4 勝つさ
ちょいテンポ悪いけど、許して。
大会に出ると決意してから、1週間後。
僕は今日も、言われた通りの射撃練習をする。
最低1時間と決められていたが、毎日6時間はやっている。
今やアマネの指示で、動いているボットも撃つようになった。
「アタシから見ても、頑張りすぎ。もっと肩の力抜いたら?」
画面共有していると、アマネからそう言われた。
「僕、勝ちたいんだ」
どうしても、それだけは本当だ。
ノイズキャンセル越しに鼻で笑われた気もするけど、どうでもいい。
「あっそ。じゃあカジュアルいこうか」
「本当!?」
別に特別なことではないが、認められたような気がした。
確かに、1週間前よりもエイムは安定して、グレネードも上手くなった。
期限もあるし、そろそろ本格的に練習をする時なのだろう。
「あっ、アタシはパーティには入らないから。野良で行きなさいよ。アタシが一人で無双しても意味ないしね」
「それはそうだね」
僕はマッチ開始のボタンを押した。
≪≪ーー対戦開始ーー≫≫
選んだキャラクターはいつも通りメディック。回復と蘇生を使える後方支援のキャラだ。
「どうせならど真ん中、激戦区に行きなさいよ」
「言われなくても、そのつもり」
都合のいいことに、僕に目的地を決められる権利が渡った。
すべてのパーティは、マップを横断する同じ飛行機から飛び降りる。
バトロワのルールは、収縮するダメージの壁から逃げながら殺し合い、最後の生存者になれば勝ちとなる。
ダメージの壁はランダムに小さくなるから、当然移動しやすいマップの中央が激戦区だ。
飛び降りるのは早ければ早いほど良い。物資は有限だから。
今回の僕の飛び降りは早かった。
他のパーティがたどり着くよりも先に街へ着き、屋根から物資を漁ることに成功した。
しかし、失うものがないカジュアルでは、敵はお構いなしで同じ建物にやってくる。
僕の持ち物はアサルトライフルだけ。
でも、十分。
遅れて屋根にたどり着いた敵は、力士のような見た目のキャラクター。
他のキャラより硬いが、ヒットボックスはデカいという特性をもつ。
相手は丸腰。僕は落ち着いて照準を定め、撃つ。
敵は蛇行して回避を試みるが、焦る必要はない。
落ち着き、一発、二発と弾を当て、敵が何も行動することができない瀕死状態にできた。
「やったぁ!」
「おー。別に凄くないけど、やるじゃん」
なんの変哲もないダウンだが、今までのエイムでは間違いなく当てることはできなかった。
確かな成長を、僕は実感していた。
敵は瀕死状態になった際に屋上から落下したらしい。
下を覗いてもいないので、もう一度この建物に入ったらしい。
逃げられる前に、僕は急いで一階に降り、近くの扉を開ける。
そして、構えられた敵のショットガン。
「あっオワッタ」
「クリアリング不足ね」
≪ーーあなたは倒されましたーー≫
僕は死んだ。
どうやら他の仲間は、やられていたらしい。
「まぁ、次。次だよ」
≪≪ーー対戦開始ーー≫≫
今回は味方も強く、建物の戦闘に勝つことができた。
しかし、思ったより物資が少ない。
このままではジリ貧なので、思い切って別の建物に移動した。
「たぶん、大丈夫でしょう」
「ちょっと甘いわね」
その言葉は正しく、屋上にスナイパーが……
≪ーーあなたは倒されましたーー≫
僕は死んだ。
戦地で平地を歩くのは、ダメだったらしい。
「うん。次だ」
≪≪ーー対戦開始ーー≫≫
≪ーーあなたは倒されましたーー≫
僕は死んだ。
普通に撃ち負けたのだ。
「まぁ、こんなもんよね」
「……」
≪≪ーー対戦開始ーー≫≫
≪ーーあなたは倒されましたーー≫
そうして2時間後……
「僕さ、勝てる気がしない」
「エイムは悪くなかったわよ。でも、この程度じゃ勝てるわけがない」
アマネは知ってたとばかりの言いぐさだった。
僕も心の底では分かってた。
けどさ、勝てるんじゃないかなって、そういう気持ちもあった。
でも、自惚れだった。
「カイトってさ。立ち回りが弱いのよね。爪が甘いのよ、警戒心が足りない」
アマネは真面目なトーンで、僕の欠点を並べだした。
「でも、勝てるって。勝てるんじゃないかって……」
「無理よ。最初も言ったけどね。断言するわ。1か月じゃ足元にすら及ばないわよ」
毎日6時間やったって、絶対に届かないほど遠い壁なのか……
「落ち込んでるらしいけど。カイトがやってるのは強者の動きなのよ。アタシみたいな強者の動き」
小さくだけど、アマネのため息が分かった。
「カイトには身をもって分かって欲しかった。あなたはカスだってことを。対戦相手は何千時間と練習した化物なの。1年後ならわからないけど、正面じゃ勝てっこないのよ」
「……そうだな」
あぁ分かったよ。
僕は弱者だってことが、今ハッキリと分かった。
認めよう。
まともに撃ち合って、勝てないこと。
「じゃあ……どうしたらいいんだ」
こう言うってことは、何かしらの案があるのだろう?
「フフフ」と、アマネが不敵に笑った。
「基礎もできたし。教えてあげるわ。アタシが強くなるため……勝つために身につけた…誰も褒めてくれないような、勝つためだけの戦術をね」




