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第6話 ダンジョンに行く

 師匠に、『即天流居合』の名を轟かせると約束した翌日に久々に学校に行ってみたんだが、退学になってたwww


 ....なんで?


 理由を聞きに行っても教えてくれなかった。


「上の連中共がやってるんだろうなぁ....ここも国立高校だしな」


 俺の呟きに反応して、学校関係者達の肩がビクリッと動いた。


 今、ネット内限定だが、俺がダンジョンを攻略したことで国や協会に対して疑念を抱いている。


 そのことに、上層部は気付いているんだろう。


 だから、先手を打って俺を退学にすることによって、世論操作をしようとしているんだろうな。


『学校を退学させらた奴が攻略したダンジョンが、あの鐘の音のダンジョンと同じであるはずがない』


 ってな感じでな。


「取り敢えず、帰ってから考えよう」


 手刀で空間を切り裂き、家と職員室を無理矢理接続する。


 そして、空間の裂け目を潜り抜け、空間を修復する。


「これから、どうするかなぁ....」


 テレビを点けて、適当な番組でも流しておく。


 何かをするにしろ、俺は1人ですることが大前提だ。


 そもそも、こんな俺に近づいてくる奴なんざいないだろう。いたとしても、俺を始末やら何やらするのが目的で近づいているとしか思えない。

 だからこそ、俺に近付いてくる奴が来た場合は逃げの一択だ。ソイツを下手に信用して、関係を構築してからの背中からグサリッはされたくないし。


 それに、ぶっちゃけ俺の信用回復なんざ、とうの昔に興味を失った。

 ただ、『即天流居合』の強さを世に知らしめればいい。


 そのためには、多くの人に見てもらい知ってもらう必要がある。


「となると....配信か?」


 いや、配信をしたとしても、まともに真偽判定すらせずに全てを嘘と決めつけられるだろうしな。


「あっ...」


 有名な人の配信にさり気なく写り込めば良くね?


 それなら、俺の実力が嘘だと言われても....そしたら、配信者と俺がグルだろって言われて、巻き込んで誹謗中傷されそうだな。


「うーん....いと悩ましな」


『続いてのニュースです。先週出現した新たなS級ダンジョンについてですが、S級探索者の葛道 灰人さんが攻略に乗り出すようです!』


「んー、俺も新しいダンジョンを攻略しに行くかね」


 俺達S級は基本、国から依頼された高難易度ダンジョンを担当するのが基本だが、A級以下の探索者同様に攻略したいダンジョンに潜っても問題ないのだ。

 まぁ、優先順位は国からのやつの方が高いけどな。


 ******


 数日後!


「来たでぇ、D級ダンジョン!世界の嫌いなダンジョンランキング8位のクソゴミダンジョン!!」


 ここのダンジョンは、出現してから30年近く経つが未だに攻略される兆しが皆無なダンジョンだ。


 そして、低級ダンジョンなのに30年近く攻略されず、嫌われているのかというと....物理、魔法共に耐性を持つスライムしかポップしないからだ。


 しかも!このスライムの体は強酸であり、数体討伐するだけで鋼鉄の剣がボロボロになり、更には、下の階層に行けば行くほど耐性強度が跳ね上がっていくのだ!


 それだけじゃない、50階層以上になると属性持ちスライムが出てきて、魔法をバンバン撃ってくるというオマケ付きで、素材が殆ど残らないためお金にすらならない....


 だから、スライム酸の影響をあまり受けない、アダマンタイトやオリハルコン製の装備を使っている上級探索者は、わざわざスライム狩りなんてしないのだ。


 その結果、初心者はスライムを嫌い、上級者はスライムに無関心となり、このダンジョンは嫌われている。


「それじゃあ、ぼちぼち行きますかね。目標は一時間で攻略かな」


 ゲートから中に入った瞬間、トップスピードで駆け出して、スライムの殲滅を開始する。


 ******


 1時間後!


 結局、一度も刀を抜くことなく手刀のみでボスさえも切り刻んだ。


「こんなダンジョンは、存在するだけ無駄だしな。ダンジョンコアを砕いて消滅させるか」


 ダンジョン攻略には2種類ある。


 1つ目は、ダンジョンの最終ボスを撃破し、ダンジョンコアを掌握することで、ダンジョンを人の管理下に置くことだ。これは、資源として有用なダンジョンの場合よく行われる。


 2つ目は、ダンジョンコアの破壊だ。これをすると、ダンジョンは完全に消滅する。大体、価値の無いダンジョンや厄介なダンジョンの場合はこれをする。


 そして、今回は後者のダンジョンコア破壊をすることにした。


 流石に、ダンジョンコアを手刀で破壊するのは骨が折れる、かといって、刀を使うのも癪なので、亜空間からオリハルコン製の()()()()()を取り出し、魔力を纏わせて大きく振りかぶる。


「ウザったいんだよ!この、クソゴミダンジョンがッ!!」


 あー!スッキリ!!


 会う度にネチネチ嫌味を言ってくる屑道....葛道と同じくらいウザかったわ....


