僕の姉はどこかおかしい
「キッシャー」
現在進行形で見えない何かと戦っている。それが僕の姉だ。
「姉ちゃん何やってんの?」
すると、ジャブを打ちながら姉は言う。
「ちょっと空気と戦いを」
やっぱりおかしいと思う。姉という生き物は皆、このように珍妙なものなのだろうか?
僕は日記をつけることにした。
◇◆◇
○月○日
今日の姉は殊更おかしかった。
僕が風呂から上がり、ドアを開けるとそこには。
「パッジャーマーパッジャーマーパッジャーマー!!」
とパジャマを振り回しながら跳ねている姉がいた。
僕は静かにドアを閉めた。
○月△日
上からギシギシという音が鳴り、やけにうるさいなと天井を見ると姉がいた。
姉は壁と壁の間に張り付いていた。
「……何やってんの? 」
「見て分かんない? 天井に張り付いてるんだけど、何? 」
「……なんでもない」
どこかで今の姉みたいなCMを見たことがあったな、と遠い目をして思い出した。
☆月△日
唐突だが、姉は独自の理論を持っている。
「食べ物は? 」
「そりゃあ焼くか凍らせると美味しくなる。って当たり前のことをいきなりどうしたの? 」
「いや、なんでもない」
そんなものだから、姉はこの理論に従っていつも焼くか凍らせるかして食事している。
最近だと、お好み焼きを凍らせて食べたら不味いことを発見して感動してたな……。
そりゃあそうだろうと内心思ったが、黙っておくことにした。
☆月◇日
家に帰ると机の上に美味しそうなクッキーが置いてあった。堪らずそれをパクリと食べると。
「ゴッホゴッホゴッホ」
致死性だった。
食べた瞬間に口内の水分という水分が消え去り、食べ終わる頃には口の中は今までにないほどパッサパサになった。
台所を見ると姉があっちゃぁ、みたいな、でもどこか面白がってるような顔で立っていた。
「あぁ、それね。作ったんだ。食感はさっくりほろほろの最高でしょ。食感はね」
「これ何? というか何を入れたらこうなるわけ? 」
聞けばクッキーを作ろうとしたら小麦粉がなかったらしい。買いに行くのも面倒なものだから見た目が似ている片栗粉で代用したそうだ。
片栗粉、か。
姉が言うには出来たてはまだ水分があり、美味しかったらしい。だが、暫く経ちクッキーが冷めた頃にはこの凶悪なクッキー(姉が言うにはわくわく片栗粉クッキー)が出来上がっていたそうだ。
姉はその後帰ってきた他の弟にも食べさせ、盛大にむせ、兄弟間で口封じクッキーなる名称が付けられたのだった。
読んでいただきありがとうございます。