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4/6

4 勝つさ

ちょいテンポ悪いけど、許して。

 大会に出ると決意してから、1週間後。


 僕は今日も、言われた通りの射撃練習をする。

 最低1時間と決められていたが、毎日6時間はやっている。

 今やアマネの指示で、動いているボットも撃つようになった。


「アタシから見ても、頑張りすぎ。もっと肩の力抜いたら?」


 画面共有していると、アマネからそう言われた。


「僕、勝ちたいんだ」


 どうしても、それだけは本当だ。

 ノイズキャンセル越しに鼻で笑われた気もするけど、どうでもいい。


「あっそ。じゃあカジュアルいこうか」

「本当!?」


 別に特別なことではないが、認められたような気がした。

 確かに、1週間前よりもエイムは安定して、グレネードも上手くなった。

 期限もあるし、そろそろ本格的に練習をする時なのだろう。


「あっ、アタシはパーティには入らないから。野良で行きなさいよ。アタシが一人で無双しても意味ないしね」

「それはそうだね」


 僕はマッチ開始のボタンを押した。


  ≪≪ーー対戦開始ーー≫≫


 選んだキャラクターはいつも通りメディック。回復と蘇生を使える後方支援のキャラだ。


「どうせならど真ん中、激戦区に行きなさいよ」

「言われなくても、そのつもり」


 都合のいいことに、僕に目的地を決められる権利が渡った。


 すべてのパーティは、マップを横断する同じ飛行機から飛び降りる。

 バトロワのルールは、収縮するダメージの壁から逃げながら殺し合い、最後の生存者になれば勝ちとなる。

 ダメージの壁はランダムに小さくなるから、当然移動しやすいマップの中央が激戦区だ。


 飛び降りるのは早ければ早いほど良い。物資は有限だから。


 今回の僕の飛び降りは早かった。

 他のパーティがたどり着くよりも先に街へ着き、屋根から物資を漁ることに成功した。


 しかし、失うものがないカジュアルでは、敵はお構いなしで同じ建物にやってくる。

 僕の持ち物はアサルトライフルだけ。

 でも、十分。


 遅れて屋根にたどり着いた敵は、力士のような見た目のキャラクター。

 他のキャラより硬いが、ヒットボックスはデカいという特性をもつ。


 相手は丸腰。僕は落ち着いて照準を定め、撃つ。

 敵は蛇行して回避を試みるが、焦る必要はない。

 落ち着き、一発、二発と弾を当て、敵が何も行動することができない瀕死ダウン状態にできた。


「やったぁ!」

「おー。別に凄くないけど、やるじゃん」


 なんの変哲もないダウンだが、今までのエイムでは間違いなく当てることはできなかった。

 確かな成長を、僕は実感していた。


 敵は瀕死ダウン状態になった際に屋上から落下したらしい。

 下を覗いてもいないので、もう一度この建物に入ったらしい。


 逃げられる前に、僕は急いで一階に降り、近くの扉を開ける。

 そして、構えられた敵のショットガン。


「あっオワッタ」

「クリアリング不足ね」


  ≪ーーあなたは倒されましたーー≫


 僕は死んだ。

 どうやら他の仲間は、やられていたらしい。


「まぁ、次。次だよ」


  ≪≪ーー対戦開始ーー≫≫


 今回は味方も強く、建物の戦闘に勝つことができた。

 しかし、思ったより物資が少ない。

 このままではジリ貧なので、思い切って別の建物に移動した。


「たぶん、大丈夫でしょう」

「ちょっと甘いわね」


 その言葉は正しく、屋上にスナイパーが……


  ≪ーーあなたは倒されましたーー≫


 僕は死んだ。

 戦地で平地を歩くのは、ダメだったらしい。


「うん。次だ」


  ≪≪ーー対戦開始ーー≫≫


  ≪ーーあなたは倒されましたーー≫


 僕は死んだ。

 普通に撃ち負けたのだ。


「まぁ、こんなもんよね」

「……」


  ≪≪ーー対戦開始ーー≫≫

  ≪ーーあなたは倒されましたーー≫


 そうして2時間後……


「僕さ、勝てる気がしない」

「エイムは悪くなかったわよ。でも、この程度じゃ勝てるわけがない」


 アマネは知ってたとばかりの言いぐさだった。


 僕も心の底では分かってた。

 けどさ、勝てるんじゃないかなって、そういう気持ちもあった。

 でも、自惚れだった。


「カイトってさ。立ち回りが弱いのよね。爪が甘いのよ、警戒心が足りない」


 アマネは真面目なトーンで、僕の欠点を並べだした。


「でも、勝てるって。勝てるんじゃないかって……」

「無理よ。最初も言ったけどね。断言するわ。1か月じゃ足元にすら及ばないわよ」


 毎日6時間やったって、絶対に届かないほど遠い壁なのか……


「落ち込んでるらしいけど。カイトがやってるのは強者の動きなのよ。アタシみたいな強者の動き」


 小さくだけど、アマネのため息が分かった。


「カイトには身をもって分かって欲しかった。あなたはカスだってことを。対戦相手は何千時間と練習した化物なの。1年後ならわからないけど、正面じゃ勝てっこないのよ」


「……そうだな」


 あぁ分かったよ。

 僕は弱者だってことが、今ハッキリと分かった。

 認めよう。

 まともに撃ち合って、勝てないこと。


「じゃあ……どうしたらいいんだ」


 こう言うってことは、何かしらの案があるのだろう?


「フフフ」と、アマネが不敵に笑った。


「基礎もできたし。教えてあげるわ。アタシが強くなるため……勝つために身につけた…誰も褒めてくれないような、勝つためだけの戦術をね」

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