婚約破棄狙いの公爵令嬢は、腹黒王子から逃げて溺愛される人生を望む
短編7作目になります。短編7作品中、気付いたら6作品が『婚約破棄』モノでした。今回も『婚約破棄』モノですが、ぜひお読み頂けたらウレシイです(; ᴗ ᴗ)⁾⁾
髪の毛が逆立つような感じがしたと思うと、ものすごい音が鳴り響いた。
ゴロゴロゴロ! バリバリバリバリッッ!! ドガガガガガンッッッッ!!!
ガゼボ脇の木にカミナリが直撃した。カミナリの落ちた衝撃で、カメリアは気を失った......。
――目の前が眩しい。カメリアは目をうっすらと開けた。
すると、目の前に心配そうな表情をした両親の顔が見えた。
「カメリア!気付いたか?」
カメリアは目を覚ますと豪華なベッドの上に横たわっていた。
「え……と、私、どうしたのだったかしら……?」
「お前はブレント王子とお茶会の後、カミナリが落ちた側にいて気を失っていたのだよ。覚えているか?」
「カミナリ……?」
状況を思い出そうとすると、頭が割れそうに痛い。
カメリアは頭を抱えるとうずくまった。
「大丈夫か!?」
両親の焦る声が聞こえる。目をつぶると、体験したことがない記憶が頭の中に大量に流れ込んできた。
知らない世界なのに、自分が元いた世界だと分かった。
そこでの自分は仕事を持ち、バリバリと働いていた。
――目を開ける。もう、頭痛は収まっていた。
「カメリア、まだ具合が……」
「大丈夫ですわ。私はどのくらい眠っていたのでしょう?」
「3日だ。このまま目覚めなければ王子の婚約者の座も危うくなっていたところだ」
(王子の婚約者?……ああ、この世界では私は公爵令嬢でブレント王子の婚約者だったわね)
「殿下はこのことをご存知で?」
「知ってはいる……だが、お前が倒れたというのに見舞いにも訪れない。花だけは届いたが」
「やはり……」
「カメリア?」
「お父様、少し1人にして頂けますか?」
「ああ。もう少し休むと良い。医者を呼んで来る」
カメリアは1人になると、この世界での今までの自分を振り返ってタメ息をついた。
(なんで、こんな状況に甘んじているんだろう)
ここの世界でのカメリアは、品行方正で誰が見ても王子の妃にふさわしいと言われていた。
問題なのは自分ではなく、王子だ。
「なぜ、私があの女癖の悪い男のために、我慢しなくてはならないのかしら?」
王子のブレントは、表面上は爽やかで運動能力も高く、器用でイケメンだとされている。ちなみに、イケメンというのは忖度した評価だとカメリアは思っているが。
(とにかく、あんな女漁りがライフワークみたいな男の妻になるなんて絶対にイヤ)
手を出された令嬢は数知れずで、カメリアの知り合いの令嬢だけでも5人はいる。皆、愛想の良い王子に騙されてしまうのだ。そして、後から痛い目を見させられる。
幸い、カメリアのダークグレイの瞳と髪の色が地味だと、王子には気に入られずに魔の手は及んでいない。だが、このまま結婚したらそれは免れない。
(これはなんとしてもあの王子から逃れなくちゃ)
前世では、セクハラ&モラハラ上司にひるまず戦っていた。前世を思い出した今、王子といえど、大人しく従うのは違う気がした。
ただ、面倒なのはカメリアの両親だった。彼らはカメリアが妃になると固く信じている。
――父の寄越した医者がやってきた。
「お加減はいかがでしょうか?」
「良くないわ。こんなことでは、殿下の婚約者などムリだと思うの」
診察が終わると、医者は急いで出て行く。きっと、カメリアが婚約者の座を辞退したいと言ったから、それを両親に伝えに行くのだろう。
案の定、バタバタと足音がすぐに聞こえてきた。父だった。
「婚約者辞退など、何を言い出すのだ!せっかくここまで順調にきたというのに!」
(順調……ね)
実は、カメリアの本来の性格は物事をハッキリというタイプだ。だが、公爵家に生まれた以上、両親は当然、王子の婚約者になるべきだと考えていた。
「私、カミナリのせいでいろいろと思い出したことがあるのです。私、元来は殿下の妃になるなんてタイプではないでしょう?好きなことを言って好きなように生きたいですわ」
「王子の妃となるからこそ、自由に物事を進めることができるのだ!」
父が顔を真っ赤にして叫ぶ。
「そうでしょうか?あの好色王子のことです。ほかの女を寵愛したらそううまくはいかないのでは?」
「正妃ならば、自分の子が将来、国を治めることになる!」
「この国では、男子が産まれなければ、国を治めるなど無理ではないですか」
「男子が産まれるまで子を産めばいい!」
