6話 任務
起床は3時半だった。
よく寝ることもできずに、三人に連れられ私がいた市民軍基地本部を旅立ち、徒歩一時間ほどの場所まで歩いた。
少し先にあるのは、ののかさんと行ったような木造建築物。どうやら、政府軍情報基地、と言う場所らしい。
私たちのような異能もちは一人だが、兵士は何十人、何百人もいる。
正面から入るのは愚策、と言った流季さんの声が脳裏に蘇った。
抗う必要性も理由も気力もないから、今回は全て指示通りに動こうと決めている。それでも、全くもって不安は拭えないが。
言われるままに玄関に爆弾を放り投げると、林を潜り抜けて館の裏に入り、あるかどうかわからない裏口を探した。
「あ、これじゃないか?」
しばらく経ってから、ほろろさんがそう言って、私たちの半分ぐらいしかない小さな扉を指差した。
音をたてないようにそっと扉を開けると、確かに中に繋がっていることが確認できた。
ちょっと覗いてみたところ、特に兵士は見当たらない。今のうちだ、と背の高い順に扉に入り込んだ。
内装もやはり、ののかさんと入ったあの場所に似ている。似てはいるが、全く一緒というわけではなかったし、使われている木材も少し違うもののような気がした。
兵士は全くおらず、上には細い螺旋階段が設置されている。
今までの基地的に、最上階にこの基地の将がいるらしい。
私たちは目配せをすると、その螺旋階段を駆け上った。
「……あれ、本当に人がいない。」
千留さんがそう言ってあたりを見渡した。
螺旋階段を登り終えても最上階に到達する気配はなく、真っ暗な廊下が続いているだけだった。
ののかさんと行った、あの渡り廊下が脳裏によぎる。後ろを過剰に警戒する私を、千留さんたちが不思議な顔をして見ていた。
「……これ、策略なんじゃねえの」
流季さんがぼそっと呟いた。ほろろさんがそっちを見たが、否定はしなかった。
これほどまでに怪しいのに、本当に誰ともすれ違わずに、もう少し上へ行けるであろう次の階段に辿り着いた。
足音を立てないよう、ゆっくりその階段を踏み締める。
次の一歩を踏み出した瞬間、私の体が宙に投げ出された。
「やっぱり!なんかいると思ったらぁ!!」
耳元で唸る風と共に、そんな声を聞いた。