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十一月十二日

~(中略)~


<日記>

 十一月十二日(火)


 今日の放課後は優真くんと喫茶店に行って、一緒に勉強をしました。もうすぐ期末試験があるので、お互いにサボらないように見張りながら追い込みをしようということになったのです。

 普段は絶えず面白い話を聞かせてくれる優真くんも、今日ばかりは真剣な様子で、黙々と勉強に打ち込んでいました。


 わたしたちは得意科目も苦手科目も似ているため、教え合うということはできません。ただ、優真くんがバレー部の先輩から貰った過去問を共有してくれるので、わたしだけが得をしてしまっていました。優真くんには恩を受けてばかりです。わたしがあげられるものなら何でもあげたいと思っていますが、生涯を懸けても返し切れないんじゃないかと、時々不安になります。


 帰り際に少しだけお話をしました。優真くんはスマートフォンを新調したそうです。以前使っていたものはお師匠さんのお下がりだったらしく、「ようやく自分のスマホを持てた気がするよ」と嬉しそうにしていました。


 躊躇(ためら)うような間を置いて、「実はさ」と優真くんが照れくさそうに切り出しました。


「パスワード、紗代の誕生日にしたんだよ」


 異能科の職員さんとの約束もあるので、わたしたちが付き合っている証拠となるようなデータは残すことができません。それでも証になるようなものが欲しいと考えて、わたしの誕生日をパスワードに設定してくれたそうでした。


 大切に想われていることを実感して、嬉しさと恥ずかしさで胸がいっぱいになって、なんとか「ありがとう」という言葉を絞り出しました。もっといい返事があった気もしますが、そう答えるのが精一杯でした。


 夜に春香ちゃんがマンションの近くまで来てくれたので、公園でお喋りをしました。


 優真くんとうまくやれているのかというようなことを訊かれ、思わず、パスワードの話をしてしまいました。口にしてしまった後で、惚気(のろけ)話という意味でも、個人情報の観点でも、よくないことをしたと後悔しました。


 ただ、春香ちゃんはその話を聞いて安心したようでした。実は、交際から半年が経とうとする今でも、わたしが騙されているのではないかと心配していたそうです。


「なんでみんな、付き合うとそういうバカなことするんだろうね」とちょっと失礼なことも言っていましたが、その〝バカなこと〟で喜んでいたわたしは何も言い返すことができませんでした。優真くんには心の中で謝っておきました。


 試験が終わったら少し遠くまでデートに行こうと優真くんに言われています。それを楽しみに勉強を頑張りたいと思います。

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