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元汚部屋住人が異世界転生して王国を再建した話シリーズ

控えめだった私が、“許されない恋”をしてしまうまで

作者: 坂本クリア

「彼…本当はあなたの事が好きだったんだよ」


真っ白なウェディングドレスに身を包んだ

親友は私にいった。


「ごめんねー。だまってて…」


「…」


「私…悪いオンナなんだ…」

そう強がる親友の目には

暗い悲しみがあった。


友情と愛情の間に揺れ

疲弊しきった女の表情だった。


幸せの絶頂のその瞬間に

重大な告白を選んだ彼女の気持ち…


私にはわかるはずがなかった。


気が付くと

私の意識は消えていく。


遠くでサイレンの音が聞こえる。


そうか…

式場から走り出て

そして…


あーなんて…終わり方なんだ。


母さんは私に

オンナは控えめにと常に言っていた。


だから

私は常に控えめだった。

いいえ。それは言い訳なのかな。


本当はただ怖かったのかもしれない。


控えめにしていたら

勇気を出さなくてもいい

誰かのせいにできる。


そう思っていたんだ。


彼のことが好きだったのに…

親友が彼のことを好きなのを知って

そしてオンナのほうから告白するなんて…

そう思って…


あー彼に好きだと言ってたら

人生変わっていたのかな。

あのウェディングドレスを着ていたのは

私だったのかな。


彼女キレイだったな。

私もドレス着たかったな。


あー涙があふれてくるよ。


◆ ◆ ◆


気が付くと、私は知らないベッドに横たわっていた。

雰囲気からして、中世ヨーロッパみたい。

これは夢?


ズキン……


頭が痛い。記憶が、流れ込んでくる。


意味がわからない。

どういうこと。なんで…

えっこの人は誰

えっ母さん…父さん…

なんで死んでるの?

あっ夢なんだ。

でも夢でこんなに痛みはある?


いや…これは夢なんかじゃない。


これは私の魂がだれかの身体に入り込んでるって事だ。

なぜかそう実感した。


これはアイビーという人物の記憶だ。

あまりにも気持ち悪くて、何度も吐いた。

自分の中に他人の記憶が入ってくる――これは、二日酔いの5倍は不快だった。


このアイビーは学校の先生で、18歳になってしばらくして、事故で亡くなったようだ。


学校の先生だった両親は

少し前にあった戦争で亡くなり天涯孤独。

彼女は一人

借家に住んでいた。

家賃は5Gだった。それが今月に入り7Gに値上がりした。

それを悩んでいる時に馬車にひかれて亡くなった。


いや正確には亡くなったことで

私と入れ替わったようだ。

頭を打っただけで

大きなケガはない。


私はアイビーなのか…。私は誰なのか…。


アイデンティティの喪失と共に

とても深い孤独感を感じた。

知らない国に突然…

放り出されて。

私はどうしたらいいのか…わからなかった。


私は服を着替え

気晴らしに町にでた。


アイビーは女性らしい服装をあまり持っていなかった。

天涯孤独で身を守るために…

あえて男っぽい恰好をしていたようだ。


町の中央に広場があった。

この広場ではいろんなモノを売っている。

戦争で一時はかなり物資がなくなったが

最近は以前ほどではないにしろ

活気がでている。


ただあちこちで

魂が抜けたように

ぼーっと空中を見つめる人たちも多い。



お腹が空いていた私は

屋台で串焼き肉を食べた。

肉のうまみがジューシーで

とてもうまかった。

なんの肉かはわからないが…


アイビーはこの肉が好きだったみたいだ。


腹ごしらえが終わったあと

本が並べてあるところを見る事にした。


私も本が好きだった。

そして

アイビーも本が好きだったようだ。


うれしい気持ちが湧き上がってくる。

自然と声がでてくる。


「おー、これはいい本だ。あの辞典まであるのか」


「いらっしゃい。気になるものがあれば、ぜひ手に取って見てください」


そう同い年くらいの青年が声をかけてくる。

なんか…少しあの彼に似ている。


「ありがとうございます。ところで、お見かけしないお顔ですが…」


おもわず…へんな質問をしてしまった。はずかしい…。


「ああ、そうですね。ずっと病気がちで屋敷にこもっていたんです。町はずれの青い屋根のボロ屋敷に住んでいるクレストです。今は屋敷の不用品を少しずつ処分しているところです」


「ご丁寧にどうも。私はこの町の学校で教鞭を取っている新米教師のアイビーです」


こんなに積極的に話すなんて…

私どうかしている…。


しかし…

こんなに本がたくさんあるのに…

しかも安いのに

1冊も買えないなんて。


「はー」

思わずため息をついてしまった。


「どうかされました?」


やばい。ヘンに思われたかな…


「いや、素晴らしい本ばかりで、しかも安い…それなのに今月から家賃が上がってしまって、余裕がなくて。残念です」


「どれくらい値上がりしたんですか?」


「5Gから7Gです。給料が15Gですから、自由に本を買うのは難しくて」


なんで…そんな細かいことまで…

だまって私…


「それは大変ですね。お部屋の広さは?」


「だいたい10㎡ほどですね」


「それでしたら、うちの屋敷に空き部屋があります。キッチンとトイレは共同になりますが、4Gでお貸しできますよ」


「そんな…本当にいいんですか?」


思わず…言ってしまった。

えっでも…

屋敷って…

一緒に住むってこと???

