十月二十五日
~(中略)~
<日記>
十月二十五日(金)
今日は学校で球技大会がありました。わたしはバスケで参加しましたが、一回戦で春香ちゃんのチームと当たってコテンパンにされてしまいました。春香ちゃんはびゅんびゅんコートを駆け回って、ばしばしシュートを決めていました。解説の人が『さすが倉矢中のアンクルブレイカー』?と叫んでいました。やっぱり春香ちゃんはすごいです。とても尊敬します。
一方、優真くんは得意なバレーボールで出場し、上級生もものともせず、順調に勝ち進んでいきました。相手のブロックの上からスパイクを叩き込んで、相手のスパイクはどしゃっと?して、目にも留まらぬ速さのジャンプサーブまで披露して、もうとにかくカッコよかったです! 優真くんが点を獲ると、あちこちから歓声が上がって、相手チームからはブーイングが飛んできました。でも、優真くんは飄々としていて、「女子バレー部代表、皆月優真、行きます!」なんてふざけたり、ヘンテコなポーズを決めて笑いを取ったりしていました。耳を澄ませば優真くんの話題で持ち切りで、いつの間にか解説の人も優真くんの実況ばかりしています。わたしはアリーナのキャットウォークから眺めて、すごいすごいとぴょんぴょん飛び跳ねていました。わたしはあの優真くんの彼女なんだと思うと、嬉しくて顔が緩んでしまいました。
優真くんはそのまま決勝戦に進みました。相手は同じ一年生で、そこには優真くんと部活が一緒の小林くんがいました。小林くんが「二年前の新人戦決勝の決着をつけようぜ」と言って、優真くんが「あれはうちが勝っただろ」とつっこんで、会場は笑いに包まれました。解説の人が言うには、二人とも中学時代は県ベスト4まで行った実力者なのだそうです。優真くんはあまり自慢話みたいなことはしてくれないので、わたしは知りませんでした。ちょっぴり淋しかったです。
小林くんが解説さんのマイクを借りて、「俺と優真、負けた方が一番の秘密を暴露します!」と宣言したことで、この試合は全校生徒の注目の的になりました。わたしはもちろん優真くんを応援していましたが、少しだけ、負けてほしいとも思っていました。優真くんが負けて、みんなの前でわたしと付き合ってるって言ってくれたらいいのに、と。わたしは魔女だから彼氏がいるなんて知られちゃいけませんし、実際に言われたら恥ずかしくて卒倒してしまうことも分かっています。それでも、優真くんを誰にも取られたくないという思いから、ついそんなことを考えてしまいました。
決勝戦はほとんど優真くんと小林くんの一騎打ちみたいになり、タイブレークにまでもつれ込んで、三十八対三十六で優真くんが勝利しました。わたしたちのクラスの優勝です。アリーナが揺れるくらいの歓声と拍手が鳴り響いて、わたしもそれに紛れて、「カッコよかったよー」と囁くように声を投げました。聞こえたはずがないのに、優真くんは振り返って笑ってくれました。
小林くんの一番の秘密は「二年五組、女子バレー部の峰原葵さんが好きです!」でした。すかさず峰原先輩が「罰ゲームで告白しないでよ!」と叫んで大爆笑が起きて、「わたしも好き!」と続けたことでさっきよりも大きな歓声と拍手が上がりました。バレー部カップルの誕生です。なんだかドラマを観ているみたいでした。
でも、球技大会は楽しいことばかりではありませんでした。わたしのすぐ傍で、「皆月くんって彼女いるのかな?」という声が聞こえてきました。見ると、背が高くてすらっとしていて、おっぱいも大きくて、びっくりするくらい美人な女子生徒が、熱のこもった視線で優真くんを見つめていました。それは間違いなく、わたしが優真くんを見るときと同じ眼差しでした。
同じクラスと思われる男子生徒が「白崎、まさか皆月に惚れちゃった?」と茶化すように訊いて、白崎さんというらしいその人は何の躊躇いもなく「うん」と頷きました。聞かなかったことにしたくて、わたしは慌てて逃げ出しました。
白崎さんみたいなきれいな人にわたしが勝てるはずがありません。白崎さんに言い寄られたら優真くんはどうするんだろう。わたしはどうなっちゃうんだろう。優真くんはいつまでわたしを好きでいてくれるのかな。優真くんの好きな人は本当にわたしなのかな。どうしたら目に見えない想いを確かなものだと信じられるのかな……。
不安で目の前がぐるぐるしました。
愛を証明してくれる魔女がどこかにいてくれたらいいのに、と密かに思いました。