「横暴な。私のことを何だと思っているのですか?」
「カメリア!!!」
父はブチ切れていた。
その後は、激しい言い合いになり、カメリアは自室での謹慎を命じられてしまった。
数時間は大人しくしていたものの、“部屋にずっといるなんて無理”と、思ったカメリアはクローゼットの中から一番シンプルなドレスを選んで着替える。
「ドレスって動きにくいわよね。この世界にもパンツスタイルが定着したらいいのに」
ブツブツ言いながら金目のものをポシェットに入れた。
「さて、抜け出すわよ」
バルコニーに出て下を見た。ここは2階だ。周りを見ると、うまい具合にツタが2階までいくつも伸びていた。
ドレスの裾をまくり上げて横でキュッと結ぶと、ツタをつたって下へと慎重に降りた。
「やったわ!ロードを誘いに行こう!」
ロードは庭師の息子だった。カメリアの幼馴染で同い年の17歳だ。幼い頃はいつも一緒にいたのに、王子の婚約者になってからというもの、ロードと話す機会も激減していた。
時折見かける彼は、すっかり背も伸びて美しい青年になっている。それもあってずと気になっていた。
庭の片隅に建つ小屋まで来ると、扉をノックする。
「はい、どなた?って……お嬢様! わゎ!何という恰好をしているのです!」
ドアを開けたロードが真っ赤になった。
「ああ、裾を結んだままだったわね」
「とにかく、中に入って下さい!」
小屋に入ると、まくり上げていたスカートを素早く直す。
「どうしてこちらに?それにその服装は?」
「私がカミナリのせいで倒れたのは知っている?」
「カミナリでお倒れに?」
何も知らないらしいロードに、起きたことについて簡単に説明した。
「……というわけで、私は謹慎するように言われたのだけど、無理そうだから出て来たの。あ、心配しなくて大丈夫よ。見回りにくる時間は把握しているから」
「把握しているって……こうしてお散歩しているくらいならば問題ないでしょうけれど」
「いえ、お散歩じゃ満足しないわ。ロード、街歩きしてみない?」
「えっ?」
ロードは雇われの身なのもあって渋った。
「見つかったら、オレも父も屋敷を追い出されてしまいます」
「お・ね・が・い!久しぶりにロードと一緒に過ごしたいの」
カメリアはお祈りポーズをしておねだりした。
(だって、ロードったらホント素敵になっているんですもの……)
幼い時のように素直に気持ちを言い過ぎたかな、と思い始めた時、ロードが口を開いた。
「そんな可愛らしい姿でお願いされたら誰が断れるでしょうか……。父には書置きを書いておきます。出かけるとなれば、速やかに行動しましょう」
「ロード……ありがとう!」
ニコリとカメリアが微笑むと、ロードも笑顔を返してくれた。
ロードは荷馬車を用意してくると、ワラの中にカメリアを隠して公爵家を出発した。誰もカメリアが荷馬車に隠れているとは思わず、バレることはなかった。
「お嬢様、もう出て来ても大丈夫ですよ」
「ふう、ドキドキしたわ」
「ちょうど、買い付けの用事があったから良かったです。街についたら、町人風の服を買いましょうか」
「うん!」
ロードとはこれまで話せなかった時間を埋めるようにいろいろなことを話した。
「……良かった」
「なにが良いの?」
「お嬢様が殿下の婚約者になってから、どんどん元気がなくなっていくように見えたので、元気で良かった、と」
「うん……。でも、さっきも話したとおり、私はもう殿下の婚約者などになりたくないの」
「それは……。とりあえず、街を歩きましょうか」
街に着き、町人風のワンピースに着替えて帽子を被ったカメリアは元気に言った。
「ロード、久しぶりに手をつなごう!」
「え!?」
「ホラ、早く!」
恥ずかしがるロードと無理やり手をつないだ。手をつながれたロードは顔を真っ赤にしたけど、手を振り解きはしなかった。
――2人は、雑貨屋を見たり本屋を見たり、楽しく時間を過ごした。
疲れた2人は、今は運河のほとりのベンチで一休みしていた。
「私……結婚するならロードみたいな人が良かったな」
「そ、そんなことを言うほど婚約者の立場がイヤなのですか?」
「すごくイヤ。女好きだし偉そうだし、尊敬するところが1つも無いの」
どストレートに言うと、さすがにロードがカメリアの口を塞いだ。
「誰かに聞かれたらどうするんです!?」
「正直な気持ちを言っただけだわ。昔の私はいつだって正直だったでしょう?」
「そうでしたが、今はもう立派なレディですよ……」
シーンとした時間が過ぎる。
小さな頃、カメリアはロードにプロポーズしたことがあった。
(ロードは覚えているかしら?)
