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十二月十三日

~(中略)~


<日記>

 十二月十三日(金)


 今日は放課後に麻雀をしました。優真くんに教わってルールや役を憶えたのですが、実践はこれが初めてです。優真くんに連れられて地学準備室に行き、寺谷くんと細田くんと一緒に打ちました。


 お金を賭けていると聞いてびっくりして、わたしにしては珍しく優真くんを叱りました。優真くんは「はい。ごめんなさい」と素直に謝ってくれました。でも、もうしませんとは言いませんでした。いつか優真くんが捕まってしまわないか心配です。


 寺谷くんは春香ちゃんから「紗代からお金取ったら絶交だから」と言われていたそうで、賭けはなしにしてもらえました。寺谷くんはとても強くて、平和(ピンフ)、タンヤオ、三色同順、七対子(チートイツ)嶺上開花(リンシャンカイホウ)といった技?を次々と見せてくれました。優真くんはあまり点が取れず、「くそ配牌が」とか「俺が親のときに跳満(ハネマン)ツモんなよ」とか、口が悪くなっていました。悔しがる優真くんは可愛いです。


 麻雀は難しくて、こんなのどうやってアガるんだろう、と困り果てていたのですが、わたしの親番で牌を並べてみて、あ、これってたしか、と思って優真くんに見せたら、なんだか知らないうちに勝ってしまいました。天和(テンホー)、大三元、四暗刻(スーアンコウ)の三倍役満だそうです。優真くんは「すげえよ! 奇跡だぞ! やっぱり紗代は持ってるな!」と大はしゃぎでした。ちょっと照れくさかったです。


 結果はわたしが156800点、優真くんがマイナス34500点、寺谷くんがマイナス300点、細田くんがマイナス22000点になりました。すごいらしいですが、どれほどすごいのかはよく分かりません。優真くんが「飛び賞込みで9340円稼げたのに」と言うのでまた叱りました。寺谷くんに「二度と来んな」と点棒を投げつけられ、追い出される形で地学準備室を後にしました。


 別々に学校を出て、隣の駅で優真くんと落ち合って、一緒に帰りました。優真くんはわたしをマンションの近くまで送ってくれて、公園のベンチに並んで座り、寒いねと言い合いながら缶のココアを飲みました。


 思い出したように、優真くんが「紗代の誕生日にネックレスを贈っていいか?」と訊いてきました。わたしに似合うかは分かりませんが、優真くんがプレゼントしてくれたものを身に着けられると思うと、それだけで幸せな気持ちになります。身体がぽかぽかして、寒さもどこかに行ってしまいました。嬉しくて抱き着きたかったのですが、ぐっと(こら)えて、うんと答えました。


 優真くんはわたしが青色が好きと言ったのを憶えてくれていて、十二月の誕生石はどれも青だから紗代にぴったりなんだ、と説明しました。そこでふと、電流のような閃きが頭を駆け抜けました。きっと魔が差したのだと思います。優真くんからプレゼントが貰えるだけで満足するべきなのに、欲張りなわたしは、優真くんの誕生石がいいとわがままを言ってしまいました。


 優真くんは「分かった。ありがとう」と優しく微笑んでくれました。プレゼントをする優真くんがお礼を言うなんて変です。でも、そのひと言だけで嬉しくて泣きそうになるわたしは、もっと変なのでした。


 帰ってからパソコンで八月の誕生石について調べてみました。有名なのはペリドットというライムグリーンの宝石のようです。宝石を貰っちゃうんだ、と今さら気づいて、あたふたしてしまいました。


 ペリドットには災いを寄せつけないお守りとなり、喜びの感情を湧かせる効果があるそうです。さらに、宝石言葉は『夫婦の幸福』です。夫婦かあ、なんて呟いて、一人で照れてしまいました。まだ貰ってもいないのに早くも効果が出てきたみたいです。


 わたしばっかりが幸せにしてもらっているので、優真くんにお手紙を書くことにしました。わたしの、生まれて初めてのラブレターです。普段恥ずかしくて伝えられていないことをきちんと言葉にするつもりです。喜んでくれるといいのですが。


 こんなに楽しみな誕生日は初めてです。クリスマスから年始にかけては魔女の仕事で忙しいので、誕生日は優真くんにたくさん甘えちゃおうと思います。

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