いや…

そんなのムリ…。


「ええ。ただひとつお願いがあります。本の相場について教えていただけませんか?今の価格が安すぎる気がして…」


「構いませんよ。実際、市価の半額以下ですから。でも…読みたい本がたくさんあるのに…」


もう私

そんなの図々しいよ…


「それならこうしましょう。この本は、屋敷に持ち帰って読んでください。そして読み終わったものから、値段をつけて販売すればいい。あなたは本が自由に読めるし、私は販売の助けになる。どうです?」


えっ?

どういうこと?

こんなに…

スムーズに話が進むなんて

ちょっと…

言っただけなのに…


「そんな…まるで天国のような話です。本当にありがとうございます!」


あー…また言ってしまった。


「ではこの本たちを屋敷に運びましょう」


「お供します」

もうなるようになれ…。


「ついでに部屋も見ていってくださいね」


 

◆ ◆ ◆


順調すぎて…

怖いくらいだった。


なんでこんなに上手くいくんだろう。


これはアイビーの意識がそうさせてるの?

それとも私…


ずっと控えめに生きてきたのに…

こんなのまるで逆じゃない。


まぁいいか…。

悪い人じゃなさそうだし。


しかし重い荷物を運ぶと胸が苦しくなる。


「はぁ~、やっぱりこういう重い荷物を運ぶと、胸が苦しくなりますね…」


「あの……もしかして、失礼ですが、アイビー先生って……」


あーそうか。。。私…男の子と間違われていたのか…


「あ、はい? ああ、よく言われますが……私、女です」


「この服だと、わかりづらいですよね~」


「いや、全然気づきませんでした…!」


彼は照れくさそうに、頭をかいている。

なんか可愛い。


「よろしくお願いします、クレストさん。新しい住まい、楽しみです!」


「ええ、こちらこそ」


こうやって彼との生活がはじまった。


◆ ◆ ◆


屋敷には彼のほかに、小作人のローレルという青年がいた。


とても元気な青年だった。


ローレルも彼に誘われ、屋敷に住むようになった。


同い年くらいの男女3人が一つの屋敷に住むなんて…

はずかしすぎる…


そう思っていたのだけど

彼らはあまり意識していなさそうだ。


こっちの世界でも恋なんてできないのかな…。

そんな風に思っていた。


でも…

日がたつにつれ。

クレストさんへの想いは強くなっていく。


優しい笑顔

さりげない気遣い


どこかあの彼の面影に似ている。


彼は

私が学校の予算削減の話が出て苦しでいる時に

助けてくれた。


戦争の影響で孤児が増えた。

学校では無償で昼ご飯を提供していた。

予算削減で退学者が増えると

食べれない孤児も増える。


その苦境を救ってくれたのだ。


彼はいろんな問題を

短時間で解消していく。


とても頭がいい。

これは知識という意味ではない。

彼より物知りな人が学校でもたくさんいる。


しかしその頭の良さは知識というよりも

その運用方法から来るものだった。


こういう人は滅多といない。


こんなに尊敬できる人はいない。

そう思った。


一度彼に

「なぜそんなにいろんな問題を解決できるんですか?」

と訊ねたことがある。

彼は照れくさそうに

「物事を整理整頓して分析しているだけですよ」

と答えてくれた。


学校の予算削減の話も

生徒たちの学力が上ったことで切り抜けられた。

もちろん生徒たちのがんばりもあったけど


クレストさんの助けがなければ…

とうてい私の力だけでは

無理だっただろう。


でも…

どんどん彼は成長していく。

どんどん遠い人になっていく。


それはうれしいことであるのだけど

同時に手が届かない人になるようで…

焦りだけが心に蓄積されていく。


彼は王国に勤めるようになった。

彼の実績からしたら当然のことだ。


疲弊しきったこの王国を

まったく違う姿に変えてくれた。


でも以前より

彼に会えなくなった。


それがとても寂しい。


町でも彼は人気になっていた。

あちこちから紹介してとお願いされた。


以前の私なら

紹介していたところだけど


もうそんな事はしないと

決めた。


彼を誰にも渡したくない。

そう思っていた。



ある日…

彼は赤いリボンをくれた。


照れくさそうにしながら

「似合いそうだったから」

と…。


あーもうこの人って…。

なんて…。


胸がつまり…。

苦しくなった。



◆ ◆ ◆


王国が慌ただしくなった。


先の大戦で失った領土を取り戻すための…


戦争がはじまる。


そう聞いた。


クレストさんも軍関係の仕事が増え

忙しそうだ。


なんどか苦悶の表情を浮かべる彼を見た。


彼も戦争にいくと聞いた。


また失うのかな…。

そんな事ばかり考えて

眠れなくなった。



だめだ。。。


もう限界だ。


そして…

私はひとつの決意をした。



アイビーとクレストの恋の行方が気になる方は

「元汚部屋住人が異世界転生して王国を再建した話」

をご覧ください。


本編はすべて無料でお読みいただけます。


※戦争、再会、そして「最後の選択」――控えめな私が選んだ未来とは?




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短編で読みに来たらタグ「無料で読める続編あり」が後の方なのも合って気付かず  あれ?此処で終わり?となってしまいました。  うっかりでした。
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