」


 ですよね。

 サラさんが驚いています。

 季節ものとか当日過ぎたら即販売さげるでしょうに。ジャンさんも相変わらずですね。


「僕とサラからは、セリカおばあさまが作ったミートグラタンを持ってきました」


 ユーリさんがノルさん(彼は動物が苦手なんです)を見て震えながら取り分けてくださいました。


「じゃ、私はフルーツケーキ切るかな」


 アルバちゃんがバスケットの中から茶色いフルーツケーキを取り出して包丁を入れます。

 ススッと見事な手つき。全員にお皿が行き届いたあたりでアルバちゃんが言います。


「中に入ってるコインを引き当てたやつは願いがひとつ叶うそうだ」

「願いが、ですか?」

「そういう占いだよ。ユーハルドじゃあ伝統的な菓子だって、これ使ったメガネの兄ちゃんが言ってた」


 アルバちゃんの話では、うちにくる前に手土産を探していたら町でペリードさんとばったり会ったそうです。

 それで一緒にケーキを作ろうという話になったのだとか。


 いちおう彼のことも招待したんですけどね。

 お店がオープン前ということもありますから、いろいろとお忙しいようです。


「ちなみにコインの代わりにお守り(アミュレット)が入っている。私からのプレゼントな」


 アミュレット!

 アルバちゃんが作ったものならご利益がありそうです。

 当たるといいなあ、とわたしがケーキを食べ進めていると、なにやらコツンと硬いものが。

 フォークでぐりぐりとケーキをえぐると出てきたのは指輪でした。


「お、当たりだな。おめでとう。それ、守護のまじないかかってるから、一回くらいなら死にかけてもなんとかなるぜ」

「そんな状況に陥ることが無いよう切に祈っています」


 指輪を水で洗うと綺麗な銀色が顔を出しました。

 輪っかの内側に彫られたまじないの言葉。

 たしかに厄災を弾く祈文きぶんがつづられています。


「貸して」


 胸の前に手のひらを出されてその上に指輪を乗せます。

 すると、アルバちゃんがわたしの左手を取って、スッと中指にはめました。

 一瞬薬指に向かうのかと思ってどぎまぎしたわたしです。


 アルバちゃんいわく、左の中指は『協調性と人間関係の向上』。

 なるほど。

 わたしに足りないスキルを補ってくれるということですね!

 自分で言っていて悲しくなりました。


「おねえちゃんいいなー」


 リックくんがちょっと拗ねたような顔でわたしの指をのぞきこみました。

 そうでした。

 こういうとき大人は遠慮して、子供に当たりを譲るものでした。

 しまった。

 いまからでは遅いのかもしれませんが、せめてこの指輪を──と私が外そうすると、


「もちろん、お守り(アミュレット)は全員分あるぜ」


 そう言ってアルバちゃんは守護札を配りました。

 アタリの人には指輪を。

 ハズレの人にも同じ加護を持つ守護札を。


 さすがは気遣いの出来る女、アルバちゃんです。

 わたしも見習わなければ。

 リックくんが「わーい!」と喜んでいます。


「で? あんたは何を願うんだ?」


 アルバちゃんが聞いてきます。

 そんなのもちろん決まっています。


 ──どうか師匠に会えますように。


 まあ、みなさんの手前『誰もが笑って暮らせる世界』と答えておきましたけどね。


 Happyハッピー Halloweenハロウィン

収穫祭…10月31日に開催される秋の祭り。

ユーハルドではカボチャのランタンを玄関先に置いたり、仮想した子供たちにお菓子を配ったり。夜はいつもよりも豪華な食事を楽しみながら家族と過ごす行事です。

春の豊穣祭とは違い、比較的静かなお祭り。

(ちなみに旧暦では10/31~11/1は一年の終わりと始まりでした)

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