5 戦闘準備
それから1週間、2週間と、あっという間に時は流れ。
大会まで―――残り1時間。
ログインして、僕はまず茶色の地味なスキンに着替えた。
それから射撃場でウォーミングアップをしていると、同じような格好でアマネが入ってきた。
適当に武器を拾って、俺に近づいて来た。
「カイト、分かってるわよね? 正面で戦うのは愚策よ」
アマネの忠告は、もはや耳にタコができるぐらい聞いた。
「わかってる。勝てばいいんだろ」
「理解できてるならいいわ」
残り5分。
射撃中、クラスメイトからいくつかのメッセージが飛んできた。
『がんばれよ』『お前なら勝てる』『応援してるぞ』
一人を除いて基本的に、肯定するようなものばかり。
ありがたかった……けど。
たぶん皆そろって、僕が本気で勝てるとは思っていないだろう。
そういう空気感みたいなものが、伝わってきた。
「クソが。見返してやるよ」
「そんな力まないでよ。アタシがいるし、所詮は学校内のお遊び大会。負けるはずがないわ」
アマネは僕の緊張をほぐすためか、軽口を飛ばしてくる。
とはいえ、気分はそう変わりそうにない。
画面を見ると、ぞろぞろとメンバーがそろっていく。
これから戦う相手だと考えると、どうしても意識してしまう。
その中には、当然だがリョウジの名前もある。
「でも一戦だけのクソルールだから、雑魚死だけはしないでよ。キルのポイントを加味しても1位だったら、余裕で抜けられるから」
「おっけい、おっけい」
全パーティの準備が完了したとの通知が届き、間もなく待機画面となった。
「いくわよ」
「よっしゃあ。勝つぞ!」
≪≪ーー対戦開始ーー≫≫
今大会での僕たちの構成は、アマネが高機動の忍者で、僕が回復のメディック。
いつも使っているキャラだった。
やっぱり、使い慣れたキャラで行動するのが一番だという判断だ。
マップを開くと、飛行機は下から中央を縦断する軌道を取るらしい。
「降りる場所、分かってるわよね!?」
僕たちが降りる場所は、完全に固定してある。
「わかってる」
それはマップの最西端にポツンとある小さな町。
ゲーム上では名前のある地域だが、物資は乏しく、明らかに弱い。
「ジャンプは任せて頂戴」
アマネの降下は、僕とは違って正確だ。
届くか微妙な高度を維持しながら、誰よりも早くたどり着いた。
「もう1パーティいるみたい」
アマネも把握しているだろうけど、報告しておく。
僕たちが降りた町の形は、細長い建物が円状になっていて、その中央の広場にアイテムボックスがある単純な地形。
僕たちは東側に降り、敵は全員で西側に降りたようだった。
「どうする? 逃げるべきか……」
不利な僕たちが無理に戦う必要もないから、撤退しようと思ったのだけど―――
【アマネが『暗黒の暗黒』をキルしました】
そんな通知が流れた。
「これでイーブンね。僻地でコソコソやるなんて、雑魚の証拠!」
どうやらアマネはショットガンを拾ってすぐ、単身で突っ込んだようだ。
僕も即カバーをしに行こうと、駆けた。
「ハハァ! 勝とうなんて一兆年早いのよ!」
【アマネが『たまご味のニワトリ』をキルしました】
【アマネが『ああああああ』をキルしました】
でも、アマネには必要なかった。
「強いな、ナイス」
「アタシにかかれば、こんなのイージーよ」
さすがトップ500と言ったところだ。
「あっでも、カイトは真似したらダメよ。アンタは雑魚なんだし、そもそも……相手の武器がそろってない今だから戦っただけ」
「うん。わかってる」
真似のしようも、そんな肝の太さすら持ち合わせていない。
まあそれはさておき、次に気にしないといけないこともある。
「別パ来るかな?」
戦闘で弱った僕たちを、漁夫の利で殺そうとするパーティだ。
「こればっかりは……アタシでも、わかんないわね」
序盤だから来ないだろうと思うが、警戒するに越したことはない。
攻撃的なプレイヤーなら、場合によってはここに来る可能性もある。
「僕は……来る気がするな」
僕はなんとなく、そう感じた。
「そう。じゃあ、アタシもこっち漁ったら向かうわ」




