3 勝つ方法
練習場に戻って来た僕は、アマネに尋ねる。
「本当に、コレでいいのかな?」
「ダメに決まってるじゃない。基本的に大会じゃ通用しないわよ」
アマネは笑って一蹴する。
「じゃあ、なんでこんなこと?」
「そりゃ、勝つための一例に決まってるじゃない。100回は言ってるけどね。勝てばいいのよ!勝てば」
アマネは忍者のアバターで、煽りエモートをしながら答える。
「そもそも今んとこ、アタシたちは2人なのよ!フツーの3人チームに勝てるわけないじゃない」
「まぁ、そうだけど…」
いや、なんか。
僕はてっきり、勝てる策とか練習法があるのかと…
「つ・ま・り。アタシが言いたいのは、不利な時にマトモに戦うのは馬鹿ってこと」
いや…うん、そうなんだけど。
正直、腑に落ちない。
そんな僕の弱気を見透かしたように、アマネは指先をビシッと刺した。
「カイトは勝ててない雑魚なんだから、まだプライドを持つべきじゃないの」
「うっ…」
そう言われると、グウの音も出ない。
「とりあえず、グレの練習をしなさい。あれは良かったわ。カイトの暴れ牛みたいなAIMよりは確実な方法よ」
「…あっ、はい」
確かにそうだ、僕が勝つためにはそのほうがいいのかもしれない。
「でも、AIM練習もしなさい!」
「どっち!?!?」
勝つためにはとか、AIMは無駄だとか、さっきまでの流れは何だったんだよ!
「マヌケじゃないから、わかってるわよ。移動してる的に当てるんじゃないの」
アマネは僕と同じアサルトを持ち、止まっている人型の的に弾を飛ばした。
「流石にこれなら、カイトでも出来るわよね。流石にね」
皮肉かよ。
そう思ったが、口には出さなかった。
「何の意味があるんだ…?」
「まぁ基礎練習よ。ちなみに、ある程度離れたところから撃って。最低、毎日一時間よ。慣れたら、真っすぐ横に移動しながら撃つのがいいわ」
結局のところ何の意味があるかは不明で、はぐらかされてしまった。
「うん。だいたいわかった」
けれども、とりあえずうなずく。
少なくとも、自分よりは強い人の助言だから。
「あと、許可するまで試合に潜るの禁止」
「え?」
次の日。
教室の黒板に表示されてるのは、格ゲー攻略やらなんやら。
興味ないけど、まぁするしかない。
義務教育でやるゲームなんてこんなもんだ。
個人的に、囲碁やらダーツの授業よりは楽しい。
しばらくして、終了のチャイムが鳴って、授業の表示は一斉に消える。
今日の授業は終わりだ。
「お~いゴールド3になった君」
放課後になった途端に、ウキウキで煽りを入れてくる同級生が一人いた。
「雑魚でクカなんよ!雑魚でクカなんよ!」
うさぎの着ぐるみのようなアバターを着込んで(時々バ美肉)、僕の周りをぴょんぴょんと跳ねまわる。
コイツの名はリョウジ。
言うまでもないがカスだ、むしろ模範的FPSプレイヤーなのかもしれない。
「俺、ついにマスター到達。ちな、全体に1%な模様。ゴールドと差がついてしまった模様。草なんよ」
正直、終わってると思う。
プレイはともかく、煽りは一級品で、どこまでがロールプレイなのかも不明。
当然、僕からコイツに必要な礼儀などない。
「死ねよ」
「おっキレてて草なんですわ。ピキってて草なんよ。弱きものって感じ~」
僕は思った。
『マジで死ね』
「大会出れなくて大変、哀れゴールド君。無理、無駄、無能って感じ」
コイツに対して、大会に出るなんて情報はもちろん伝えてない。
当たり前だ、煽られるのが目に見えてる。
「速報。俺氏、ゴールドとは違う模様。人望って奴っス。貴方にはないけど、ここテストに出ます」
…ごめん。やっぱ無理だ。
普通に腹立つ。
「は?出るけど。無知なのはお前もだよ」
リョウジのぴょんぴょんと、やかましい動きがビタッと止まった。
動揺しているのは目に見えて明らかだった。
「え。マジ?」
むっちゃ素で返された。
ちょっと面白い。
「うん。マジ」
しかし、すぐにリョウジの様子は戻る。
「…あっそ。じゃあ、敗者に相応しいエンディングを見せてやるよおお!!」
「なんだコイツ」
なぜか遠ざかっていくリョウジに困惑しつつ、中指を立ててやった。