ロードの顔を見ると、視線を感じたのか彼は立ち上がった。
「お嬢様……そろそろ戻りましょう」
「うん……」
荷馬車で屋敷に戻ると、カメリアはツタを登って部屋へと戻る。下からはロードが心配気に見守っていた。
カメリアは無事にバルコニーに降り立つと、ロードに手を振った。ロードもバルコニー下から手を振る。
(ロマンチックな劇みたいだわ......)
……小屋へと戻るロードもカメリアと同じような思いを抱いていた。
(オレと結婚したいと言ってもらえるなんて……隔てるもの無ければいいのに)
バルコニーを見上げる自分を悔しく感じた。
――カメリアが部屋に戻ると、メイドが予想通り様子を見にきた。
「お嬢様、旦那様が食事を共にするようにと」
呼ばれて食堂に行くと、両親と兄がいた。
「少しは反省したか?」
父が厳めしい表情をして聞いた。
「……まあ」
「まあ、とはなんだ」
「明日は、殿下に会いに王宮へと行こうと思います」
「そうか。ならいい」
翌日、カメリアはある決意を胸に馬車で王宮へと向かった。道中、一緒だった兄オレールからは、しつこく婚約者を辞退したいと言った件について尋ねられた。
「なぜ、急に婚約者になりたくないだなんて言い出したんだ?」
「言わなかっただけで、前からずっとイヤだったわ」
「お前が殿下をよく思っていないのは分かっていたが、今さらではないか?」
痛いところを突いてくる。カミナリに撃たれて前世を思い出した、なんて言っても現実的な兄には信じてもらえないだろう。
「......カミナリの衝撃を受けたら、お兄様だって人生観が変わと思いますわよ?」
「死ぬ思いをして、気持ちに正直になったということか?」
「まあ、そんなとこ」
王宮に着くと、どこかの令嬢を口説くブレント王子の姿をさっそく見かけてウンザリした。
彼はカミナリが落ちた日、お茶会を抜け出してどこかの令嬢に会いに行っていたらしい。
(ホント、最低なヤツだわ)
カメリアが顔をしかめると兄が声をかけてくる。
「カメリア、落ち着けよ」
「ええ……」
王子がカメリアに気付くと、令嬢を侍らせながら寄って来た。
「カミナリの衝撃で倒れた割に元気だな」
「失礼ですが殿下.......妹は元気に見えても精神的にもダメージを受けております。温かく見守って下さると光栄です」
兄が自分を気遣っている。普段は年齢が一回り違うのもあってあまり話すことがないが、こうして庇われると嬉しい。
(よし、勇気を出して言うわ)
「殿下、一度も私を見舞うこともありませんでしたわね。お花はいただけましたけど」
「おい、カメリア」
兄に止められたが、構わずカメリアは続けた。
「殿下はいつも令嬢を口説いていらっしゃいますが、私の気持ちを考えたことがおありですか?」
一度言い出したら、止まらなくなった。それだけ不満をため込んでいたんだと口に出して初めて気付いた。
「なにが言いたい?……誰にものを言っている?」
いつもは逆らわないカメリアが非難めいたことを言ったせいで、王子の眉がつり上がる。
「私に不満がおありならば、私ではない方をお選びになるのがいいかと。そちら
の方はどうなのでしょう?」
視線を向けられた令嬢は、瞳を輝かせて王子に言った。
「殿下~、私を婚約者にしてくれるんですかぁ?」
王子の連れていた令嬢は甘えた声を出している。とってもおつむが弱そうだ。王子は鬱陶しそうな顔をした。
「君とはまだそこまでの関係じゃないだろう……。それよりカメリア、お前は私に意見を言うほど偉かったか?」
睨みながら尋ねてくる。
「ハッキリ言わせていただきますわ。私、いい加減、女癖の悪いところをガマンなりませんの。未来の王となる方がすることだとは思えませんわ」
カメリアの言葉を聞いた王子は腕に纏わりついていた令嬢を突き放すと、カメリアにつかつかと近づき、平手打ちをした。
