八月十一日
<日記>
八月十一日(日)
優真くんに会えないのなら勉強に集中して宿題を終わらせよう、と決意していたのですが、優真くんのことが気になってまったく集中できません。我慢できずに電話を掛けてしまいました。
たまに、以前に春香ちゃんにされた忠告を思い出します。優真くんが女の子を騙す悪い人だというあれです。春香ちゃんからは、紗代の彼氏を悪く言ってごめんと謝られていますし、優真くんがそんな人だとは思っていません。けれど、一回ヤったからもういいや、とか、あんまり気持ちよくなかったから他の人にしよう、とか、そんな風に心変わりしていたらどうしようと不安で堪らなくて、捨てられたらと想像しただけで涙がこぼれてきて、気づいたら電話をしていました。
着信拒否されていないことを確かめるだけのつもりだったのですが、コール音がしたと思った次の瞬間には優真くんが出ていました。「どうした? 大丈夫か? 何かあったのか?」と矢継ぎ早に質問してきます。わたしは、声が聞きたくなって、とごまかしました。でも、言葉にしてみると本当にそうだったような気もしました。
受話器越しに、よかった、という安堵の声を聞いて、わたしの心配ごとはどこかに飛んでいってしまいました。優真くんがわたしにひどいことをするはずがありません。優真くんを疑うなんて失礼じゃないか、と自分を叱りました。
スマホを買ったらどうだ、と優真くんに言われましたが、やんわり断っておきました。中学校の頃にパソコンで友達とメールをしていて、親しい間柄だと分かる会話は避けてくださいと異能科の職員さんに怒られたことがあるのです。危うく転校させられるところでした。わたしがスマートフォンを持ったら、きっと優真くんにたくさん電話やメールをしてしまって、別れなさいと言われるに決まっています。なので、家の固定電話があれば十分です。
長電話をするとまたお母さんに叱られてしまうので、名残惜しかったですがすぐに電話を切りました。
早く優真くんに会いたいです。




