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1話 転生

ブックマーク、評価よろしくお願いします。

あ、これは死んだわ。

そう思ったのが、十分前のこと。



寝て起きたら知らない場所にいた私は、何もわからないままに誰かに腹部を刺され、今さっきまでそこの道に倒れていた。


一度は終わったと思い、誰に向かうでもなく命乞いをしてみたものの、時間が経つにつれ傷は癒え、なんと十分ほどでただのかさぶたになってしまったのだ。


口を大きく開けて唖然とする私。その私の耳に、やけに大きな笑い声が聞こえてきた。

はっと後ろを振り返ると、そこには、大勢の人……

……ではなく、一人の女性が立っていた。


「……ああ、ごめんごめん。うるさかっただろ。」


彼女は、そう言って私に笑いかけてきた。


私が誰かと問う前に、女性は人差し指を唇に当てる。そして、私の背後の左上の方を指で示しすと、いくらか楽しそうにそう言った。


「そこにいるのは政府軍。私達の敵。」


私が彼女の指差した方向を見ると、覆面を被った和服の男達が空中で待機しているのがわかった。


「ぐずぐずしてたら死んじまうぞ。

それが嫌だったら、私に着いてこい」


彼女はやけに冷たくそう言うと、私の手を取り、突然大きく跳躍した。


「手ぇ離したらお陀仏だからな!!」


先ほどとは打って変わって明るく言う女性。体が急上昇する感覚に怯えて下を見ると、ここがとんでもなく高い場所だと言うことがわかった。

まだ状況を飲み込めていない私が「っはぁい」と情けない返事をすると、私と女性は急降下し、家屋の屋根に飛び降りた。


薄暗い街灯、何本も植えられた桜の木。見慣れないそれらのものが迫ってきて、ちょっとした爽快感を覚える。


だが、楽しかったのは最初だけだった。ジェットコースターより酷い尻が浮く感覚に背中の毛が逆立つ。しかも着地にも失敗し、両足に鈍い痛みが広がった。


まさに泣きっ面に蜂。痛みを嘆く暇もなく、女性は私の手を強く引っ張り屋根の上を走り始めた。


なんだよ。ちょっとぐらいは休ませろよ……

てか、私何も考えずについてきちゃったけど大丈夫なの?


そんなことを思った刹那、さっきまでいた場所に大量の矢が刺さった。

先ほど女性の言っていた言葉が実感を持って迫ってくる。本当に、ぐずぐずしてたら死ぬんだ。


急いで前を向き、足をばたばた動かしてみるが、恐怖と日頃の運動不足のせいであまり速くは走れない。女性に引きずられるようにして走っていると、目の前に和服の男達……政府軍が立ち塞がった。


かなり刀身の長い刀を持っている。仮面から一瞬覗いた目には、明確な殺意が表れていた。

彼らが刀を突き出す。やばい死ぬ。やけくそになった私が女性の前に躍り出ると、私の肩に刀が刺さった。


「……お、やるじゃん。」


女性は悪戯っぽく笑うと、呆気に取られた政府軍たちを突き飛ばした。

私の肩から刃が抜かれ、そこにはただのかさぶただけが残る。


あれ、と思った瞬間、女性は家屋の屋根を思いっきり蹴飛ばし、あらぬ方向へと飛んでいった。

飛んでったのが彼女だけならまだ良かったが、女性が手を繋いでいるのは、紛れもない私なのである。


相変わらずの情けない悲鳴をあげながら女性にしがみついていると、一瞬であたりの景色が変わり、私たちは柔らかい花畑に落っこちた。


黒板の色と、水の透明感と、割れたガラスを掛け合わせたような、とにかく私の語彙じゃ表現できない不思議な色をした花畑だ。私が呆然としていると、彼女は大爆笑し、少しして笑いが収まってからから話し出した。


「いやぁ、びっくりしたねえ。」

女性は、動揺も恐怖も微塵もしていない様子でそう言う。


「私、ののか。」

彼女は水色の髪を大きく揺らし、無邪気な桃色の目で私を見た。


未だ呆然としている私に、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべる。その女性……ののかさんは立ち上がると、私に向かって手を伸ばしてきた。


「ようこそ、異世界へ!」


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