マグナス殿下の 失恋
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マグナス 視点
封印から帰還すると、俺たちは貴賓室に案内された。
レイラたちは国王に報告に行っているらしい。
疲れを癒してほしいと、数日の滞在許可も出ていたが
俺は、明日にはゾール国へ帰る事を告げた。
「いいのですか?このまま帰って」
フィンがわざとらしく聴いてくる。
「あーーーーー。ひとつも良くないが、これ以上レイラに張り付いている
アロイスを眺めている方が胃に穴が開く!」
なんでもっと早くレイラに出会えなかったんだ。
悔やんでも悔やみきれない。
だいたいアロイスよりも俺の方が少しだけ早くレイラに出会って
いたはずなのに!
第一王子であることに加え、見目も悪くない俺は。
幼少期からちやほやされ、きれいな令嬢達にたくさん言寄られてっきた。
しかしこころを奪われたのはレイラが初めてだった。
吸い込まれるような薄紫の瞳、透き通るような白い肌
小さく咲くピンク色のバラの様な唇。
何より一緒にいて楽しかった。
デビュタントホールで飛びぬけて輝いていたあのプラチナブロンドの髪。
いっぱい練習しただろうダンス。
かわいかったな~。
この俺が手にできない者があるんだ……。
コンコン
ノックと共に侍女が招待状を持ってきた。
「明日のご出立でお忙しいとは存じますが、国王が是非、今晩の夕食を
殿下とご一緒したいとのことです」
封筒を開けると、封印に協力した者がみな出席すると書かれていた。
レイラも来るのか。
俺にチャンスはまだ残されているだろうか。
「承知した、フィンと共に出席すると伝えてくれ」
「畏まりました」
夕食の場所は、なんとレイラの住む離宮、ワイバーンとグリフィンの獣舎に
隣接した庭園を眺めることが出来るサロンで開かれ、シリウス達も
参加していい場所だと言うので先に連れて行ってもらう。
フィンと正装し会場を訪れると、そこにはパステルピンクのシンプルな
ドレスに、パールのチェーンでまとめられた、プラチナブロンドのふわふわした髪を片側に流し
俺の送ったイヤリングをつけたレイラがいた。
「お招きいただきありがとうございます」
「こちらこそ忙しい中参加してくれてありがとう、今回ゾール国に
頂いた恩は一生忘れない」
「国王陛下、過分なお言葉ありがとうございます、両国が共に
繁栄できるよう、今後もよろしくお願いします」
「さあさあ、今日は堅苦しいことは無し。
みんなでお話しできるように立食にしたけど大丈夫かしら?」
王妃殿下が声をかけてくれる。
みんなと歓談し、食事を食べているとレイラから声をかけてきた。
「マグナス。シリウス達は何を食べるの?何か上げても大丈夫かしら
少し撫でさせてもらってもいい?」
「野菜ならなんでも食べるよ、ルークは何が好きなの?」
「干し肉よ」
「一緒に上げに行ってもいいかな?」
「うん」
フィンに目配せすると、すかさずアロイスを引き留めてくれている。
俺はレイラと獣舎のある庭園に二人で下りた。
「レイラ。イヤリングつけてくれたんだ」
「うん。せっかく親友のマグナスが選んでくれたイヤリングだもの
つけたところを見せたくて」
屈託のない、満面の笑みだった。
親友……。
わかっていたさ。わかっていたが、はっきりとそういわれて
心臓が潰された。
そのあと獣舎でレイラと何を話したか覚えていない。
宴もお開きとなり、フィンと貴賓室へ戻る。
「マグナス殿下!俺がかわいい子紹介しますよ~
でも気持ちを伝えなくてほんとにいいんですか?」
フィンんがわざと大げさに言って俺の肩をがっしり掴んで揺らす。
「はあ~」
わかっていた。あの沼のほとりで弾き飛ばされたときに
レイラの気持ちははっきりとわかっていた。
「くそーーーーー。でも好きなんだ、だから親友でいる。レイラに
気持ちを伝えたら、きっと親友でもいられなくなる」
俺は大好きなレイラを一番の親友として守る事に決めた。
決めたんだ。
「フィン、アロイスとルシア王女殿下をゾール国とのコンタクト担当者に
任命するぞ、なんだその眼は!俺はちゃんと気持ちの整理をつけたぞ!」
「はいはい。わかりました」
次の日の朝早く、レイラに別れは告げないつもりでシリウスの獣舎に向かうと
シリウスの隣にはレイラがひとりで待っていた。
「マグナスおはよう」
「おはようレイラ」
「早くに帰っちゃうって聞いて……。これ」
小さな包みをレイラが俺に手渡す。
「あけていい?」
「うん。気に入ってくれるといいけど」
包みの中には、きれいな緑色のハンカチに薄紫の糸でペガサスの刺繍が縫われていた。
「これレイラが縫ったの?」
「うん。私こう見えて刺繍が得意なの。時間があまりなかったから
簡単な図案でごめんね」
「ありがとう。大事にする」
「お父様には、マグナスとフィンならいつでも来ていいって
許可を貰ったから、いつでも会いに来てね。
あと私もゾール国に行ってみたいな~」
「歓迎するよ。また手紙も書く」
「マグナス殿下、そろそろ」
いつの間にかフィンが後ろに控えていた。
「レイラじゃあ。またね」
「うんマグナス、ずっと私の親友でいてください」
あの日とは逆に、レイラが俺に手を差し出した。
「うん。一番の親友だ」
俺はレイラの手を取り強く握った。
そして俺の初恋は終わりを告げた。
んーー。マグナスにいい人が現れますように。