パシン、という音が響く。
「カメリア!」
一部始終を見ていた兄が思わず叫んだ。
「……痛い」
頬を抑えながらカメリアは自分を打った王子を見上げた。
(気にくわないからって暴力を奮うなんて本当に最低!)
令嬢は震えてしゃがみ込んでいた。
「婚約破棄だ。生意気な女と誰が結婚できるか!」
「……承知いたしましたわ」
カメリアは毅然として言うと、またしても王子は眉を吊り上げた。
「お前のような反抗的な危険分子をこの国においておけるか。ずいぶんと周囲をも懐柔しているようだしな」
「懐柔などと……!」
いつも真面目に仕事をこなしていただけだ。王子のやるべきこともしっかりとフォローしていたから周りからの信用は篤い。そのことを言っているのか。
「ただちに国外へ追放してやる!屋敷に戻るのも許さん。野放しにするのは危険だからな!」
「すぐさま国外追放だなんて……!」
非情な言葉を言う王子は残酷な笑みを浮かべていた。
兄は焦った様子を見せているものの、その場を動く様子はない。
カメリアはすぐさま王子の命で拘束され馬車に乗せられた。
(このまま国を去ることになるなんて……)
涙がとめどなく流れた。
兄はあの場にいたのに自分を助けなかった。見捨てられたと思った。
両親は娘が国外追放になるなど夢にも思わないだろう。
――しばらく、うっそうとする森の中を進んでいると、馬車が静かに停まった。
もう国境なのだろうかと外を見ると、扉が開く。
「降りろ」
無表情な男が淡々と言った。
「ここはまだ国境ではないわ。どうしてここで降りねばならないの?」
「それは、こういうことだ」
男は剣を束から抜いた。
カメリアから血の気が引く。
「殺すつもりなのね……?」
「そういうことだ。抵抗しなきゃひと思いに殺してやる。跪づいて座れ」
カメリアはなにもかも諦めた気持ちになって、男の言うとおり膝を地面につけた。首を垂れる。
「諦めがいいな。やりやすい」
男が剣を振り上げた瞬間、男が叫んだ。
「ぐあっ!」
そのままよろめくと地面に倒れていく。男の胸には矢が刺さっていた。
「お嬢様!」
叫びながらやってきたのはロードとその父のコードだった。コードは弓を持っていた。
「ど、どうしてあなたたちここに?」
「オレール様に言われて来たんだ」
「お兄様に?どういうこと!?」
「説明はしたいが、今は急いでここを立ち去らねば。暗殺に失敗したとなれば王子は黙っていない」
そのまま急かされ、馬に乗せられたカメリアはひそかに隣国へと逃れた。
――今は、国境から少し離れた隠れ家のような屋敷にいる。
「ここまで来れば安心でしょう」
コードが弓矢を壁に掛けながら言う。
「一体どういうことなの?あなたたちは一体何者なの!?」
「今から話します。全てを」
改まった様子でロードとコードは話し出した。
彼らは、今回の救出劇は、兄の指示によるものだと言った。実は、兄は王直属の諜報員をしており、なにかあればすぐに情報を飛ばせるようにしていたらしい。
「兄が諜報員?そんなの知らないわ」
「そうでしょう。私たちの正体も隠されたものでした」
コードは金色の紋章を取り出してテーブルに置く。
「これはバティスト国の王族の証です。ロード……いえ、シオン様の身分を証明するものです。私はシオン様の護衛で、父だと偽っておりました」
「ええっ!?」
カメリアが驚きの声を上げる。
「本当にこれには驚いた……。父だと思っていた人がそうではなく護衛だと言うし、オレはロードではなくてバティスト王族の一員だと聞いて」
ロードあらためシオンも聞いたばかりの事実が受け入れがたいようだった。
「シオン様が生まれた頃、後継者争いの真っ只中でした。そのため、シオン様のお母上であるクローディーヌ様は、隣国にシオン様を隠すことにしたのです」
