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四月三日

~(中略)~


<日記>

 四月三日(木)


 能力の副作用が終わる今日、最悪な(しら)せを受けました。


 春香ちゃんから電話があり、優真くんと白崎さんが付き合いはじめたと聞きました。


 優真くんが、わたしだけの彼氏だったはずの優真くんが、白崎さんの彼氏になってしまったそうです。


 頭が真っ白になりました。


 自分の中で、何かが壊れる音がしました。


「どうして? どういうこと?」と質問してくる春香ちゃんに、ぽつぽつと事情を説明しました。


 春香ちゃんは今からでも優真くんに説明するべきだと、言いづらいなら自分が話してくると主張しましたが、わたしは断りました。魔女なんていう都市伝説も、その副作用で記憶が消えているなんていう話も、信じてもらえるはずがありません。それを見知らぬ女子から聞かされるのであればなおさらです。


 たとえ信じてもらえなくても、今日会えば何かが変わると思っていました。そう信じていました。でも、優真くんが他の人と付き合ってしまったとなると話は別です。優真くんのことだから彼女の白崎さんを大切にして、わたしの言葉には耳を貸さないと思います。優真くんがそういう人であることを、わたしは誰よりもよく知っているのです。


 仮に信じてくれるとしても、伝える勇気がありません。優真くんは浮気や二股を誰よりも憎んでいました。先にわたしと付き合っていたことを知ったら、きっと……おかしくなってしまうと思います。優真くんが悲しむところなんて見たくありません。わたしのせいで苦しめるわけにはいきません。


 それに、優真くんの幸せを奪う権利なんてわたしにはありません。あの医療恋愛映画のように、優真くんが誰と結ばれようとも、優真くんが幸せならそれでいいと思わなくちゃいけない。それが人を愛するということなんじゃないかと、そんな風に思えてきました。


 本当は、そう思おうとしているだけだと自覚していました。


 でも、もう、どうしようもありません。


 優真くんに「誰?」と言われたり、嫌われたりしたら、わたしはきっと死んでしまいます。想像するだけで身体が(すく)んで、涙と震えが止まらなくなるのです。だったら、他人のままの方がずっといいです。


 春香ちゃんに頼んで、優真くんには何も言わないと約束してもらいました。春香ちゃんは、ただの噂だから、勘違いかもしれないから気をしっかり持ってと励ましてくれました。明日、確認して報告をくれるそうです。


 どうか優真くんが白崎さんと付き合っていませんようにと、わたしはもう一度神様にお願いをしました。


 明日が来るのが、(たま)らなく恐ろしいです。

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