 鐘の音が3回鳴っているのが聞こえる。


「攻略完了」


 一応、協会に報告入れておくか....


 どうせ、信じてくれないと思うけど....


 ******


 Side:とあるダンジョン配信者


 あるダンジョン配信者が配信をしているが、その視聴者数は異様とも思えるほどに多かった。


 その理由は────


「こんくるー!今日はね!天久さんが、最近攻略したというダンジョンに来ているよ!」


 "こんくるー!"

 "こんくるー!"

 "最弱探索者が担当していたダンジョンかwww"

 "どうせ、E級ダンジョンだからしょぼいんだろ"

 "くるたんはB級だし、E級なんて楽勝でしょ"


 この配信者の名前は、『東雲(しののめ) 来栖(くるす)』である。


 彼女は、腰辺りまで伸ばした黒髪に、パッチリとした目、スッと通った鼻筋、小さく可愛らしいプックリとした唇の清楚系な顔立ちの美少女でありながら、世の女性が羨むような抜群のスタイルを持っている。

 この時点で、人気が出るのは間違いないのだが、彼女の魅力はこれだけには留まらない。


 彼女は上位探索者と呼ばれ始めるB級探索者であり、実力の方も確かであるため視聴者も見ていてストレスを感じることも少なく楽しいのだ。


 例としては、ゲームを上手い人がやっているのを見るのは楽しいだろう?逆に、下手な人がやっているのを見るとストレスを感じる人もいるはずだ。


 それでいて、彼女はとても優しいのだ。今回、このダンジョンに来たのも冷やかしというわけではなく、何か事情があってソラの攻略が遅れていたのではないかと思い。それを確かめるために来ていたのだ。


「皆さん、天久さんを非難することはやめて下さいね。彼も何か事情があって攻略に時間がかかったのかもしれないですからね!」


 "もちろん!"

 "それを確かめるために今日は来たわけだしね"

 "いや、アイツが怠けていただけでしょwww"

 "くるたんは優しすぎるんだよ"

 "ぶっちゃけ、俺も天久がちゃんとしていなかったと思ってる"


 コメントを見て、来栖は一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべるが、すぐに笑顔に戻る。


「じゃあ!早速入って行くよ!!」


 来栖がゲートを潜りダンジョンに入った瞬間


「ウッ....」


 濃厚過ぎる血の匂いに思わず口を抑える。


 "何これ...."

 "ヤバ....俺、見るの無理かも"

 "なんだよ、このダンジョン...."

 "ダンジョンがボロボロになってるの初めて見た"

 "ダンジョンって傷付かないんじゃ...."


 コメントが勢いよく流れる中、来栖はダンジョン産の特殊な植物をすり潰し口の中に入れ、血の匂いを緩和していた。


「ここで一体何があったの?」


 呆然とした様子で呟く。


 だが、それも無理は無い。何故なら、ボス部屋の床は無惨にも砕かれ、壁には斬撃痕や大きなひびが大量に入っている。

 そして、部屋は血でドス黒い赤に染まり、その匂いが充満しているのだ。


 この血は、5年以上ソラが流し続けた血である。


 "くるたん、部屋の奥に何かない?"


 1つのコメントが来栖の目に入った。


「ホントだ。ちょっと、見てみよっか」


 来栖が近づくと、それは刃の部分が無くなっている刀が床に突き刺さっており、その後ろには1枚の石碑があった。


 その石碑には、文字が刻ませている。


「『即天流居合』の祖。ここに眠るって書いてあるよ」


 "誰かのお墓?"

 "じゃあ、この刀は墓標替わりってこと?"

 "即天流居合?初めて聞く流派だな...."

 "天久以外にも、人がいたのか?"

 "これも、アイツの自作自演なんじゃねぇの?"


 来栖は、試しに石碑に触れてみる。


「この石碑....!オリハルコンだよ」


 "は?"

 "この量をオリハルコンって...."

 "この部屋といい、石碑といい、何なんだよ...."

 "自作自演にここまでやるやついないだろ"

 "てか、天久が本当にサボってるなら、こんなにオリハルコンを持ってるはずが無い"


 他にも何かないか辺りを見渡す。


「あっ!ダンジョンコアだ」


 ダンジョンコアに近付くと、コアの周りに結界が張られていることに気付いたようだ。


「あっ....この魔力、天久さんのものだよ。私、一度だけ天久さんが魔法使っているところ見たことがあるんだ。この魔力は、その時のと同じ魔力だよ。それに、初めて見る魔法体系の結界だよ」


 "おい、天久が世界最弱って本当なのか?"

 "てか、アイツはこんなところに5年以上毎日潜ってたんだろ?"

 "ここがE級なわけないだろ"

 "俺も1回行ってみるわ"

 "てか、なんでモンスターが1匹も湧かないんだ?ボス撃破による攻略なら、ボス以外は湧いてくるだろ"


「確かに、1匹もモンスター湧いていないね」


 そういえばといった風に呟く。


 余りにも、衝撃的過ぎてモンスターのことを忘れていたみたいだ。


「それは、俺がコアを弄ったからだ」


「えっ....?」



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