「それがなぜうちに......?」
「ベドナーシュの王に守ってもらう盟約を結びました。諜報員であるあなたのお兄様は、私たちを庭師の親子として匿ってくれていたのです」
「そんな……」
言われたことを理解しようとするが、あまりに驚き過ぎてなかなか理解が追いつかない。
「混乱するはずです。でも、それよりも命を狙われたことの方が大ごとでしょう」
「どちらも重大だわ……確かに私は殺されるほどのことをしたとは思わないけれど」
カメリアがうつむくと、シオンが彼女の肩に触れた。
「オレの本当の身分が分かった今、ロードではなくバティスト王国の王子・シオンとして、お嬢様……いや、カメリアを守りたい」
シオンがカメリアの手を握る。
「ずっと……身分差なんて無ければいいと思っていた。そして、君が王子の婚約者でなければと」
「私は国から追われて、身分なんてなくなってしまったも同然だわ。むしろ、逆転してしまったわね」
「そんなことはどうでもいいんだ」
シオンはそのまま跪く。その様子を見たコードが腰を上げた。
「おっと……私は席を外しましょうかな」
コードが部屋をそそくさと出て行った。
「カメリア……君はオレと結婚したい、と言ってくれたよね?」
「ええ。言ったわ」
「オレもカメリアと結婚したい。ずっと、好きだった」
「ロード……いえ、シオン様、嬉しいわ」
2人は抱きしめ合った。
――その後、両国では慌ただしい動きがあった。
まず、ブレント王子が廃位されて北の要塞送りになった。
シオンは隠された王子としてバティスト国できちんとした立場を確立し、カメリアを妻に持つことで、ベドナーシュ国との強いつながりをつくることができた。
「いまだに信じられないわ。私がバティスト国の王子様と結婚したなんて」
「ああ、本当に。でも、……本当の両親も喜んでくれて良かった」
あれから、シオンは父と母に対面して大歓迎されていた。
シオンは、もの心ついてから自分の本当の正体を知らなかったから泣いた。
「カメリアの家族もすぐに理解してくれたし良かったよ」
ブレント王子がカメリアを国外追放し、殺害しようとしたことを知った両親は激しく怒ったそうだ。
父はカメリアをブレントに嫁がせようとしたことで激しく後悔したらしい。
「カメリアを絶対に幸せにします」
シオンは彼らの前でキッパリ宣言し、両親はすぐに頭を下げたのだった。
――言葉のとおり、シオンはカメリアを溺愛してくれている。
結婚してすぐに子宝に恵まれた。......結婚から10年経った今、カメリアのお腹には第5子となる子どもがいる。
かつて命を狙われ、すべてを失いかけたあの日のことが、まるで遠い夢のようだった。
けれどあの出来事があったからこそ、今の穏やかで幸せな日々がある。
カメリアはそっとお腹に手を添えて微笑むと、その隣でシオンも微笑んだ。
「この幸せが、ずっと続きますように」
そう願った瞬間、ふたりの未来はもう、愛で満ちていた。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました(♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
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現在、『婚約者の王子より、冴えないチェリストに恋をした公爵令嬢の話』を連載中で、最終話も近づいてきました。どうぞこちらもよろしくお願いします。
◆連載『婚約者の王子より、冴えないチェリストに恋をした公爵令嬢の話』毎日19時過ぎ更新中!
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