久々の異世界料理
そして夜。
リメイヴァを夕食に呼びに行ったリネアルーラは、彼を一目見て叫んだ。
「いやビジュ良ッッッ!!」
「び?」
意味不明な姉の叫びに、こてりと首を傾げるリメイヴァ。
今朝までは、ノクタリオンの幼少期の服を借りていて、どこか着られている感があったのだが……それが一変した。
白を基調とした碧のラインが入ったシャツと、ゆったりとした黒のズボン。
シンプルな色彩の中で、光を受けて煌めく金色の髪がよく映えていた。
しかも髪も整えてもらったらしく、傷んだところは切られていて、サイドの髪は後頭部でお団子でまとめられていた。
中性的な容姿も相まって、パッと見では男か女か迷うほどの美人さんだった。
「え、待って、めっちゃ美人……いや綺麗な顔してるなーとは思ってたんだけどね? さすがにここまでとは予想外というかぁ……」
「なんなんだ……??」
なにやら悶えている様子に困惑しているリメイヴァ。少し粗暴な口調だが、むしろギャップ萌えを狙えるとリネアルーラは確信した。
ある種の人間を狂わせる中性的な美貌。見た目からは想像できない、少し荒っぽい口調。
これはすなわち。
「変態に新たなる扉を開かせてしまう凶器……ッッ!!」
「頭でも打ったか?」
いっそ心配になるリメイヴァだった。
◇◇◇◇◇
「お」
「わぁ!」
「これは……」
二人が食堂に着くと、画期的な変化を遂げたリメイヴァに、シルヴェインや給仕のメイド、侍従が各々驚きを見せた。
男性陣は「かっこよくなったな」と我が子を見るような目をしているし、女性陣の目はハートになっている。
それにリネアルーラは自慢げに胸を張る。
「んふふふふっ。かぁっこいいでしょー?」
「確かにそうだが、何故お前が自慢げなんだ」
呆れた目のシルヴェインがドヤる姿にツッコミを入れ、さっさと座れと告げる。
席についてテーブルの上を見たリメイヴァは、見たことのない食べ物に目を見開いた。
「これは……?」
「よっくぞ聞いてくれたぁ!!」
今度こそ自分のことで胸を張ったリネアルーラが、じゃじゃーんと力作の料理を紹介する。
「どっかの遠い異国で大人気の、『唐揚げ』って料理でーすっ!」
そう、あの若い子達に人気の『唐揚げ』である。
リネアルーラは百周目の人生になってから、常々『ニホンのジャンクフードが食べたい!』と思っていた。
実は彼女、貴族のお綺麗な料理も好きだが、庶民的なジャンクフードの方が好みだった。
それに加えて、リメイヴァの痩せ具合。
ガリッガリな彼に、『食育しなきゃ!!』と使命感を抱いたリネアルーラは、今回こうして念願の料理を作ろうと思い立ったのだ。
そんな風にレッスンが終わって速攻で料理人に話を付け、料理人の血が疼くままに作ったのが、この唐揚げというわけである。
「でも実は味見はまだだったりする私です。長く作ってなかったんだけど大丈夫かな」
「は? 待て、お前王城に不確かのものを」
「まあ大丈夫でしょ。いっただっきまーす!」
「聞けよおいっ!?」
匂いという誘惑に耐えきれなかったリネアルーラが、一番にかぶりついた。
途端、キラキラとその目が輝き出す。
「んんんん〜〜っ!」
「ん、美味いな」
続いて躊躇いなく口に入れたシルヴェインが簡潔に感想を述べる。でしょでしょとリネアルーラはにこにこする。
それに倣って、リメイヴァも恐る恐る食べてみる。
「…………〜〜〜〜ッッッ!?」
一口食べて驚愕する。随分とお気に召したのか、勢いよく食べ始める。
勢いよすぎて咳き込む様子に、やっぱり若い子はこうでなくちゃとリネアルーラ(精神年齢2000歳以上)は思った。
この日から彼女は時折ジャンクフードを作るようになり、庶民舌なリメイヴァはぷくぷくとした頬を得るのだった。
実は最近、『イカれた王女サマの笑い声は 〜あなた方が断罪した王女、世界最高の殺し屋ですよ?〜』っていう短編小説を書いた作者です。
よければぜひ読んでください! 評価は悪くない方なので! もうちょいで星5!




