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五月二十日

(短いので)本日は2話更新です。

<日記>

 五月二十日(月)


 今日も学校がありました。いつもと違うことは、先週のテストが返却されて、その解説のためにほとんど授業らしい授業がなかったことです。英語、数学、現代文、地理が返ってきましたが、そのどれもが六十五点でした。もちろん百点満点中の六十五点です。嬉しいような、悲しいような、複雑な気持ちになりました。


 変わったことと言えばもう一つあります。

 昼休みの終わり頃に隣の席の男の子に話しかけられました。皆月優真くんという、クラスで一番背が高い人です。他の特徴は……そんなにはしゃいでいる様子はなくて、どちらかと言うと物静かな印象なのですが、冗談めかした口調で話したり、笑いを取ったりします。落ち着き払った根が明るい人、なのかもしれません。あと、本人には絶対に言えませんが……穏やかで人懐っこい大型犬みたいで、笑うとちょっと可愛いです。


 皆月くんは困っている人を放っておけない性格なのだと思います。話しかけてきたのも、いつも俯いているわたしを心配してのことなのでしょう。

 申し訳ないことに、わたしは何も喋れませんでした。皆月くんには感じが悪いように映ったかもしれません。


 誰かと親しくなることがわたしには恐ろしいです。わたしじゃなくて魔女としての能力が目当てなんじゃないか、利用するために近づいているんじゃないか、と、ついそんなことを考えてしまいます。


 でも、利用されるだけならまだいいです。


 わたしは、親しくなった人を能力のせいで傷つけてしまうことが、何よりも恐ろしいです。


 皆月くんはきっといい人です。いい人だから、わたしは友達になってはいけないのだと思います。


 そんな皆月くんは、最初に付き合った人と結婚することが夢なのだそうです。皆月くんの彼女さんは幸せ者です。ちょっとだけ羨ましいと思ってしまいました。

 春香ちゃんは、そんなの口先だけであいつはヤリチンだ、騙されちゃ駄目、なんて言っていました。そうだったら、わたしはすっかり騙されたことになります。わたしには皆月くんが悪い人には思えません。


 皆月くんは、本当はどんな人なのでしょうか。

 友達になっちゃいけなくても、返事をするくらいなら許されるでしょうか。

 もしまた話しかけてくれることがあれば、今度は勇気を出してお話ししてみたいです。勇気を出せれば、の話ですけれど。


 明日は放課後に魔女の仕事が入っています。少し、憂鬱です。


 わたしは人を助けているのでしょうか。それとも、苦しめているのでしょうか。

 どうしてわたしが魔女なのでしょうか。

 この能力は何のためにあるのでしょうか。


 誰か、教えてください。

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