7 芋 ✕ 芋
遅れた理由 : overwatch&limbus
大会の5日前。
「基本、アタシらの作戦は生存第一で、やるなら漁夫よ」
アマネは僕のコーチングをしている最中、突然そう言い出した。
「うん。わかってる」
さすがにそれぐらいは僕も分かる。
「正面で戦闘していいのは、初動か最終だけ」
「はいはい」
戦うなってことだな。
「移動は遅めだけど、エリアに追われないぐらい。エリア外のダメージと、敵に挟まれるのが最悪だからね」
いつも通りにやれ。
要するにそういう内容なのだが、僕は少しだけ疑問が浮かぶ。
「序盤から移動する必要はあるのかな? 僕のメディックはスキルで回復できるから、最初の低いダメージぐらいなら無視できるけど」
上級者に意見するのは、僕自身なんだと思わないでもないが……
『考えろ』。これがアマネに教えられたことの一つでもある。
「それはキルを取りたいから。漁夫するにも、戦地から遠すぎると無理だからよ。安置外なんて誰もいないじゃない」
「確かにそうだな」
エリアの外は誰もいないから。
その時の僕はなにも思わなかったけど、裏を返せば……
【ダメージエリアの収縮が完了しました】
そして場面は戻る。
あれから5分ほど経ったのに、未だ僕たち一行は、円状に狭まるエリアの外にいた。
「おっ。一番右の建物に敵がいるぞ」
僕はスコープ越しに、中央の街を覗いていた。
「狙ってみるわ」
アマネも同様にスナイパーを構えている。
距離は大体、ゲーム内で150メートルぐらいだろう。
ぱきゅん……ぱきゅんと、ゲーム特有の軽い音で弾が飛ぶ。
弾道は弧のように曲がり、ゆっくりと敵に向かう。
残念だけど、僕に制御なんてできるはずもないから、見当違いのところに着弾した。
「うーん。なんでこう当たらないかなぁ……」
「アタシも無理。無理ゲーよ、こんなの」
アマネは何発か当てているけど、やっぱり難しいらしく、倒したりはできていない。
「アタシの残弾数はまだまだあるから、欲しかったら言ってよね」
「おーけい。ワンチャン狙っていこう」
僕は回復フィールドを生成しながら、こんな行為をずっとしていた。
意味があるかと問われたら、特にない。
あえて言うなら、嫌がらせで、暇つぶし。
ほぼないけど、なんか死ぬことを狙う。
「おっ。当たった」
マグレのヘッドショットで、体力の半分が消し飛んだ。
敵が慌てて逃げていく。これが堪らなく楽しい。
「フフフ……ナイスよ」
本来なら大会でこんな行為はできないのだけど、僕たちは序盤でキルをある程度稼いだ。
倒した2パーティ分、つまり6キル。
これは別に多いわけじゃないけど、これ以上のキルは必要ないと思えるぐらい。
それで僕たちは考えた。
『こうなればエリア外の安全圏で、もう1キルぐらい狙いつつ逃げておこう』
まあ当然、先に有利なポジションを抑えてもいいけど、他のパーティもそんなの分かっているだろうし。
リスクもあって悩みどころだったけど、確実に終盤に進むため、僕たちはこうした。
【あなたが『ドラゴンレディ』をキルしました】
「あっ」
適当に放った弾が、マグレで倒してしまった。
「いいわね! やっぱり芋スナは最高よ!」
【警告・ダメージエリアの収縮が始まります】
「ヨシ。アタシたちも本格的に動くわよ!」
「なんだか、緊張するなぁ」
2度目の警告。
そろそろ狩れるような雑魚は蹴散らされて、残るのは強者だけだろう。
僕たちにとって、本当の戦いは今からだ。
試合は後半戦に続く―――――
これからだENDみたいだけど普通に続きます




