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八月八日

(軽いものですが)性的描写があります。苦手な方はご注意ください。

~(中略)~


<日記>

 八月八日(木)


 今日は待ちに待った優真くんの誕生日です。待ちに待った、なんて言うとエッチを期待していたみたいに聞こえますが、そういう意味ではなくて、単純に優真くんの誕生日を祝えて嬉しいということです。でも、興味はありましたし、優真くんとしてみたいという気持ちがあったことも認めます。


 お昼前に優真くんに駅まで迎えに来てもらって、お店でケーキを買って、優真くんのお家で誕生日会をしました。クラッカーも風船もない質素なものでしたが、優真くんがいちいち大袈裟に喜ぶので部屋中がライトアップされているみたいに明るく感じました。


 わたしがお財布をプレゼントすると、優真くんは「ちょうど明日買い替えようと思ってたんだよ! めちゃくちゃ嬉しい! ありがとう! 一生大切にする!」と言って大喜びしてくれました。さすがのわたしでも、明日買い替えるつもりだったというのは噓だと分かりました。けれど、一生大切にしてくれるというのは本当だと思います。わたしがプレゼントしたものを優真くんが持ち歩いて、大切に使ってくれる。そう思うだけで笑みがこぼれました。優真くんにお礼をしたいのに、返しても返してもそれ以上のものをもらってしまいます。本当に、優真くんには困らされてばかりです。


 その後、優真くんの提案でド派手な超能力バトルアクション映画を観て、感想を言い合って、お互いに過去に観て面白かった映画の紹介をしました。わたしが五月に異能科の職員さんから借りて観た医療恋愛映画の話をすると、優真くんは照れくさそうに頬を搔いて、こう言ってくれました。


「紗代は治療することでその人から大切な人の記憶を消してしまうことに悩んでるだろ。その映画じゃないけどさ、俺はもし記憶がなくなっても、また紗代のことを好きになる自信があるよ。これからもずっと紗代のことが好きだし、紗代以外の人を好きになるなんて絶対にない」


 胸の中がぶわーっと〝好き〟で溢れ返って、胸が張り裂けそうで、息ができなくなって、目を瞑りました。優真くんは何も言わずにキスをしてくれました。


 わたしも、するんだよね、と訊きませんでしたし、優真くんも、いいか、なんて訊きませんでした。手を繋いで優真くんの部屋に移動して、意味もなく微笑み合いました。優真くんはカーテンをぴったり閉めてくれたのですが、カーテンの周りから漏れ込む陽の光のせいで部屋は明るいくらいで、二人して苦笑してしまいました。


 でも、ここからどうしたらいいか分かりません。おどおどしていると、優真くんが「お互い背中を向けて服を脱いで、心の準備ができたら振り向こう」と変なことを言い出しました。西部劇のガンマンみたいと思ったら、可笑しくなって緊張が解れました。


 すぐ後ろで衣擦れの音がしていました。待たせちゃいけないと思って、わたしも一枚一枚服を脱いでいきました。下着はどうしようと迷ったのですが、優真くんが裸になっていたら失礼なので、ブラを外して、パンツも脱ぎました。


 提案を聞いたときは笑いそうになってしまいましたが、いざ振り返ろうとしたときにこの意味を理解しました。わたしが自分で裸になって、自分の意思で振り返る。それはつまり、わたしが望んで優真くんに身体を捧げるということです。優真くんに脱がせてもらうよりもずっと恥ずかしいことをしていると思いました。


 背中ではとっくに何の音もしなくなっていました。静寂がわたしを急かしてきます。覚悟を決めるしかありませんでした。


 振り返ると、優真くんは既にこちらを向いていました。一糸も纏っていない、正真正銘の裸です。胸板もお腹も腕や脚も筋肉がくっきりと浮き出ていて、わたしとはまるで違う(たくま)しい身体の造りに、優真くんが〝男の人〟だということを意識させられました。わたしよりずっと大きな両手は下腹部を隠しています。それでも隠し切れていないそこに、思わず生唾を呑みました。


 男の人のそれを見るのは、小さい頃にお父さんとお風呂に入ったとき以来です。でも、わたしが知っているものとは全然違いました。すごく大きくて太くて長くて、優真くんらしからぬ凶悪な形をしています。どう見てもわたしのおへそまでよりも長いです。恐怖よりも、ちゃんと入るのかなという疑問が勝りました。


