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3/5

3 勝つ方法


 練習場に戻って来た僕は、アマネに尋ねる。


「本当に、コレでいいのかな?」

「ダメに決まってるじゃない。基本的に大会じゃ通用しないわよ」


 アマネは笑って一蹴する。


「じゃあ、なんでこんなこと?」

「そりゃ、勝つための一例に決まってるじゃない。100回は言ってるけどね。勝てばいいのよ!勝てば」


 アマネは忍者のアバターで、煽りエモートをしながら答える。


「そもそも今んとこ、アタシたちは2人なのよ!フツーの3人チームに勝てるわけないじゃない」

「まぁ、そうだけど…」


 いや、なんか。

 僕はてっきり、勝てる策とか練習法があるのかと…


「つ・ま・り。アタシが言いたいのは、不利な時にマトモに戦うのは馬鹿ってこと」


 いや…うん、そうなんだけど。

 正直、腑に落ちない。


 そんな僕の弱気を見透かしたように、アマネは指先をビシッと刺した。


「カイトは勝ててない雑魚なんだから、まだプライドを持つべきじゃないの」

「うっ…」


 そう言われると、グウの音も出ない。


「とりあえず、グレの練習をしなさい。あれは良かったわ。カイトの暴れ牛みたいなAIMよりは確実な方法よ」

「…あっ、はい」


 確かにそうだ、僕が勝つためにはそのほうがいいのかもしれない。


「でも、AIM練習もしなさい!」

「どっち!?!?」


 勝つためにはとか、AIMは無駄だとか、さっきまでの流れは何だったんだよ!


「マヌケじゃないから、わかってるわよ。移動してる的に当てるんじゃないの」


 アマネは僕と同じアサルトを持ち、止まっている人型の的に弾を飛ばした。


「流石にこれなら、カイトでも出来るわよね。流石にね」


 皮肉かよ。

 そう思ったが、口には出さなかった。


「何の意味があるんだ…?」

「まぁ基礎練習よ。ちなみに、ある程度離れたところから撃って。最低、毎日一時間よ。慣れたら、真っすぐ横に移動しながら撃つのがいいわ」


 結局のところ何の意味があるかは不明で、はぐらかされてしまった。


「うん。だいたいわかった」


 けれども、とりあえずうなずく。

 少なくとも、自分よりは強い人の助言だから。


「あと、許可するまで試合に潜るの禁止」

「え?」



 次の日。



 教室の黒板に表示されてるのは、格ゲー攻略やらなんやら。

 興味ないけど、まぁするしかない。

 義務教育でやるゲームなんてこんなもんだ。

 個人的に、囲碁やらダーツの授業よりは楽しい。


 しばらくして、終了のチャイムが鳴って、授業の表示は一斉に消える。

 今日の授業は終わりだ。


「お~いゴールド3になった君」


 放課後になった途端に、ウキウキで煽りを入れてくる同級生が一人いた。


「雑魚でクカなんよ!雑魚でクカなんよ!」


 うさぎの着ぐるみのようなアバターを着込んで(時々バ美肉)、僕の周りをぴょんぴょんと跳ねまわる。

 コイツの名はリョウジ。

 言うまでもないがカスだ、むしろ模範的FPSプレイヤーなのかもしれない。


「俺、ついにマスター到達。ちな、全体に1%な模様。ゴールドと差がついてしまった模様。草なんよ」


 正直、終わってると思う。

 プレイはともかく、煽りは一級品で、どこまでがロールプレイなのかも不明。

 当然、僕からコイツに必要な礼儀などない。


「死ねよ」

「おっキレてて草なんですわ。ピキってて草なんよ。弱きものって感じ~」


 僕は思った。

『マジで死ね』


「大会出れなくて大変、哀れゴールド君。無理、無駄、無能って感じ」


 コイツに対して、大会に出るなんて情報はもちろん伝えてない。

 当たり前だ、煽られるのが目に見えてる。


「速報。俺氏、ゴールドとは違う模様。人望って奴っス。貴方にはないけど、ここテストに出ます」


 …ごめん。やっぱ無理だ。

 普通に腹立つ。


「は?出るけど。無知なのはお前もだよ」


 リョウジのぴょんぴょんと、やかましい動きがビタッと止まった。

 動揺しているのは目に見えて明らかだった。


「え。マジ?」


 むっちゃ素で返された。

 ちょっと面白い。


「うん。マジ」


 しかし、すぐにリョウジの様子は戻る。


「…あっそ。じゃあ、敗者に相応しいエンディングを見せてやるよおお!!」

「なんだコイツ」


 なぜか遠ざかっていくリョウジに困惑しつつ、中指を立ててやった。

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