2 レジェロワ
場所は変わって、開けた練習場。
アタッチメントなしのアサルトを手にして、左右に移動する人型の的に弾を撃つ。
が、当たらない。
むしろ的の周りをわざと狙ってるんじゃないか、自分でもそう思えるほどだ。
「カイトって…マジで才能ないのよね」
視界を共有していたアマネから、呆れた声が飛んでくる。
「…言われなくても、自分でもわかってるよ」
悪気がないのは分かってるけど、やっぱりムカつく。
「それで…僕のエイムはどうやったら強くなるかな?」
まぁそれでもよかった。
実際にコーチングを頼んだのは僕だし、強くなるためだと考えたら多少は許せる。
「ん~~無理!」
「え?」
僕の期待を容赦なく切り捨てるアマネ。
「無理っていうか、1か月じゃ難しいわね」
つまり時間さえあれば、なんとかなるってことだった。
それは、それで嬉しかった。
…けどさ、それじゃいけないんだ。
「じゃあ……大会はどうやって勝つんだ?」
僕がそう言うと、微かに笑う声が聞こえた。
「このゲームはバトロワよ?馬鹿正直に打ち合う必要なんてないの」
「…どういうことだってばよ」
困惑はよそに、アマネはどんどんと話を進める。
「勝ちゃいいのよ、勝てば。とりあえず、アンランクに行くわよ」
僕に有無を言わさず、アマネのホログラムが目の前に現れ、マッチ待機と表示される。
≪≪ーー対戦開始ーー≫≫
このゲームは33組の、3人チームが一つのマップで殺しあうヒーローシューター。
名を『レジェンドロワイヤル』。
略して『レジェロワ』。
マッチはすでに20分経っていた。
あちこちで響く銃声、カジュアルなのもあって減っていく人数。
キルに血走った馬鹿どもが、今に今にと、じゃんじゃか殺しあっている。
アマネが使っているキャラクターは忍者。高速移動できるスキルと、上下に移動するウルトを持つ、キル量産型のキャラだ。
僕が使うのはメディック、高速回復のパッシブ、持続回復をするスキルと、前方にシールドを出しながら蘇生が出来る後方支援キャラだ。
現在、野良は入れずに、2人だけでプレイしている。
二人だから若干バランスは悪いが、アマネがキルをして、僕がサポートする典型的な構成だ。
そう……思っていた。
僕は呟く。
「これって…グリッチじゃあ…」
ちょうど目下の荒野で戦いあう数多のパーティ。
僕たちは崖の上の、いわゆるエリア外判定ギリギリの場所にいた。
「だいじょうぶよ。大会でプロも使ってたし、BANされた人は見たことないわ」
そこは通常では入れない場所。
しかし、忍者が設置するトランポリンのウルトなら昇れるのだ。
「これ、いいのか?強くなるのに関係あるのか?」
「何度も言わせないで、勝てばいいのよ」
そう言っている間に減っていく銃声、僕たちを含め残っているパーティは残り4。
「準備は出来てるわよね?」
「一応、できてるけど…」
いいのだろうか?
そう思いながら、手に構えるグレネード。
いや、手元だけでなくバッグの中身まで、ぎっしりとグレネードだ。
右上に表示されている残りパーティの数が減る。
残り…3……2。
「投げるわ、投げて!」
「う、うん」
合図が出ると僕はアマネと共に、相手チームにグレを投げ出した。
下の地形は、遮蔽の少ない岩場。
漁夫の利なのもあって、当然、逃げ場などあるはずもなく…
相手のパーティは蜘蛛の子を散らすように、バラバラとなって逃げるしかない。
僕の画面にキルの表示。
どれかが偶然当たったのだろう。
それでも、ずっとハイドしていた僕のバックには、グレがまだまだある。
アマネは「フフフ…」と、不気味な声で笑ってスナイパーを構えた。
グレネードは、爆発まで音がそれほど目立たない。それに方角もパッと分かるものじゃないから、僕らの位置はバレてない。
相手は隠れることもなく、全身をさらけ出している。
ソイツはキョロキョロして、そのうちコッチ気づいたけど、もう遅い。
アマネから、一発の銃声。
瞬く間に、追加のマルチキルが表示された。
≪≪ーーCHAMPIONーー≫≫
僕の画面にチャンピオンと流れる。
つまり、1位である。
「あははは!最後の一人だったみたいだね!」
「あ、そうだね」
アマネは豪快に笑う。
「こ、これでいいのか…?」
僕はなんだかアマネが頼もしいような、恐ろしいような気さえしてきた。