 優真くんに促されて、おっぱいとあそこを手で隠したままベッドに仰向けになりました。両手で脚を持って広げてほしい、と言われて、死んじゃいそうなくらい恥ずかしかったですが、優真くんが喜んでくれるならとその通りにしました。


 優真くんは「きれいだ」と溜め息を吐きました。そんなことを言われてもどうコメントしたらいいか分かりません。わたしは拗ねた顔をしてみせました。


 それから、初めておっぱいを揉まれて、初めてあそこをじっくり見られて、初めて指を挿れられました。ごつごつした手がわたしの身体をゆっくりと焦らすようにまさぐって、わたしの知らなかった感覚を与えてきます。わたしの手は自分の脚を持っているので口を押えることができなくて、漏れ出る声も、乱れる息も、優真くんにしっかり聞かれていました。恥ずかしすぎて頭がおかしくなりそうでした。


 しばらくして優真くんも準備を始めました。ところが、ここでトラブルが起きました。

 ゴムを着けるまでは順調でした。でも、その途端に優真くんのそれが萎んでしまったのです。


 優真くんはひどく落ち込んだ顔で、ごめん、と呟きました。緊張しすぎて勃たなくなったそうでした。


 残念に思う気持ちもありましたし、本当はわたしの身体にがっかりしたんじゃないかという悲しみもありました。けれど、そんなことより、大きな優真くんが仔犬のように震えてしょんぼりしている姿に愛おしさを感じました。優しくて、面白くて、カッコいい優真くんにもこんな一面があったんだと知れて、わたしだけが知っているんだと思ったら嬉しくて、優しい気持ちになれました。


 わたしは初めて、キスしたいと自分から言いました。抱っこをせがむように手を伸ばすと、優真くんは素直に顎を引いて、わたしに覆い被さってきました。


 裸のまま抱き合って、キスをしました。唇を(ついば)み合って、優真くんがわたしの唇を舐めて、わたしも真似しようとしたら舌と舌が触れ合って、そのまま舌を絡ませました。舌で舌を舐められて、吸われて、甘噛みをされて、食べるように、(むさぼ)るようにキスを交わしました。そっか、これが本当のキスなんだ、と気づきました。唇だけで触れ合うキスは〝好き〟を感じましたが、舌が入ってきて口の中から愛撫されると〝愛されている〟という実感が湧いてきます。温かくて、気持ちよくて、幸せで、ずっとこうしていたいと思いました。


 おもむろに優真くんが顔を離したのでどうしたのかと思ったら、優真くんのあそこがすっかり元気を取り戻していました。震えも完全に止まっています。それで、やっぱりすることになりました。


 初めての感想は……とにかく痛かったです。異物感がすごくて気持ちよさなんてまるでありません。世の彼女さんはみんなこんな痛い思いをしているのかと思ったら信じられない気持ちになりました。


 優真くんは動かず、馴染むのをじっと待ってくれて、繋がったままキスの続きをしてくれました。わたしはキスに集中して痛みをごまかすことに必死でした。こんなの、好きな人とキスしながらじゃなかったら耐えられません。


 結局痛いまま終わってしまいましたが、とても幸せでした。優真くんは普段とは比較にならないくらい何度も「好き」と言ってくれて、たくさん「可愛い」と褒めてくれて、いっぱいキスをしてくれました。何より、わたしは優真くんに初めてをあげられて、優真くんの初めてを貰えたのです。こんなに嬉しいことはありません。


 優真くんは、気持ちよかったと言ってくれました。わたしで気持ちよくなってくれたんだ、と思うと、痛みも吹き飛ぶようでした。今度は紗代にも気持ちよくなってもらえるように頑張るから、と宣言していましたが、わたしはちょっと自信がありません。気持ちいいと思う日なんて来るのでしょうか。


 帰りは優真くんにマンションの近くまで送ってもらいました。あそこが痛くて、ひりひりして、がに股の変な恰好になってしまうので恥ずかしかったです。どこかで見ている職員さんには、したんだなとバレていたと思います。変な噂を立てられないか心配です。


 優真くんとはお盆休み明けの十九日に会う約束をしました。一週間も会えないのは淋しいですが、今日の想い出を噛み締めながら我慢します。

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