第4話 別れ
組み稽古という名の地獄が一段落したところで、ボスさんから話しかけられる。
「空よ。お主も気づいていると思うが、私には時間が残されていない」
やっぱり...
「よって、お主を、我が剣『即天流居合』の正当後継者に任ずる。よって、奥伝を授ける」
ボスさん...いや、師匠からの最後の教えということなら...!
「師匠。最後まで御指導よろしくお願い致します」
刀を腰から外し、自らの右側に置く。そして、最敬礼の座礼をする。
「......うむ。最後まで心せよ」
師匠の声が少し震えている気がするが気のせいだろう。
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そして、そこからはより一層厳しい修行が始まった。
ダンジョンから家に帰ることは無くなり、学校にすら通わず一日中学び続ける。
今までは、切り結ぶ中で、師匠の技を見て盗んできたが、今回は座学で『即天流居合』の理合を学び、型を学び体に染み込ませ、試し斬りを行い修正し、斬れる技に昇華し、技を魂に刻み込んだ。
そして遂に、全ての奥伝を体得した。
ここまで至るのに、どれほどの時間がかかったのか分からない。
「空よ。よくぞここまで辿り着いた」
「ありがとうございます」
そして、ここからが本番だ。
「その様子だと、分かっているのだろう?」
「はい。もう、限界なのですね?」
「あぁ、もって半日といったところだ」
師匠が正気を失うまでのタイムリミットは半日未満。
それまで、師匠を討たなければならない。
「さぁ、構えよ。最終試練だ。見事、私を討った暁には、『即天流居合』の二代目宗家として、認めよう」
師匠と俺は同時に、全身に巡らせていた魔力を霧散させ、居合の構えを取る。
これは、なんでもありの死合いではない。
あくまで、『即天流居合』同士の死合いだ。
ダンジョンの隅に置いていた水筒が倒れ、大きな音が鳴り響く。
刹那...両者の腕が霞み火花が散る。
その後は、ひたすらに技の応酬が続く。
斬る。弾く。突く。流される。斬られる。躱す。斬る。弾かれる。突かれる。弾く。斬る。躱される。
無限にも思える技の応酬。
互いに、血濡れとなりながらも一切、手を弛めることなく切り結び続ける。
そして、両者は同時に、互いの首筋に刀を添えた状態で動きが止まる。
「よくぞここまで技を磨き抜いた」
「それもこれも、師匠のお陰ですよ」
「嬉しいことを言ってくれるな。師匠冥利に尽きるというものだ」
互いに一歩下がり納刀し、再び居合の構えを取る。
「喋るのはここまでにしよう。最後は、この技で決めようではないか」
「えぇ、もちろんです」
「「『即天流居合』 奥伝"────"」」
ソラは袈裟に斬られ、大量の血を吹き出し地に伏せる。
「見事」
その言葉と同時に、師匠の刀が砕け散る。
「武士の命たる刀を砕かれた。それは最早、殺されたも同然。私の負けだ」
そしてソラに近づき、回復魔法を使い傷を瞬時に治す。
「師匠。これからは、『即天流居合』宗家として、この剣こそが、天下無双の剣であると世に知らしめていこうと思います。本当に、長い間お世話になりました」
ソラが涙を堪え感謝している間も、師匠の体は崩壊を始めている。
師匠は、自らの刀に魂を込めていたのだ。なので、ソラに刀を砕かれたことにより、その魂もまた、砕け散ったのだ。
「うむ。だが、今の私に勝ったからといって驕るなよ?今のソラは、私の全盛期の足元にも及んでいないということを忘れるでないぞ。そして、これからも鍛錬に励むが良い。剣の道に、終わりは在らず。この言葉をしかと、胸に刻むのだ」
そして、涙を流すソラを抱き寄せる。
「すまなかった。現世でお主が謗りを受けているのは、自らの事しか考えられなかった愚者である私のせいだ。本当にすまない」
ソラは首を横に振り、その言葉を強く否定する。
「いえ、俺は師匠のことを一度も恨んだことはありません。それに、師匠は愚者なんかではありません」
「いや、私は自らの益しか考えられなかった。お主のことを何一つ慮ってやることが出来なかった」
「それは、違います!師匠は、俺のことをずっと気にかけくれました。それに、始めて俺を天久 空という一人の人間として扱ってくれた!毎日、ダンジョンに来いと脅したのも、本当は、師匠が正気を失った時のために、俺だけでも自衛出来るようにするためでしょう?それに、日をまたいでもダンジョンに始めてい続けた日は、俺の体調とかを気にして、さりげなく家に帰そうとした。他にも、色々と俺を気遣ってくれていました!師匠は俺の恩人なんです。過去をやり直せたとしても、俺は必ず師匠に会いに行きます。例え、世間からどんなに非難されると知っていようが関係ありません!それだけ、師匠との出会いは俺にとって宝なんです」
師匠にしがみつき、子供のように大声を上げて泣くソラの心からの叫びを聞いて、師匠は生前も含め初めて、人を想い涙を流す。
「ありがとう。私は...なんのために剣を振っていたのだろうと思うこともあったが、今...その答えを知れた。私が剣を振っていた理由は、空...お主に会うためだったのだ。お主と出会うために、剣を振っていたんだ...!」
師匠の体の殆どが崩壊している。残っている体は僅かしか残っていない。
「空よ。お主と出会えて誠に良かった。私は、良き師匠であったか?」
「はいッ!」
「そうか...それは良かった。では、さらばだ我が愛しの弟子、天久空よ。数十年後にまた、黄泉の国で会おう。その時は、私が...剣...教えて...もらう...しれんな...」
師匠が消え去った瞬間、世界に鐘の音が複数回響き渡る。
この鐘の音は、ダンジョンが攻略された際に鳴るものだ。
鐘の音は、鳴った数が多ければ多いほどダンジョンの難易度が1つ上がる。
E級は1回、S級は6回という風に鳴るのだ。
そして、今回鳴った回数は7回であった。
世界に激震が走る。
なぜなら、今までの事例と照らし合わせると、SS級ダンジョンが攻略されたということだからだ。
そして、世界は知ることになる。
最強の探索者"天久 空"の存在を...




