第18話 拠点の小屋
「よし、これくらいの大きさでいいか」
『はい。下の部分は固くてあまりおいしくないので、それくらいで問題ありません』
アイが指差した地面を掘っていくとひょっこりとしたタケノコが姿を現した。
ちなみに地面を掘る時も昨日とった竹を斜めに切って作った竹スコップを使っている。本当に竹はなんにでも使えて便利だ。思わず竹を信仰する宗教があったら入信してしまいそうなくらいである。
『皮をむいてから川の水でしっかりと洗ってください。先端の部分はアクや苦みが少ないので生食することが可能です』
「へえ~タケノコって生で食べられるんだ」
『新鮮かつ先端の部分に限ります。ただし、あまり食べ過ぎると身体にも良くないので少量にしておいたほうがよいです。収穫してしばらくしたものは茹でてアク抜きをしてから食べた方が良いでしょう』
まだ細くて小さなタケノコを2本と竹を数本確保して拠点へと戻り、アイの指示に従って、タケノコを川の水で洗う。
前世のスーパーで売っていたタケノコよりも白っぽい感じで、アイの言っていた通り生でもそんなに固くなさそうだ。
「さて、どんな味がするのかな」
石のナイフで切ってもいいのだが、ここは豪快にかぶりつく。この無人島で綺麗にスライスして皿に盛りつけることなんて不要である。
「おっ、こいつは歯ごたえがよくていけるぜ!」
「うん、思ったよりもうまい。茹でて食べるよりも風味が感じられるな!」
生のタケノコに直接かぶりつくと、シャキッと弾けるような歯応えが響き、口の中に瑞々しい甘みが広がった。ほのかな青草の香りと、微かに感じる土の風味が、まるで竹林そのものを味わっているようにも感じられる。
アクはほとんどなく、朝採れたばかりの新鮮さが舌の上で生き生きと弾けた。本当に青々とした味と力強さを感じられて全然いけるな。朝採れたてのタケノコを食べられるなんて無人島にいるのに贅沢に感じられた。
「無人島だけれど、アイのおかげで食料はなんとかなりそうで助かったよ」
「ああ。いろんなことに詳しいし、アイがいてくれてすげえ助かるぜ」
『……ありがとうございます。今日はやる事がたくさんありますので頑張りましょう』
俺とルナがアイにお礼を言うと少し遅れて反応があった。もしかしたらAIも少し照れているのかもしれない。
さあ、アイの言う通り今日もやることはたくさんあるぞ。
「ふう~結構な重労働だ……」
『マスター、頑張ってください』
「これが俺たちの家になるんだから頑張らねえとな」
「そうだな、しっかりとした拠点を作らないと」
ルナが切り倒した竹を川傍の拠点にまで一緒に運ぶ。こればかりは自分たちの力で頑張るしかない。
ろ過装置を通して煮沸消毒をした飲み水は今のところ問題なく、無人島での第一目標である水の確保はできた。そのため今日は拠点を作っていく。
いつまでいることになるか分からないこの島だが、ここで生活していく限りは使う物なのでしっかりとした拠点を作っていきたい。
「まずは支柱になる2本を地面に埋めていくんだな」
『はい。もう片側は崖壁を削って溝を掘り、そちらにはめ込む形式でいきましょう』
無人島での拠点と言えばログハウスのような丸太で作った家を想像するが、俺とルナだけではそこまで本格的な小屋を建てるのは時間がかかるため、まずは竹で四方を囲う小屋のような拠点を作ることになった。バンブーハウスとでも言うのかな。
まずは昨日作った地面に敷いた竹の床の片端に支柱となる2本の太い竹を埋める。この竹はルナの力でも切り倒すのには苦労していたからな。支柱とするにはこれくらいの太さでなければならないようだ。
今いる拠点は少し高い場所にあり、小さな崖に面している。この2本の支柱と壁に竹で作った屋根を取り付ける。
「よし、こんなもんか」
「うまく支柱の間に一本竹を挟めたぜ」
『はい。大丈夫だと思いますが、竹の周りに大きな石を置いて動かないように固定してください』
支柱となる場所に穴を掘って太い竹を立てて固定する。そして切り込みを入れた支柱の竹に竹を挟みつつ立てた。簡単に言うと大きな物干し竿が立っている状態だ。ここに屋根となる竹をのせていく。
アイが拠点の設計図を作ってくれているので、俺たちはそれに従うだけでいい。今のAIはそんなことまでできるのだからすごいよな。
『屋根の部分は半分に割った竹を交互に重ねていくことによって雨水を通さないようにできます』
「なるほど、さすがアイだ」
半分に割った竹の節を取り除いて交互に挟んでいくと上の部分の凸から流れた雨水が凹部分の竹へ入り、そこから傾斜をつければ雨水がすべて流れ出る仕組みだ。これなら決して雨水を通さない屋根が簡単にできる。
同様に横の壁も竹で作り、屋根に立てかけるようにすれば横からの雨風を防げる。うん、思っていたよりも立派な拠点ができる予感がしてきたぞ。




